- 2019年04月17日 18:40
「マツコの知らない世界」を取り上げた「レタスクラブニュース」の元をとる記事に激しくがっかりした理由
1/2元をとる記事
先日、非常に残念な記事を拝見しました。
1度に大量の料理を盛りつけるのはNG!?“食べ放題”で金額の元を取るテクニック
それは月刊誌「レタスクラブ」のウェブ版「レタスクラブニュース」で配信された記事です。
以下の書き出しから始まります。
決まった金額で、好きな物を好きなだけ食べられる“食べ放題”。
しかしいくら食べ放題といえど、元を取るのは至難の業ですよね。
そこで今回は、食べ放題で元を取るコツを徹底伝授。
出典:1度に大量の料理を盛りつけるのはNG!?“食べ放題”で金額の元を取るテクニック
記事では「食べ放題で元を取るコツを徹底伝授」として、2019年年2月放送「リトルトーキョーライフ」(テレビ東京)と2017年10月放送「マツコの知らない世界」(TBS)を紹介しています。
前者では食べ放題マニアによる焼肉食べ放題で元をとるコツとして、原価の低いカルビやカレーではなく、原価の高いロースやタンやフルーツを食べることを勧めていました。
後者では孤独のスイーツファイターによるスイーツバイキングで元をとるコツとして、値段が高そうなスイーツを選び、移動の時間が面倒なので山盛りにして持って来るのがよいと述べています。
私はこの「レタスクラブニュース」の元をとる記事に対して、激しくがっかりしたのです。
ちなみに、原価の考え方に疑問符がつくところもありますが、当記事の本題ではないので触れません。また番組中や記事内ではコツを紹介した方の名前が掲載されていますが、個人を攻撃したいわけではないので、ここでは記載しません。
誤った認識が広まる
「リトルトーキョーライフ」は約2ヶ月前の放送と新しいわけではなく、「マツコの知らない世界」は約1年半前の放送と古いです。
そのため、元をとる記事は最近番組で反響があったから作成されたわけではなく、元をとる記事を作成したいがために、わざわざ探し出してきたと推測されます。
私は、客が自由に食べられるスタイルで、元をとるという考え方や手法、および、手法の促進に反対です。
大きな影響力を持つメディアがブッフェのマナーを全く考慮しない元をとる記事が制作されることによって、誤った認識が広まることを危惧しており、これまでの以下の記事を書いてきました。
・明石家さんま氏とマツコ・デラックス氏が主張するバイキングのマナーが完全に間違いであるのはなぜか?
・8月1日は生誕60周年を迎える「バイキングの日」 あなたのブッフェは時代遅れではないか?
・「マツコの知らない世界」炎上事件の最終章。本当に「インスタ映えによる食べ残し」は起きているのか?
・「マツコの知らない世界」のケーキバイキング炎上を通して伝えたい3つの違い
・「マツコの知らない世界」のケーキバイキングでやってはならない5つのこと
なぜ今回の「レタスクラブニュース」の元をとる記事がよくないのか、説明していきましょう。
なお、話が逸れるので深入りしませんが、ブッフェ、ビュッフェ、バイキング、食べ放題という言葉の区別については、ここでは同じようなものだと思ってもらって結構です。
元をとろうとすることはよくない
元をとろうとすることは、よいことではありません。
あらゆる経済活動において、基本的に客が元をとれることは決してないでしょう。なぜならば、提供者は慈善事業を行っているわけではなく、利益を上げられるように値段を設定しているからです。
しかし、なぜブッフェになると、元がとれると浅はかに考えるのか、元をとろうと卑しくなるのか、元をとらなければならないと焦るのか、私には不思議でなりません。
元をとろうとするあまり、自分が好きでもなく、ただ単価が高いと思われるものだけを食べ続けることは、果たして楽しかったり幸せだったりすることでしょうか。
仮に元をとれたとしても、そのせいで飲食店が利益を上げられなくなってしまえば潰れてしまいます。それは目的としたことであり、満足なことなのでしょうか。
飲食店に不利益を与えて廃業に導くことを行ったり、その考え方を流布したり、手法を促したりすることは、利用者であってもメディアであっても、極めて異常な、お客様至上主義であると私は考えています。
一度ホテルなどのブッフェに訪れてもらえれば分かりますが、居心地のよい空間の中で、優に30種類を超える料理やデザートを自由に食べられることは、それだけで価値があることです。
しかし、元をとることにばかり注目していると、ブッフェにおける魅力に気付かなくなり、提供者にとっても、利用者にとってもよくない状況に陥ってしまいます。
元をとる信仰は、ブッフェの価値を不毛な数値(お金)に置き換えて、本質を見失う由々しき課題です。