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Kダブシャイン緊急インタビュー!アイドル業界を痛烈DIS「金むしり取るやつらだせえ」

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◆アイドルは結果として呼ばれるべきで、目指すものではない


――本当に自分のしたいことを目指した先に「本物のアイドル」への道が開けるということでしょうか。

アイドル産業というか業界の常識がどんどん形を変えていて、今は候補者になった時点で「私、アイドルです」みたいになってるけど、それはちょっと本来のアイドルの意味からはずれてる。

アイドルはもともと「idolize」っていう単語からきている。偶像崇拝という言い方をすると冷たいけど、本来は「憧れる」って意味でしょう。俺にとっては「神同然の存在で憧れているんだ」っていうものをアイドルと呼ぶわけ。

例えば絵描きさんだったらピカソやゴッホで、トランペットを吹く人ならマイルス・デイビスだとかね。俺で言えば、思想的な部分ではマーティン・ルーサー・キング・ジュニアとかマルコムX、音楽で言えば10代のころ好きだったラッパーは今でもアイドルだったりする。

だから本当に自分が憧れているものをアイドルと呼ぶべきで、みんながアイドルって呼んでるものをアイドルと呼ぶのは本当の意味ではない。

アメリカでは、単純に音楽もバンドにしろラップにしろ、自分のやりたいことを自分自身の力で表現している人だけがリスペクトされるし、商品としても質の良いものとして扱われるんですね。

日本の音楽業界でそういう認識があるかというとない。CDの売り上げとか握手券とか数の論理で言えばアイドルは何十万、何百万と売り上げるから、こっちは敵わないわけですよね。それなのに、なんかアイドルについて一言発言すると、炎上する。今回は結果的に俺はすごく美味しいことになったけど(笑)。


――今回の件も含め、ラップと同じように自分の意見を表現するツールとしてTwitterを使っている。

少し違うかな。曲はやっぱり残るし、瞬間瞬間のリアクションだけを歌詞にしても時間が経つと風化していっちゃう。もうちょっと俯瞰して、長期的に見て、ある程度の期間しっかり考えて曲にしたい。

Twitterは割と脊髄反射みたいな感じ。「なんで曲にしないの?」とか「曲にしてくれ」とか言われるけど、曲としてその瞬間を切り取ると、後で「なんか無駄に色々言っちゃたな」とか「あの時と矛盾するんじゃないか」とか自分のなかで引っかかるんで、すぐには発表しないようにしてますね。例外は原発事故の時とか、イラク戦争の時とか、ああいう時は割とすぐに発表しました。

でも、虐待や自殺やいじめっていうのは、ずっと起きてきたことだしこれからも続いていくと思うので、問題意識を広げていくためにも一時的なものだけを切り取っちゃいけないないっていうのが俺の考えです。

『NEWS RAP JAPAN』(※)とかで前の週に起きたことをラップにするのとかは安易だなと俺は思っていて。別に悪くはないけど、その人たちがその時に思ったコメントだから、意見とまでは言えないんじゃないかなって。

(※)NEWS RAP JAPAN:さまざまな時事問題をラッパーたちがラップで紹介するインターネット番組。19年3月末で終了した。

◆同世代のヒップホッパーや小説家はどんどん発言すべき

――ヒップホップ文化の第一人者だからこそ他の業界の人が言えないことも言えたりしますか。

ヒップホップは自分が自分であるために自分を追求したり、自らをむき出しにして歌うことでお互いを尊重するっていうカルチャー。だから、俺もヒップホップをやってるから「ラッパーとして言うんでしょ」みたいな発言権を得られたと思うんですよ。だけど俳優とかタレントとかお笑い芸人とかがいうと「何言ってるんだ」ってなるじゃないですか。

ラッパーは別に何を言っても「何言ってんだ」って言われない。特に自分は社会派ラッパー的なスタンスでやってきたから、「何か言わないとおかしいだろう」とか「何か言ってください」みたいになってくるんで。

世の中には大人のやり方を受け入れざるをえずに迎合してる人もいるし、その人が悪いかというと一言では言えない。だけど、誰だって正義に生きたいよなとは思う。そんな風には生きられない人もいるから、それを俺は責めたくはないけど、やっぱりラッパーとして表現できる境遇を与えられたと思ってるので、まあ思ったことは言いますよね。

自分勝手に自分の感情だけを言おうとは思わないですね。大勢にとって利益があることを言いたいなと思ってます。もう今年で50歳になるんで、発言のチケットは手に入れられてるんじゃないかって。

ただ俺がもどかしいのはヒップホップをやってる同世代の人間とか、小説家とか、そういう人たちはもっと発言するべきだなって思いますね。


◆周りを見て気づいた、だらしねえ俺らの世代

――50代を迎えるからこそ見えてきたものもありますか。

30代から40代前半くらいまでは自分も若いし、大人が作ってきたものの犠牲になってるって思ってたんですよ。

だんだん年齢が上がってきて、今、周りを見渡すと国会で嘘をついてる官僚って俺と同い年くらい。だから「あ、じゃあもう俺らの世代の責任じゃん」って。

俺らの世代がだらしないからこうなっちゃってるんだって思ってて、そこはすごく反省している。だからはるかぜちゃんに「ぼんやりした大人が多くて申し訳ないと思ってる」って言ったんです。

――アイドル論でもそうでしたが、Kダブシャインさんは肩書きよりも人の想いにフォーカスを当てて見ている気がします。

最近すごく自分の中でまとめられてきた想いがあって。人の価値は財産とか功績だけで決めるべきではなくて、その人が何もない状態でどれだけ他人に優しくできるかとか、自分が困っている時でも他人を思いやる気持ちがあるかとかそういうことが大事だと。

心の大きさを測るとその人の本当の大きさが見えてくるのかなっていうのが最近見えてきて。それを今日のインタビューでちょっと言ってやろうと思ってました(笑)。

◆ヒップホップもアイドルも原点は「人を喜ばせたい」

――最後に現代のヒップホップシーンについて伺います。Kダブシャインさんが大切にしてきた「正義を表現する」というヒップホップの精神が少しずつ変化して、最近はラップミュージック=ヒップホップという形になってきているように思います。

その通りで、日本だけに限らずアメリカもそういう風に進んでいる部分があります。グラミー賞ではヒップホップっていうカテゴリだったのが今はヒップホップ/ラップっていう形に変わって、ラップミュージックがヒップホップよりも大きくなってきた感じがある。ただラップミュージックってヒップホップから生まれているんでヒップホップが母親。だからそこから外せない。

アメリカではヒップホップの概念が社会に対して影響を与えて、最終的にオバマが大統領になったり、差別する人とそれに反対する人が同じくらいいるっていう状態じゃないですか。それはすごいことですよね。

でも日本はそこまでヒップホップが浸透していないから、アメリカの影響を受けてヒップホップがラップミュージックって形に矮小化されていくのをすごく心配しています。「ヒップホップはこうあるべきだ」ってのを俺らはずっと考えてきたけど、うまくいくようになると格好つけてそういうことを言わなくなるでしょ。もうちょっと「ヒップホップとは何か」ということを伝えながら、広めていくべきだったのかなと反省しています。


日本では「ラップ・DJ・ブレイクダンス・グラフィティ」がヒップホップの四大要素だっていうのはわかっていると思うんだけど、それは目に見えて触れることのできるヒップホップカルチャーであって、その精神を大切にしたいっていう気持ちとは別。例えばジャーナリズムもそうだけど、ジャーナリストが偉いんじゃなくて「ジャーナリズムを大切にしたい」って願う人が守ってきた歴史があったからここまで来てる。ヒップホップも四大要素は知ってて当然なんだけど、みんながどういう気持ちでここまで育んできて、こんなに広まったかっていうことのほうが大事なんですよ。

アイドルも同じで「人前で歌ってみんなを幸せにしてあげたい。だから歌がうまくなりたい」っていう気持ちは「アイドルになりたい」じゃなくて、「エンターテイナーとして人を喜ばせたい」っていう気持ちなんだと。そっちを大事にしなくちゃいけない。

ラッパーとかエンターテイナーって格好つけたがりだけど、「格好良く見られたい」がゴールじゃなくて、格好良く見られた先に「楽しんでもらえてますか」って気持ちがあるかどうかが大事。言うか言わないかは別だけど、テレビだったらカメラの向こう側の人にちゃんと届いていますかと。「俺面白いでしょ?」「私かわいいでしょ?」じゃダメですよね。

俺自身が今の事務所の姿勢からそういうことを教わって、より成長できたなと思ってるんで、アイドルを目指す子たちも「人を喜ばせたい」って精神を忘れないでほしいです。


Kダブシャイン
1968年東京都生まれ。日本語の歌詞と韻(ライム)にこだわったラップスタイルが特徴。 現在の日本語ラップにおける韻の踏み方の確立に大きく貢献したMCと呼ばれている。 その作品は日本及び日本人としての誇りを訴えかける歌が多く、様々な社会的トピックを扱う数少ないMCとして知られる。その洗練された文学的な韻表現と社会的な詩の世界は様々なメディアで高い評価を獲得。 また、コメンテイターとしても、数々のメディアに登場していて、スペースシャワーTVで放送中のRHYMESTER宇多丸氏との『第三会議室』は、根強い人気を誇っている。

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