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タイガー・ウッズ復活にトランプ米大統領が大統領自由勲章を授けるホンネとは

Getty Images

「過去の人」というレッテルがはられたウッズが感動の復活劇

[ロンドン発]男子ゴルフのメジャー今季初戦マスターズ・トーナメントはタイガー・ウッズ(米国)の感動的な逆転優勝で幕を閉じた。ゴルフは全く駄目な筆者だが、2007年から10年にかけ4年連続で全英オープンゴルフを取材したことがある。

注目はウッズ1人に集中した。07年、カーヌスティ・リンクスで大会史上51年ぶりの3連覇に挑んだウッズはショットが安定せず、逆転優勝はならなかった。08年は膝の手術で欠場。09年は日本人史上最年少で初出場した石川遼とラウンドしたが、まさかの予選落ち。

テレビ局の要請で同じ組となった石川とウッズは高視聴率を稼いだが、その年もウッズは絶不調で、苛立っている様子がありありとうかがえた。59歳の年齢にもかかわらずプレーオフに進んだトム・ワトソン(米国)の円熟味とは大きな違いを見せた。

06年、父アールさんを前立腺がんで亡くしてからウッズの歯車は狂い始めた。メジャー制覇は08年の全米を最後に遠ざかり、09年11月には不倫が発覚、「自分の不貞が自分の妻と子供たちを失望させ、傷つけてしまった」と無期限のツアー欠場を表明した。

10年、復帰したウッズは全英で23位に終わった。17年にはアルコール・薬物の影響下で運転した容疑で逮捕され、ウッズはもう「終わった人」「過去の人」というレッテルがはられた。

「再現された父と子の物語」

スーパースターの転落は「タイガー人気」に頼ってきたゴルフ界にも大きな打撃を与えた。辛い時期を間近で取材したことがある筆者は、頭が薄くなり、すっかり“おっさん顔”になった43歳ウッズの、少し照れたような笑顔に感動した。

メジャー通算15勝。米ツアー通算81勝は故サム・スニードの最多勝記録の82勝に迫る。ウッズは息子のチャーリー君(10歳)を見つけて、抱きしめた。1997年に史上最年少の21歳でマスターズ、メジャー初制覇を果たした時は父アールさんと抱き合った。

ウッズ(中央)と息子のチャーリー君(右)(Getty Images)

今、ウッズのそばには母クルティーダさん、娘サムさん、ガールフレンドのエリカ・ハーマンさんがいる。「子供たちがいる。これは人生の繰り返し。97年には父がそばにいた。私は2児の父になった」とウッズは喜びを表した。11年かかった復活劇はウッズを真の父に成長させた。

トランプの4連続ツイート

ゴルフ好きで知られるドナルド・トランプ米大統領はマスターズをTV観戦しながら4連続ツイートした。

「マスターズが今、すごいことになっている。タイガー・ウッズが2ホールを残して首位を走っている。とても興奮する。チャンネルを合わせろ」

「マスターズの最終ホール、タイガー・ウッズが偉大に見える」

「優勝おめでとう、タイガー・ウッズ。本当に偉大なチャンピオンだ」

「プレッシャーがかかっていても偉大になれる人物を愛そう。真に偉大な男がなんて素晴らしい人生のカムバックを果たしたのだ」

日本の安倍晋三首相は、トランプ大統領が所有する米フロリダ州のリゾート施設「マーアーラゴ・クラブ」のゴルフコースで日米首脳ゴルフを楽しむ光景はお馴染みになった。

不動産王のトランプ大統領が所有するゴルフコースは米国や英国、アイルランド、アラブ首長国連邦(UAE)に17カ所もある。09年に全英オープンが行われた英ターンベリーもトランプ大統領の所有だ。周囲の田園風景と海岸線に溶け込み、ため息が出るほど美しいコースだった。

ウッズに大統領自由勲章

トランプ大統領自身、大学時代からゴルフをたしなむ愛好家で、自著『人生で最高のゴルフに関するアドバイス』で「老若男女にとってゴルフはゲーム以上のもの。それは情熱だ」と記している。復活したウッズに文民最高位の勲章である大統領自由勲章を贈るとツイートした。

けがやスキャンダル続きでウッズから多くのファンやスポンサーが去った。しかし、ナイキはウッズを見放さず、逆転優勝に合わせて「あらゆる人生の山と谷を経験した43歳の男がメジャー15勝目を飾り、3歳の時と同じ夢を追い続けているなんて信じられるかい」とツイート。

ウッズが3歳の時、メジャー18勝の帝王ジャック・ニクラウスを打ち負かす夢を語る動画も投稿し、閲覧数は翌日午後までに2400万回に達した。ウッズ復活はナイキに2200万ドル(約24億6200万円)相当の宣伝効果をもたらした。

ウッズを持ち上げたトランプ大統領は来年に迫る次期大統領選を意識したのだろうか。

トランプ大統領は女性蔑視、人種差別発言を連発し、白人至上主義者を擁護するような言動をとってきた。今さらウッズを激賞してみたところで民主党支持者が多い黒人票を取り込むことはできない。逆にトランプを支持する白人至上主義者の反発を招く恐れすらある。

白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(KKK)」に潜入するアフリカ系とユダヤ系警官を描いた米社会派映画『ブラック・クランズマン』でアカデミー脚色賞に輝いたスパイク・リー監督は「次期大統領選では愛と嫌悪のどちらか、道徳的な選択を」と檄を飛ばした。

「これこそ人種差別だ」とリー監督に噛み付いたトランプ大統領がウッズ復活に大いに感動してみせた理由とは、いったい何なのだろう。

ゴルフ大国、米国と日本

トランプ大統領とナイキの利害は一致している。陰りが顕著になってきたゴルフ人気の浮揚である。英ゴルフ振興団体R&Aの報告書『世界のゴルフ2019年』によるとゴルフをする国は世界209カ国、ゴルフコースは3万8864コースもある。

(1)米国 1万6752コース
(2)日本 3169コース
(3)カナダ 2633コース
(4)イングランド 2270コース
(5)オーストラリア 1616コース

この数字からゴルフはアングロサクソン系のスポーツで、日本は米国に次ぐ「ゴルフ大国」であることが分かる。世界最大の経済大国・米国と世界第3の経済大国・日本の首脳がゴルフ外交に勤しむのにはそれなりの理由があるというわけだ。

日本のゴルフ人口もピーク時の3分の1に

しかしホール数で見た場合、17年には56万7111ホールあったのに、19年には55万6176ホールに減少している。貧困化する米国ではゴルフ離れが進み、2006年以降、オープンするより閉めるゴルフコースの方が多くなったそうだ。

テネシー州メンフィスでは総ラウンド数が08年の11万5000ラウンドから10年には9万3000ラウンドに減少。12年には15万8000ラウンドまで増えるも再び12万4000台に減っている。メンフィス市の経営するゴルフコースは完全に赤字。米国のゴルフは斜陽産業になってしまった。

かつてのウッズのようなスーパースター不在でゴルフ用品の売り上げは低迷。スポーツメーカー、アディダスはゴルフ部門を売却、米ゴルフ用品チェーン最大手のゴルフスミスも倒産の憂き目にあっている。

日本でも少子高齢化でゴルフ人口は激減しており、日本生産性本部の『レジャー白書2017』によると、ゴルフコースで年に1回以上プレーしたことのあるゴルフ参加人口(16年)は前年に比べ210万人も減って550万人。ピーク時の3分の1に激減したそうだ。

太陽光発電所に生まれ変わるゴルフコースも相次いでいる。

ウッズ復活をきっかけに世界のゴルフ人気を蘇らせることができるかどうか。トランプ大統領がウッズに大統領自由勲章を授与する本音は次期大統領選より、自分が所有するゴルフコースの入りが気になるというところか。

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