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独のアジア人差別CMその後

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■ CMであらわになった「差別」に関する温度差

それにしても、問題の動画がアップされてから削除されるまで、約一か月もかかっているところに、「温度差」を感じます。というのも、日本人を含む東洋人が例のCMを見ると、「不愉快」「差別的」との声が圧倒的に多いのですが、筆者がこのCMについてドイツ語で書かれているコメントをインターネットで見てみたところ、「面白いと思った」「笑った」「女性が性の対象ではなく主体的なのが良いと思った」「差別だというのは言いすぎ」「最近は何でもかんでも差別だとされてしまっている」など、同社のCMを肯定的に見る声が大多数だったのです。当事者との「温度差」に驚くばかりです。

そこには残念ながら「ドイツの現実」も見えてきます。ドイツの学校教育では差別問題を積極的に扱っており、またドイツは国としても人権意識が高い国である一方で、ドイツの世間は「アジア人」を「差別してはいけないマイノリティー」として必ずしも認識していません。過去にアジア人がドイツで迫害をされた過去がないということ、現在ドイツで生活しているアジア人の数が少ないということ、また当事者のアジア人の「ロビー活動が弱い」といったことが原因だと考えられます。

困ったことに、ドイツの社会には昔からどことなく「アジア人はバカにしてよいものだ」という空気が確かにあるのも事実なのです。東洋人が道ですれ違った人に、両目の端を手で横に引っ張る仕草で目の形をバカにされたり、「チンチャンチョン」と言われるなどといったことは枚挙に暇がありません。今回、Deutscher Werberat(独広告審議委員会)の指導が入るまで、このCMが約一か月間も流れていたのは、ドイツの社会にあるこういった「雰囲気」と無関係ではないでしょう。

■ CMの反対運動の発起人であるガン・ソンウン氏

CMに反対する署名活動の発起人であるドイツ在住の研究者のガン・ソンウン氏はホルンバッハ社が当初広告の削除を拒否した際に#1000 Absagenというハッシュタグを立ち上げました。#1000 Absagenは日本語で「1000回のお断り」という意味ですが、同氏は「断られることは失敗ではありません。私たちは1000回断られるまで、抗議し続けます。」と発信しました。現在「ドイツ国内」の主要なメディアにおいて動画は削除されましたが、ガン・ソンウン氏は同社に対して、「ドイツだけではなく、他の国々やチャンネルも含めて全面的に問題の動画を削除すること」を求めており、多数の支持者を得ています。

■ 「ドルチェ&ガッバーナ騒動」との違い

今回のホルンバッハ社の騒動で思い出されるのは、ドルチェ&ガッバーナが中国人を差別的に描いた昨年の動画です。

動画でドルチェ&ガッバーナは「お箸文化」をバカにし、「LとRの発音」が苦手な東洋人をからかっていました。その後、SNS上でガッバーナ氏と思われる人物が中国人に対して侮辱発言をしたことにより、中国では大々的な不買運動に発展し大騒動となりました。結果的にドルチェ&ガッバーナは謝罪をしました。

▲写真 Dolce & Gabbana Bal Harbour 出典:Flickr; Phillip Pessar

ではなぜホルンバッハ社は抗議の声が多くあるにもかかわらず、謝罪をしないのか。それは、ドルチェ&ガッバーナの顧客の多くが「中国人」だったのに対し、今回のホルンバッハ社のターゲットはあくまでも欧州現地の「白人」がメインであることと無関係ではありません。

しかし、インターネットを通して世界中のCMを見ることが可能である今、自分の会社のメインである顧客層にだけ目を向けていればよい時代は終わりました。どこからでもアクセスできるわけですから、Deutscher Werberat(独広告審議委員会)からの指導がなくとも、本当の意味で多様性を大事にするという企業「姿勢」が問われています。

ドイツで日本人を含むアジア人のロビー活動が今まで弱かったからこそ、今後の欧州での立ち居地を考えた時に、ガン・ソンウン氏の活動は有意義なものだと考えます。現にいま「なぜ、今回アジア人は、こんなに怒っているのだろう?」と考え始めている欧州人もいるわけです。「考え始めている」と書いたように、そのテンポがあまりに「ゆっくり」であることが悔しいところですが、なにせ差別をなくすための「第一歩」をようやく踏み出したばかりなのです。

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