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国連幸福度ランキングは、どう偏っているのか。 - 本田康博(証券アナリスト)

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■「どちらでもない」「わからない」が多い国、日本

他国と比べ「どちらでもない」や「わからない」といったハッキリ白黒をつけない回答を好む人が多いのは、国際比較調査等で頻繁に見られる日本の特徴だ。こうした傾向を、ここでは「どちらでもないバイアス(偏り)」と呼ぶ。

一例として、ギャラップ・インターナショナル・アソシエーションが毎年末に発表している「グローバル・エンド・オブ・イヤー・サーベイ」から、「自分自身に関して、今年と比べ来年はどうなると思うか?」という選択式アンケートの調査結果を見てみよう。

グラフは、「良い/悪い/変わらない/わからない」の4つの選択肢について、その比率を国ごとに集計した結果から「変わらない」と「わからない」だけを抜き出し、日本とその他の調査対象(50か国)を比較したものだ。日本は「わからない」の比率が他のどの国よりも高く、全体平均の3倍超だった。「変わらない」も多い。グラフの右上隅に近いほど「どちらでもないバイアス」が強いと言えるのだが、そこがまさに日本の定位置となっている。

また、ある顧客満足度の国際比較調査では、「満足」でも「不満」でもなく、「どちらでもない」と答えた比率が他国の約2倍だった。この調査では、国民性等に由来するバイアスによって生ずる回答の偏りを「補正」した上で、国際比較を行っている。そうした「補正」は、学術論文等でアンケート結果の比較を行う場合には、度々行われている。

「どちらでもない」や「わからない」と選択しがちな人が、自身の人生の達成度について0~10で採点するよう問われたとき、どのように回答するか想像してみてほしい。彼らにとって最も答えやすい無難な回答は、おそらくちょうど真ん中の「5」ではないだろうか。

そう考えれば、幸福度調査で日本人の回答が「どちらでもないバイアス」によって中間付近に寄っていると推測するのは、あながち間違いではないはずだ。

■アンケート結果が偏るのは、当たり前

昨年、国内約2万人へのアンケート調査の結果として、日本人の主観的幸福度が「所得」よりも「自己決定」に影響されていると結論づけた研究結果が報道されたことを覚えているだろうか。この調査では、国連版幸福度とは異なる質問ではあるが、主観的幸福度を0~10の採点式アンケートの回答により測定している。(参照・幸福感と自己決定-日本における実証研究 RIETI Discussion Paper Series 18-J-026 2018/9)

「自己決定」を「選択の自由」のように意訳して報じるメディアも多かったが、これはミスリーディングだった。この調査で言う「自己決定」は、高校進学・大学進学・新卒就職の3時点それぞれで、自分の意思で進路を決めたのかを評価した指標である。当然、3時点すべてで自分の意思で進路を決めた場合に最高評価となる。「選択の自由」があったかどうか以上に、「自己決定」する意思の強さが問われる指標だと見るべきだろう。

一方、「どちらでもない」や「わからない」と選択しがちな人たちの「自己決定」は低評価に違いない。となると「自己決定」が低い人の主観的幸福度が低いのか、はたまた「自己決定」が低い人が中間点に近い回答を好んでいるだけなのか、異なる解釈ができてしまう。この興味深い研究結果もまた「どちらでもないバイアス」の影響を受けているのである。

結局のところ、日本でアンケート調査を行えば、調査対象や設問の設定がよほど偏っていない限り、「どちらでもないバイアス」の影響を受けてしまうわけだ。「どちらでもないバイアス」以外の偏りがある場合も当然あるだろう。

今後アンケート結果を見たときは、その中のどこにどのような偏りがあるのか、注意してほしい。それが習慣として身につけば、必ず、どのような問いにも自分の考えを述べられるようになるはずだ。そして、それがきっと、未来のあなた自身の幸福度を高めてくれるだろう。

<文末注>
幸福度を説明するパラメーターとして採用された6つの指標は、それぞれ以下のように決められている。
(1) 一人当たりGDP: 一人当たりGDPの自然対数。GDPは世界銀行「World Development Indicators」から取得。
(2) 社会的支援: 二者択一「困った時にいつでも頼れる友人や親類はいますか?」への回答を平均。
(3) 健康寿命: 世界保健機関(WHO)「Global Health Observatory Data Repository」から取得した健康寿命データを、調査対象期間(2019年版の場合、2016年~2018年)に対応するよう調整。健康寿命とは、生まれてから健康な生活を維持できなくなるまでの期間をいう。
(4) 人生選択の自由度: 二者択一「人生で何かを選択する際の自由度について満足していますか?」への回答を平均。
(5) 寛容さ: 二者択一「先月、寄付をしましたか?」への回答の平均について一人当たりGDPを説明変数とした回帰式で得られた残差。
(6) 腐敗認知度: 2つの二者択一「政府に腐敗が蔓延していますか?」と「ビジネスに腐敗が蔓延していますか?」への回答を平均。

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