- 2019年04月17日 11:01
落合陽一「2025年までに新しい転換点を示すのが僕らの役割」
2/2「どうしたら本当に世界を変えられるのか?」

テクノロジーを実装し、世の中に出していく際に、どんな課題に突き当たるのか。技術面、社会面からそれぞれの課題を以下のように挙げます。
- 少ないデータセットでの学習
- 三次元データからの二次元データセット生成などを含めデータセットの整備のための課題
- データの収集ルーチンを含めた現場課題の解決
- 個人に合わせたチューニング
- 学習:教師信号のインターフェースのデザイン
- 身体性:デジタルファブリケーションによる身体拡張
- DNN:入力と出力の直接学習によってどこまでいけるか
- 分野融合による技術評価と民間企業との創発
- 社会実装としてのアカデミックを超えた巻き込み
- ユーザー層へのリーチと実践コミュニティ作り
- 認知度の向上、障害を持つコミュニティ(被験者・受益者)との連携
――落合
「個人に合わせたチューニングをどう行うかは難しい問題です。たとえば、おばあちゃんの補聴器の認識が間違った認識をしても、おばあちゃんはUIを使って教えてくれない。専用のデバイスを開発する必要があるかもしれないし、ウェアラブルでボタンを押すだけにする必要があるかもしれない。このように、機械学習に伴うインターフェースのデザインは非常に重要だと思っています。
身体性についても、デジタルファブリケーションによる身体拡張はどこまで可能なのかを考えなければならない。具体的には、義足にはどんな素材が必要で、どこまで3Dプリンターで作れるのかといったケーススタディが必要になります。
入力と出力の直接学習をディープラーニングでやるにしても、実際どこまでできるかは、現場によっても変わってくるので、やってみないとわからないというのが現状です」
――落合
「さらに、課題を解決するためにいろいろな技術やツールを使う人を社会がどう受け入れるか、どうやって民間企業と創発しながら問題を解決していくのか、社会面での課題も大きいんですよ。
研究課題とエンジニアリングと社会認知を一気通貫して問題を解かないと、状況は何も変わりません。今までもみんな努力してきましたから。過去に義足を作る人はたくさんいたし、車椅子を自動化しようとする人も1980年代からいるので。
ただ、2020年の東京オリンピックや、2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)を控えている今のタイミングは変化のチャンスだと思っていて、その機会を活かすことが我々の使命です」
落合氏は、生まれながらに足と手がない乙武洋匡氏に、モーター搭載のロボット義足を装着するプロジェクトの概要を話しました。
「xDiversityで行われている遠藤プロジェクトリーターを中心としたプロジェクト。僕は乙武さんが義足や義手を付けて歩いたら、ガンダムみたいでかっこいい」と思ったといいます。
――落合
「乙武さんは普段は車椅子で移動していますが、本当は常に車椅子に乗っている必要はないんです。その時々のタスクに合わせて車椅子と義足を使い分けられる社会こそ、真に多様な社会だと思っています。
ただ、現状まだまだ乙武さんは歩けないわけで。どうすれば膝関節を動かせるか、体の一部を自由に入れ替えるにはどうすればいいのかなどを考える必要があります。それには本人の練習も必要だし、周囲の人の協力も必要です」
重要なのは、そういったプロジェクトが動いていることが社会に認知されること。その上でコストはどれくらいか、どれくらいでペイするのかを考えながらエンジニアリングする必要があると、落合氏。
――落合
「どれか1つでも欠けたら、何も変わらないんですよ」
「あるべき未来を想定して戦略を考える」
――落合
「今ある課題を解決するために必要なデバイスやツール、ソフトウェアはすでにある。重要なのは、いま豊富にある、画像認識や音声認識などのソフトウェアリソースを、状況に合わせてどう最適化し組み合わせて解決していくかです。
そこで重要なマインドセットは、技術的に大したことがなかったとしても、それをバカにしないこと。大したことのない技術で問題が解決できれば、スマートだしコストも安くつきます。課題を解決する上での技術なんて何でもいいんですよ。新しい課題を見つけ、技術で解決する。そのこと自体がイノベーションなんです」
落合氏は、ビジョンドリブンの開発スタイルにこそ、あるべき世界があると言います。
――落合
「車椅子が全自動になったり、すべての問題をたくさんのロボットが解決してくれるような世界がいきなり来るわけがない。技術障壁をクリアするための行使コストを考え、最終ゴールを見定めた開発が重要です。
課題を解決する上で、技術なんて何を使ってもいいんですよ。ただ、今のままではいずれ人もリソースも足りなくなるので、自動化できるタスクは自動化する必要があるし、それによって付加価値が出るならそれをビジネスにしていかなければならない」

――落合
「課題を解決するためには、ゴールを見定めて、段階的に進めていく必要があります。30年後に現場の作業員の数が足りなくなってもやっていけるように、、今年は3時間だけ自動化しよう、来年は10時間まで自動化してみよう、といったプロセスです。あたりまえのことですが意外とできていない」
世の中の課題をどう見つけ、どう解決していくのか。落合氏はひとつのキーワードを提示しました。
「バックキャストアプローチ ── あるべき未来を想定して戦略を考える.」
「この数年で世界はガラッと変わる」
――落合「我々にとってのあるべき未来はすごくわかりやすい。
人口減少。労働力不足。使える人的リソースは目に見えて減少しています。特に、ソフトの開発人材や現場にいくエンジニアリング人材は不足している。一方で、高品質かつ壊れないハードウェアを作るリソースはある。さらには、その応用先となる困っている人もいる。ソフトウェア化する、自動化する、省人化する、AI化する。こういった技術の社会的要請が高まっているんです。
バックキャストアプローチはよく使うフレーズではありますが、意外とできていない。現場から手を動かしながらあるべき未来を想定すれば、やるべきことは明確です」

「(前回の)東京五輪から大阪万博までの間には、日本社会におけるハードウェアの転換点がありました。新幹線を通したり、高速道路を作ったり。現在の都市構造の多くはこの時期に作り出されたものです。
次は我々の世代がソフトウェア技術を使って、2020年から25年までの間に転換点を示さなくてはいけない。この数年で世界はガラッと変わると思っています。
世の中に転がるソフトウェアと、日本が得意とするハードウェアをいかに組み合わせるか。それこそが、多様性社会の中でソフトウェアを使って問題解決するために最も重要なことだと思っています」




