
「ポツンと一軒家」の視聴率が好調だ。3月10日放送では最高値17.0%で裏番組「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ)を超えたと言うから、立派なものだ。
テレビ朝日系列で2017年10月から不定期特番、昨年10月からレギュラー放送になった。当時、これほど高視聴率を稼ぐとは、誰も予想しなかっただろう。
スキンヘッドの怖そうな男性、築300年の住宅
日曜夜7時58分、計算された開始時間である。某日の放送。衛星写真で岡山県の某山頂付近にポツンと一軒家を発見。麓の集落で聞き込みを開始。捜索隊はカメラマンとディレクターの2人か。
車で狭い山道を登って行き、柵で囲まれた一軒家を発見。スキンヘッドの怖そうな男性(60)に接触。意外にも快く取材に応じ、敷地内を見せてくれた。
男性はブリーダーだった。大型犬、小型犬を分けて飼い、晴れた日には専用のドッグランで運動させ、その間に犬舎の清掃や入浴させている。
「ここなら犬たちが鳴いても近隣の方々には迷惑をかけないですからね」。
午前中は配送業もしている働きものの男性だった。
次は岐阜県のポツンと一軒家。聞き込みで衛星写真を見た商店主のオバサンが途中まで案内してくれたが、当の住人とバッタリ。親切にも自宅まで連れて行ってくれた。山の奥には築300年の立派な母屋があった。家主(92)は元敗残兵で、2世帯住宅だった。
稲作と養蚕を生業とする敷地3000坪の豪農だった。当時の養蚕の道具や家名入りの食器などを見せてもらい、戦中戦後の歴史の一面を聞いた。
道路を独りで補修する男性
広島県東部の山中──。衛星写真をズームすると、茶色い屋根が3つL字型に並んでいる。例によって近くの集落から捜索開始。親切な方が案内してくれた。目指す一軒家は知人の家だった。
築150年の古民家。実家だという男性(73)は50年前に住まなくなったが、麓の自宅から毎日のように通っていた。シイタケ栽培をしていると言う。
さらに、30軒あった集落も次第に消滅し、狭い道路も土砂崩れで危険なので、なんと独りで補修していた。世の中には、立派な方もいるものだ。
宮崎県南部──。シルバーの屋根が衛星写真で光っていた。最寄りの集落で確認してもらったが、案内してくれると言う。ただし、車では通行できない。
「そこはログハウスで、渓谷を徒歩で3.5キロ歩くしかないな」
渓谷のガイドもしているという男性が、「昔は切り出した材木の運搬に、トロッコが走っていた」と説明してくれた。
山道を登って行くと、バイクで下ってくる男性(76)がいた。その方が、ログハウスの持ち主だった。男性は元大工さんで、2年がかりで独りで建築したと言う。絶句である。
「少し前までは、夏休みには孫たちが遊びに来ました。近くに小川もあり、魚を捕ったり……。孫たちも高校生になり、最近は来なくなりましたがね」
少し寂しそうだったが、五右衛門風呂まであり、キャンプには最適の環境だ。
スタジオコメント不要のおもしろさ

MC(司会)・所ジョージ、パネラー・林修。他にゲストが数名週替わりで出演するが、さほど気の利いたコメントをするわけではない。そのくらい、山奥の一般人のドキュメントのほうが面白い。
山の中の『ポツンと一軒家』を探すこの番組、今後も様々な人間ドキュメンタリーを見せてくれるのを期待したい。
ちなみに制作費も、あまりかかっていないと思う。これは、余計なお世話か?
室井實(むろいみのる)
フリーライター
1950年、栃木県生まれ。明治大学法学部卒。東京タイムズを経て徳間書店に入社。「アサヒ芸能」報道部、編集事業室室長、「Goods Press」編集長代理、スター・チャンネル広報部長(出向)、徳間に戻りマルチメディア企画開発、部長。ディレク・ティビー取締役宣伝部長(出向)。徳間に戻り執行役員宣伝部長を歴任。徳間書店退職後、東北新社広報室長。2011年に東北新社を退職し現在に至る。