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防犯カメラ設置運用基準にとって最も大事なこと

先日京都市で、防犯カメラの設置運用基準について話をする機会をいただいた。だが、話の核心部分が、なかなか理解してもらえないので、整理をかねて、まとめておく。

防犯カメラを使って商店街や住宅街などの公道を撮影する場合、これを許容し又は規制する法律は存在しない。政省令もない。条例は地方によってあったりなかったり。ガイドラインも同様だし、そもそも法令ではないから裁判所を拘束しない。つまりガイドラインに従っても、裁判所が違法と判断する場合はある。

では判例や裁判例はどうかというと、「京都府学連デモ事件」(最高裁判所大法廷昭和44年12月24日判決)を筆頭に、警察等による写真・ビデオ撮影と録画について、いくつかの裁判例が存在する。これらの裁判例から抽出されるルールは、大雑把にいうと、「撮影・録画が許されるのは、犯罪の直前、最中、直後に限る」というものだ。犯罪が起きる一般的抽象的可能性がある、というだけで、容疑者でもない一般人を撮影・録画をすることは違法となる。したがって、このルールをそのまま適用すると、現在、商店街や駅前などに設置されている防犯カメラは全部、許されないことになってしまう。

それなら、全部撤去すべきかというと、そうではない。ごく一部―たとえば、いわゆるバリバリの左翼系人権派弁護士―を除けば、防犯カメラに一定の有用性を認めつつ、行きすぎては困る、と考える国民が大多数だろう。そうだとするなら、我々法律家は、上記判例ルールの適用範囲を狭く限定したうえで、適切な防犯カメラの設置・運用基準を考えていかなければならない。

適切な防犯カメラの設置・運用基準を策定するにあたって重要なのは、実体(中身)の問題と、形式(手続)の問題だが、とりわけ、形式(手続)の重要性を強調したい。具体的にいうと、防犯カメラの設置運用基準と実際の運用は、必ず成文化し記録して紙に書き、これを公開(または請求があれば直ちにコピーを交付できる状態に)しておく必要がある。なぜなら、法律も判例も存在しない以上、実体(中身)の適正を担保するのは、第一に、その形式(手続)だからである。

すこし噛み砕いて説明しよう。法律も判例もない以上、防犯カメラの設置運用基準は、しょせん、自主ルールに過ぎない。自主ルールの実体(中身)が違法では論外だが、適法だとしても、実際の運用がルール通りになされていなければ、画に描いた餅に過ぎない。そうならないためには、設置運用基準と実際の運用を記録し公開して、いつでも第三者のチェックが受けられるようにしておかないといけない。いいかえれば、いつでも第三者のチェックが受けられるほど、逃げも隠れもせぬ運営をしているということそれ自体が、運営の中身も適正だろう、という信頼を招くのである。

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