――桝田さんにとって、さくまさんから学んだことで印象深いことはありますか?
桝田:うーん、ちょっと誤解を招く言い方かもしれないけれど、「バカの愛し方」かな(笑)?
やっぱり、さっきも言ったけど、さくまさんは「普通の人」のことを本当によく知っているんですよ。ゲームなんて上手くないし、少なくともゲームを楽しんでいる間くらいは、難しいことなんて覚えたくないし、考えたくもない。そういう人間は、世の中にはたくさんいるんです。その存在を頭で理解したと思うのは簡単なことだよ。でも、さくまさんは、「ジャンプ」の読者ページで毎週毎週、みかん箱に何箱とあるような――それこそ何千万通もの「普通」の子供らの葉書に向きあって、それを肌で体感してきたんだよ。
僕も最初に彼らの葉書を見せてもらったときには、ビックリしたんですよ。だって、「ジャンプ」の葉書コーナーに載せてほしいのに、ペンで書いてこないことだけでも驚くのに、消しゴムすら使わないんだから。彼らは、指でこすって消すんですよ。そして、JBS放送局のJを「し」と書いてたりね。さくま:「頭がイイ人」には、彼らの気持ちがわからないんですよ。
あの子たちは、説明書を読まないとできないようじゃ、ダメなんです。だから、読まなくても進められるものを作りました。サイコロを振って矢印の方向に進めばプレイできるのも、それが理由です。『桃鉄』を作るときには、考えるのが苦手な子でも遊べて、でも、戦略がある人はもっと上手くプレイできるというバランスで作るんです。とにかく、僕は説明書とか攻略本を買わなきゃいけないものにして、彼らが遊べない作品にはしたくないんですね。
そうか、『桃鉄』が「だれが遊んでも楽しめる」のは、さくまさんの経験にもとづく「哲学」によるものなのか……
「みんなが楽しく遊べるように」って言うのは簡単だけれど、ゲーム制作者は一流大学を出ていたり、ゲームが大好きで上手だったりと、自分では意識しないまま「難しいゲーム」をつくってしまいがちなのです。
正直なところ、僕もこうしてわかったようなことを書いているのですが、この「普通の子供たちの世界」を理解できている自信はありません。
あまりにも「普通に面白い」ために、僕がその背景にあるものに踏み込もうとしなかった『桃鉄』は、「すごいゲーム」だったのです。
この本には、こういう、「今だからこそ、語れる名作ゲームに関する貴重な証言」が詰まっているんですよね。
もっと証言が集まり、後世に遺せるように、多くの人に読まれてほしい、と願っています。
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