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橋下徹「誰が大阪ダブル選を仕切ったか」

大阪ダブル・クロス選挙の結果、大阪維新の会は大阪府知事・大阪市長のポストを確保し、さらに府議会で過半数、市議会でも過半数に迫る議席を獲得した。彼らが目指す「大阪都構想」の実現へ向けて一歩前進した形だが、その裏には大阪維新のニューリーダー、吉村洋文・新大阪府知事を中心にした臥薪嘗胆の物語があった。都構想の提唱者である橋下徹氏が、一部想像を交えつつ内幕を明かす。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(4月16日配信)から抜粋記事をお届けします――。

(略)

2015年の「失敗」に学び、戦略・戦術を練り上げた大阪維新

今から約1年半前の2017年11月、大阪市内、心斎橋の東側の長堀というところにある大阪維新の会本部5階の会議室。各自の業務が終わった18時30分に、大阪維新の会の中堅・若手の府議・市議9名が集まった。その中心に吉村洋文がいた。4月7日の大阪ダブル・クロス選挙で大阪府知事に就任し、いまや大阪維新の会のニューリーダーとなった吉村は、当時大阪市長として3年目が始まるところだった。

「あの住民投票の失敗を繰り返さない。徹底的にリサーチを行って、戦略・戦術をしっかり練ろう。そして組織をあげて実行していこう」

※写真はイメージです。(写真=iStock.com/Picnote)

吉村は、目の前の窓の奥に見える、なんの変哲もないオフィスビルの窓灯りを見つめながら、2015年5月17日の光景を思い出していた。ここに集まった9名の府議・市議も各自、同じ光景を思い出していた。そう、あの日、泣きじゃくったことを。

(略)

2015年5月17日。大阪都構想の是非を問う住民投票の投開票日。大阪維新の会のメンバーは午後8時までの最後の住民投票運動を終えて、続々と記者会見会場の大阪・中之島にあるリーガロイヤルホテル大阪に集まってきた。

大宴会場にはテレビカメラがぎっしりと並べられ、100席以上の報道陣の席が埋まりつつある。周囲の中宴会場では大阪維新の会のメンバーやボランティア、そして日本維新の会の国会議員や大阪以外の地方議員メンバーが、開票状況を固唾をのんで見守っている。NHKやその他のメディアはリアルタイムに開票状況を速報している。

「なんとか最後追い上げて勝てたな」
「よかった、よかった」
「これで野党の主導権を取れるぞ」

住民投票運動にあまり深く携わっていない者に限って、都構想可決を楽観視していた。特に、日本維新の会の大阪以外の国会議員たちがそうだった。彼らは永田町の作法に則り、メディアから各情報を入手し、その情報交換に勤しんでいた。メディアからいち早く情報を入手することが国会議員のステイタスを決めるらしい。

NHKを除く、新聞社・民放各局の情勢調査では、ぎりぎり可決となる見込みであった。

「たいした活動もしていないのに、あんなに浮かれやがって」
「結局は永田町での自分たちのポジションがどうなるかだけが心配なんやろ」

今回都構想戦略本部メンバーに選ばれた9名は、当時、そんな楽観的な雰囲気を振り払うように、極度の緊張状態で開票状況を見守っていた。やけに喉が渇き、ペットボトルの水のなくなりが早い。

(略)

都構想「否決」の瞬間、一番泣き、怒りで震えたのが吉村だった

メディアの開票速報では、賛成、反対の一進一退の状況が刻々と報道されている。

それでも若干賛成有利の状況が続く。各区の投票箱が開票され、賛成多数か、反対多数か、そしてその票数が発表されるたびに、ホテルの会場からは大きな歓声とどよめきが沸き起こる。

「よっしゃ!」
「あかん!」

メディア関係者も含め会場に集まっている者の感情の揺れは益々激しくなる。

今回吉村が招集した都構想戦略本部メンバーの9名は、当時極度に顔面が硬直して、言葉も出ない。実はこのメンバーの多くは、橋下が都構想・住民投票戦略チームとして招集したメンバーとも重なっていた。橋下は自分を本部長にし、チームリーダー(副本部長)に吉村を指名していた。そして吉村がチームを編成した。このチームは、住民投票の成否は全て自分たちの責任だという、とてつもないプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。

22時32分。この時点では賛成が1万票ほど上回っていたが、都構想反対派が最も多い平野区が未開票であったことをもって、反対多数、都構想否決の速報が流れた。

賛成69万4844票。
反対70万5585票。

橋下が招集した都構想・住民投票戦略チームメンバーでもあった今回の都構想戦略本部メンバーの全員が、それぞれの場所で、大声を上げて泣いた。我慢しようにも我慢できない。声も涙も体の奥底から湧き出て来る。

その中で、嗚咽しながら、一番涙を流し、怒りで全身を震わせていたのが、吉村だった。

「あの住民投票の失敗は繰り返さない」

今の都構想戦略本部メンバーの目に涙はない。ぼんやりと壁の先を眺めていた視線が部屋に戻り、各メンバーは吉村の目を見定めた。メンバー全員の目の奥に、熱い炎が宿ったことを吉村は確認し、そして自身の胸の奥に言いようもない熱いものを感じた。(想像を加味して構成したフィクションです=敬称略)

(ここまでリード文を除き約1800字、メールマガジン全文は約1万7200字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.148(4月16日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【圧勝・大阪ダブル選(2)】なぜ大阪維新は強いのか? 2015年の都構想「否決」が勝利への布石になった》特集です。

(前大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=iStock.com)

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