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勾留延長に関する特別抗告

東京地裁は2019年4月12日ゴーン氏の勾留を同月22日まで延長する決定をしました。この裁判に対してわれわれは準抗告を申し立てましたが、東京地裁刑事第6部はこの準抗告を棄却しました。この決定に対して、同月15日付で最高裁判所あてに特別抗告の申立てをしました。抗告理由は次のとおりです。

抗告の理由

1 最高裁判例違反

最判昭和37年7月3日民集16巻7号1408頁は、「やむを得ない事由があると認めるとき」とは、「勾留期間を延長して更に取調べをしなければ起訴、不起訴の決定をすることが困難な場合をいう」としている。具体的には、

① 当初の勾留期間内に検察官として、公訴を提起するか、公訴を提起する場合に略式手続を請求するか、又は不起訴とするかを決する程度に捜査を遂げることができなかったこと

② これが「やむを得ない」こと

③ 勾留期間を延長することによって、起訴・不起訴を決するまでの捜査を 遂げることができる見込みがあること

という要件が必要となると解されている(『大コンメンタール刑事訴訟法[第2版]第4巻』436頁)。

 本件において、これらの要件を欠くことは明らかである。

 本件被疑事実は、2018年春に日産幹部が東京地検に持ち込んだものであり、検察官は遅くとも2019年1月には本格的な捜査を開始している(2019年1月4日付け日本経済新聞電子版の記事)。そして、検察官は、2019年1月4日、録音・録画されている取調べにおいて、ゴーン氏に対し、本件被疑事実について言及している。さらに、検察官は、2019年2月14日、平成30年特(わ)第3350号等の打合せ期日において、「追起訴の有無」につき「今年度内には何らかの回答ができるように努める」と陳述し(平成31年2月14日打合せ調書)、同年3月20日の打合せ期日においても、「前回述べたとおり今年度内には何らかの回答ができるようにする」と陳述している(平成31年3月20日打合せ調書)。

このように、検察官は、数か月以上にわたり本件被疑事実の捜査をし、2019年3月末日までに追起訴をするか否かを決することを予定し、約束していた。しかもこの間、ゴーン氏は、2018年11月19日に逮捕されてから、再逮捕・再勾留の繰り返しを経て、2019年3月6日に保釈されるまで、108日間にわたり身体を拘束され続けていた。保釈後も、ゴーン氏は、きわめて厳格な保釈指定条件を遵守してきた(保釈許可決定)。検察官は、数か月以上にわたり、ゴーン氏が身体を拘束され、行動を制約されている状況の下で、本件被疑事実の捜査を行ってきたのである。

 さらに、本件被疑事実による逮捕後である2019年4月11日には、検察官の請求により、ゴーン氏の妻であるキャロル ゴーン氏の証人尋問も実施されている。

 これらの事情に照らすと、①当初の勾留期間内に公訴を提起するか不起訴をとするかを決する程度に捜査を遂げることができなかった、ということはあり得ないし、ましてや、②それが「やむを得ない」ということもできない。検察官は、数か月以上にわたり捜査を続け、その間119日もゴーン氏の身体を拘束し、3月末日までに追起訴の有無を回答すると約束していたのであるから、当初の勾留期間内に起訴・不起訴を決することはできないが、③8日間の勾留期間の延長をすることにより、起訴・不起訴を決することができるようになる、などということは、およそ合理的には考えられない。

 原決定は、「本件事案を解明し、被疑者に対する終局処分を決定するためには、客観証拠の精査、捜査共助による関係者の証人尋問及び複数の参考人の取調べ等の捜査を行う必要があり、本件勾留が専ら被疑者取調べに利用されているとは認められない。」という。しかし、ここで挙げられている被疑者取調べ以外の捜査は、いずれもゴーン氏を勾留しなくてもできるものであり、現にこれまでも行われてきたものである。ましてやゴーン氏は、起訴されている事件の厳格な保釈指定条件により、通信手段を持たず、関係者への接触を厳しく禁じられているのだから、なおさら勾留期間を延長しなければならない理由はない。

 本件が「勾留期間を延長して更に取調べをしなければ起訴、不起訴の決定をすることが困難な場合」にあたらず、「やむを得ない事由」がないことは明らかであるにもかかわらず、勾留期間の8日間延長を認めた原決定は、昭和37年最判に違反するものである。

2 憲法違反

 憲法34条は「何人も、正当な理由がなければ拘禁され[ない]」と定めている。この「正当な理由」とは犯罪の相当な嫌疑(probable cause)というような狭い意味ではない。拘禁を正当化するのに十分な理由(adequate cause)という意味である。

前記のとおり、原決定は、「勾留期間を延長して更に取調べをしなければ起訴、不起訴の決定をすることが困難な場合」にあたらず、したがって「やむを得ない事由」がないのに勾留期間を延長したものであり、拘禁を正当化するのに十分な理由のないことは明らかである。このことは、①ゴーン氏は、これまで、逮捕・勾留の繰り返しを経て、119日も身体を拘束されていること、②ゴーン氏は既に起訴され、公判前整理手続が進行している金融商品取引法違反被告事件及び会社法違反被告事件の当事者として、防御の準備をする必要があること(同被告事件の受訴裁判所は、平成31年3月20日の打合せ期日において、「公判の開始時期」について「9月から始めたい」という考え方を示しており〔平成31年3月20日打合せ調書〕、防御準備の必要性はきわめて大きくなっている。)、③ゴーン氏は、釈放後も、きわめて厳格な保釈指定条件の下での生活を送ることになること(保釈許可決定)を考慮すれば、一段と明らかである。

原決定は、何人も正当な理由(adequate cause)がなければ拘禁されないという日本国憲法の保証を否定したものであり、憲法34条に違反している。

 また、原決定は、「本件勾留が専ら被疑者取調べに利用されているとは認められない」というのであるが、前記のとおり、被疑者取調べ以外の捜査はゴーン氏を勾留しなくてもできるものであり、現にこれまでも行われてきたものである。他方、現実に、検察官は、黙秘権行使の意思を明確に表明しているゴーン氏に対し、連日長時間の取調べをして、ゴーン氏が供述しないのであれば妻や子どもを取り調べるなどと害悪を告知し、さらには、ゴーン氏自身が不利益を被るなどと申し向けている。このような検察官の言動は、明らかに供述を強要しようとするものであり、拷問等禁止条約が禁止する「拷問」に当たる行為である。原決定は、このような取調べを認識・予見しながら勾留期間を延長したものであり、憲法38条1項に違反するといわなければならない。

以上

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