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特集
休みのトリセツ 〜今日から始めるニッポン休み方改革〜
新生活に入るビジネスパーソンも多い4月。「頑張って働くぞ!」と意気込んでいる方も多いのではないでしょうか。しかし、働くことと同じくらい大切なのが「休む」こと。そこでBLOGOSでは今月、さまざまな角度から「休み」について考えるための特集を始めます。目指せ、休み上手!

連休中の寝だめは逆効果!睡眠研究家が教える快眠の秘訣とは

  • 2019年04月23日 09:29
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日本人の多くが悩まされている睡眠不足。

JR東海など企業の睡眠教育にも関わる睡眠研究の専門家・白川修一郎氏は「6時間未満の睡眠はタバコの健康被害よりも深刻」と警鐘を鳴らす。

最大10連休となる今回のゴールデンウィークはたっぷり寝て、日ごろ足りていない睡眠時間を取り返すチャンスかと思いきや、睡眠不足を補うカギは「大型連休のあとにある」と話す白川氏。

われわれはどう眠ればいいのか。忙しい日本人のための「快眠の秘訣」について話を聞いた。【清水駿貴】

睡眠不足が当たり前の異常な国、日本

−−米国のシンクタンク、ランド研究所の試算によると睡眠不足による日本の経済損失は年間15兆円とされるなど日本人の睡眠不足は問題となっています。睡眠研究の専門家の目から見て、現代日本人の睡眠状況はどのようなものなのでしょうか。

最悪です。

厚生労働省の国民健康・栄養調査結果(2017年)の報告では、1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は男性36.1%で女性は42.1%でした。

働き盛りの40代では、女性の5割以上が睡眠6時間未満と答えています。男性も48.5%とほぼ半分が6時間未満です。

それなのに「ここ1ヶ月間、睡眠で休養が充分にとれていない」と答えた人は、なんと約2割しかいませんでした。

睡眠時間が6時間未満でも、みんなそれが当たり前と思っているんですよね。異常なことです。

−−必要な睡眠時間は本来、何時間なのでしょうか。

現在、研究で明らかになっている成人に必要な睡眠時間というのは7時間です。

でも今の日本の環境では7時間眠るのは現実的に不可能だという人も多いでしょう。だから6時間というのがギリギリのラインとなります。

6時間未満の睡眠が続くとさまざまなリスクが高まります。1日だけならなんとかなるかもしれませんが、日常的に続けていくと、睡眠負債が溜まって、過度の睡眠不足状態になっていきます。

白川修一郎氏監修

タバコの健康被害より危険な6時間未満睡眠

−−6時間未満の睡眠を続けるとどのような健康被害が起きるのでしょうか。

リスクを考えたらタバコの健康被害どころじゃありません。睡眠を1時間減らすほうが、タバコを吸うよりも圧倒的に危険です。

まず、脳の働きが鈍くなります。集中力が低下し仕事のパフォーマンスががっくりと落ちます。逆に言えば、会社側は社員を長時間働かせても、睡眠時間が足りていなければ給料を払っているだけの労働力は得られません。

精神性ストレスの蓄積も約5倍に増え、うつ病などの精神疾患にかかる可能性が高くなると言われており、自殺のリスクも約2〜4倍高くなることがわかっています。

また、風邪やインフルエンザなど、ウイルス性の感染症のリスクが約5倍増加するという報告もあります。アルツハイマー型認知症の発症リスクも高くなります。

白川修一郎氏監修

−−睡眠不足による健康被害を回避するにはどのような眠り方がいいのでしょうか?

まずは単純に長く寝ることが大切です。理想としては7時間以上。

本当のショートスリーパー(短時間睡眠者)ってほとんどいないはずなんですよ。あれは遺伝子のミューテーション(突然変異)なんです。だから、幼い時から短時間睡眠しかできないとか、あるいは親戚あたり、特に上の世代に必ず短時間睡眠者がいて、その人たちは長生きしているはず。意志や訓練で無理やり短くすることはできないんです。

10連休での疲労回復は無理?

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−−今年のゴールデンウィークは10連休という前代未聞の長期休暇となります。普段、慢性的な睡眠不足状態となっている人もこの連休をうまく使えば、日ごろのダメージを回復することはできますか。

たぶん無理でしょう。10連休で規則的な生活をしていれば回復することもできるでしょうが、むしろリズムを崩してしまうでしょう。整えば理想ですけど、せっかくの長期休暇だからみんな遊びたいですよ。

大切なのは休みが終わったあとです。普段の生活に戻った時に、睡眠を優先した「睡眠週間」を計画して、実践してみるといいです。

いつもより朝食をしっかり食べて、30分だけ早く寝るように1週間心がける。そうすると体がかなり楽になるはずです。ずっと続けようとすると挫折してしまうので、1週間だけ生活スケジュールを立ててやってみるといいと思います。

「5月病」は連休のあと、睡眠不足や仕事へのストレスが重なって起きてしまうことが多いんです。だから、休みのあとにぐちゃぐちゃになった生活リズムを意識的に整えることに重きを置きましょう。

規則正しい生活は食事のタイミングから

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−−生活リズムはどのように整えるといいのでしょうか?

まず覚えておいてほしいのは理想通りパーフェクトにやらなくてもいいということです。自分の生活環境とある程度すりあわせして、できることをできるだけやればいいんです。

その上でまず大事なのは、3食しっかりと食べること。

特に朝食と夕食のタイミングですね。

朝は起きて1時間以内にとるのが理想的です。朝食を食べないと代謝のリズムが崩れてしまい睡眠に悪影響を及ぼします。

夜は寝る3時間前に夕食を食べ終わるのが理想ですが、日本人の生活を見ると百歩譲ってせめて2時間前には食べ終わっていてほしい。寝る直前に食べると寝つきが悪くなりますし、胃の中に食べ物が消化しきれずに残ってしまうので、朝食を食べられない原因になります。

朝は糖質とタンパク質をとることが重要で、卵や牛乳などが理想的です。納豆もビタミンB群が豊富なのでいいですね。糖質は摂取することでインスリンの血中濃度が上がり、体内の代謝リズムが調整され規則的になります。

そして、しっかり噛むことも重要です。タンパク質と糖質はしっかり噛んで食べないと肝臓や小腸の体内時計がおかしくなり、代謝リズムが乱れてしまいます。

夜は大量の脂質を控えてください。一番よくないのは夜に背脂こってりのラーメンを食べること。代謝のリズムがめちゃくちゃになります。

甘いものや脂っこいものが食べたかったら朝ですね。朝は日中の活動でエネルギーが消費されるので食べても大丈夫です。

睡眠時間のために人生の楽しみを抑制する必要はない

−−現代人の多くがスマホやPCなどを普段から頻繁に使用していますが、睡眠への影響はあるのでしょうか?

寝る前にスマホやタブレットを使うことのリスクはブルーライトよりも、画面に集中してしまうことです。画面が小さいので脳が興奮状態になってしまいます。

集中によって交感神経が興奮してしまうと、落ち着くまでに時間がかかるので、寝つきが悪くなってしまいます。逆に言うと、寝る前のスマホをやめるだけでうんと寝つきや睡眠の質がよくなります。

寝る30分前にはスマホの画面を見るのをやめたほうがいいです。理想を言うと2時間前ですが、現代人の習慣では難しいでしょう。ですから、入浴や歯磨きを機に30分前にやめるようにしたらいいと思います。30分で交感神経は落ち着きはじめるので。

テレビはぼーっと見ることができる番組であれば問題ありません。集中するものやドキドキする番組を見たい時は、寝るためではなく楽しむために見てください。人生楽しくないとだめなので。睡眠のためとなんでも抑制するのはよくありません。

お酒も同じです。お酒を飲んだ日の睡眠の質は絶対に悪いんです。でも「お酒を飲むな」と言うと楽しみがなくなる人もたくさんいる。飲む日は割り切って楽しんで、でも、毎日はやめましょうねと人生にメリハリをつけることが大事です。

寝室のエアコンは高性能なものを

−−眠る場所に関してはどのように気を配ればよいでしょうか?

寝室環境に関してはエアコンが重要です。寝室のエアコンが他の部屋に比べて安いものになっていませんか。

リビングのエアコンは起きてる間に使うものですから、温度は自力でコントロールできます。でも寝室では寝ているからどうしようもない。だから一番いいエアコンを選んでおくべきなんです。

特に夏は熱帯夜が多くなってきているので、エアコンを節約のためにすぐ消してしまうと、睡眠の質が悪くなり、疲労が蓄積されてしまいます。性能のいいエアコンはつけっぱなしにしていても電気代はそこまでかかりません。5年10年先を見据えると、高性能なエアコンを寝室に設置しておくべきです。

一緒に寝ている夫婦の場合、年齢が若いほど一般的に男性は温度を低く設定したがり、女性は寒く感じるということが多くなります。もちろん逆転している家もありますが。そういう時は男性側、つまり低い温度に設定してください。寒い人は布団でカバーするのが理想です。暑い人は寝具で調整できないので、エアコンでカバーするしかない。

あとは「安全面」を気をつけることです。人間は基本的に安全が確保できないと眠れません。だけど、眠れないと悩んでいる人でもそこをおろそかにしている人は多い。

例えば、地震が起きても物が絶対に落ちてこないようにしたほうがいい。台所なんかは食器が割れると困るから地震対策をしているのに、寝室はしていない人が多い。そういう安全環境をないがしろにしていることが、眠れない原因につながっていることが多いのです。

日本の働き方改革は「机上の空論」

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−−食や行動に気をつけ、寝室環境を整えても現代日本の職場環境では睡眠時間7時間を確保できない人も多いと思います。

日本もヨーロッパみたいに勤務間インターバルを11時間以上取るべきなんですよね。

※勤務間インターバル制度とは

長時間労働を防ぎ、生活時間や睡眠時間を確保するために、勤務終了時刻と次の始業開始時刻の間に一定の休息時間を確保する制度。働き方改革関連法により今年4月から企業に導入の努力義務が課されている。

例えば、午後11時以降の残業と翌日午前9時以前の早朝勤務を禁止した場合、休息時間は10時間となる。法律では休息時間の具体的な数字は示されていない。

EUでは加盟国内のすべての労働者に、24時間ごとに最低でも連続11時間の休息期間を確保することが義務付けられている。

日本では休息時間が8時間や9時間で充分という話もあります。でも、そのなかには通勤が含まれていますから、7時間の睡眠をとるのは無理ですよね。

日本の都市圏で9時間インターバルは絶対に少ない。地方都市でも車で通勤すると片道30分くらいかかる人も多い。往復で1時間、ご飯食べたりお風呂に入ったりしてたら、7時間も眠れません。9時間インターバルだったら5時間くらいしか眠れない。通勤時間を考えないで計算してるんでしょうね。

8時間や9時間の勤務間インターバルで長期労働の防止になるというのは机上の空論です。もうちょっと日本は考えないといけない。正しい睡眠の知識をもっと身につけることが大切です。

二度寝は気持ちいいが体に悪い

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−−勤務間インターバルが充分に取れることが理想ですが、それが難しい場合、睡眠不足を補う方法はありますか?

昼寝をうまく取り入れましょう。平日だったら15分以内の仮眠をとる。その際は必ず座った状態で。横になると血圧が下がって体温が下がるから起きれなくなります。15分以上だと、本当に睡眠が足りてない人は起きられなくなってしまうので危ないですね。

普段から完全に睡眠不足の人は休日に正午〜午後3時の間、2時間程度寝たほうがいいでしょう。でも本当は休日前に1時間早く寝て、休日に1時間遅く起きれば2時間分の不足はカバーできるんですよ。これが一番体にいい寝方なんですけれども、なかなかできない。みんな休日の前日は就寝時間が遅くなるんですよね。

朝遅くまで寝てしまうのと、夕方に仮眠をとるのが一番最悪です。体のリズムを崩して夜、眠れなくなってしまいます。これをソーシャルジェットラグ、社会的時差ボケ状態と言いますが、それだけは防ぎたい。翌日の調子が悪くなって悪循環に陥ってしまいますので。

二度寝は体によくありません。体温が下がって深い睡眠になってしまうので、体温リズムのメリハリがうまくいかなくなってしまうんです。深い睡眠にもう1回入るから非常に気持ちがいいんですが、その後に悪影響を及ぼします。朝は別に早起きじゃなくて、午前10時までに起きることを目指せば大丈夫です。

「牛乳は睡眠にいい」を信じるとお腹を壊す

−−インターネットを検索すると「睡眠不足を解消する方法」や「不眠症に効果があるもの」などさまざまな情報がヒットしますが、睡眠研究の視点から見ると間違っているものも多くあると思います。

科学的根拠のない情報はとても多いですね。

例えばレタスやケールはメラトニンが豊富だからと「睡眠促進作用のある食べ物」としてあげられているのをネット上で見かけますが、間違っています。

睡眠を促進するために必要なメラトニンの量は30mgです。ケールでその量を摂取しようとしたら60kgを芯からなにから一気に食べないといけない。レタスはそれ以上です。無理でしょう。

牛乳に入っているトリプトファンも睡眠に効果があると言われていますが、これも必要な量をとるなら、ドラム缶半分の量の牛乳をいっぺんに飲まないといけない。確実にお腹を壊します。

ホットミルクを寝る前に飲むといいというのは科学的な根拠があるわけではなく、お腹が温まり、気持ちが落ち着くという意味で、精神的な効果があるということです。牛乳でなくても人肌程度の白湯でも同じ効果があります。

香りに関しても、ラベンダーやカモミールなどに「入眠促進」の作用があるという表現がネット上などで時々見られますが、これも間違いです。睡眠にダイレクトに効くわけではなくて、興奮を抑えてくれる鎮静的な効果があるということです。

香りを選ぶポイントとして大事なのは世間で言われている効能よりも、その香りで自分自身が落ち着くかどうかということです。あまり好みではない香りはむしろ逆効果になってしまう。

逆に食べ物の香りは基本的に入眠を妨害しますが、自分の生まれた時の環境につながって安心感を覚える食べ物の香りだったりすると案外眠れたりするんですよ。自分を守ってくれるように感じるお父さんやお母さんに結びつく香りとか。

睡眠は心理的な要素がとても強いので、安心できる環境を整えることがとても大事です。

−−インターネット上の情報だけでなく、寝具やサプリメントなど市販されている商品でも「睡眠改善」を謳ったものがたくさんあります。効果があるか否か、どのように見分ければいいでしょうか?

「睡眠に効果がある商品」として売られているもののなかには、科学的評価もなしに雰囲気で「睡眠の効果がある」としているものがたくさんあります。選ぶ基準としては日本睡眠学会の評議員や専門医などきちんとした科学的な知識のある人たちが監修しているものであれば大丈夫です。

サプリは飲むものだから特にきちんと確認したほうがいい。そして、全員が全員に効果があるわけではないことを認識して利用してください。睡眠薬でも効かない人はいます。自分に合ったものを選ぶことが大事です。

今はネット上にも睡眠情報に関するいいサイトがたくさんあります。商品と同じで日本睡眠学会の評議員や睡眠を専門にしているお医者さんが監修しているサイトや本から正しい知識を身につけて、健康にいい睡眠ライフを送ってください。

白川修一郎
医学博士。睡眠評価研究機構代表。日本睡眠改善協議会理事長。国立精神・神経医療研究センター客員研究員。江戸川大学睡眠研究所客員教授。メンタルヘルスと睡眠を専門とする。主な著書は『ビジネスパーソンのための快眠読本』(ウェッジ, 2016)、『睡眠負債「ちょっと寝不足」が命を縮める』(朝日新聞出版, 2018)、『命を縮める「睡眠負債」を解消する』(祥伝社, 2018)など。

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