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これから始まる「令和時代」は”真っ当な保守”として多様性を追求しよう

 

1日の「令和」発表前後から”新元号ネタ”一色となったメディア状況に、ジャーナリストの堀潤氏は何を思うのか。迎える「令和時代」、メディアの果たすべき役割とは。

 かつて自然災害や飢饉、騒乱などで国民が希望を失った時に、新たな元号を示してその空気を一掃する、という目的での改元がありましたが、今回の改元も、その性質に近い効果をもたらしているような気がしています。メディアの報じ方を見ていても、平成を総括して、新たな時代が始まるんだ、という企画も多いですよね。でも本来のメディアの役割は、改元しても変わらない現場の本質を丹念に追っていくことではないでしょうか。

 事実、4月1日には改正入管法や働き方改革関連法が施行されていますし、賃金の問題だって、改元とは関係ありません。平成の30年間でどれだけの改革ができたのか、あるいは後退してしまった部分は無かったのか。浮かれムードは4割くらいで、残り6割くらいはそういう部分に目を向けたいですよね。

 最近、安倍総理の談話の中に"一億総活躍"を滲ませるメッセージが含まれていましたけれど、僕は自分の番組である『モーニングクロス』で弁護士の田上嘉一さんが紹介してくれた、「多様性」の考え方との関わりがとても気になっています。

 田上さんの話というのは、「マルチカルチュラリズム」と「カルチュラルプルーラリズム」があるというものでした。つまり、同質でフラットな社会こそが多様性なのか、でこぼこだけど共存しているの状況こそが多様性なのかと。やはり前者の場合、統一の価値観で世の中を均そうとすることでの反感や分断が生じ、結果として目指すべきだった世界とは別の方向に向かってしまう可能性がある。

 僕も今までは社会が価値観を共有して同じ方向性に向かっていければいいな思っていましたが、欧米の状況を見ていても、その"同じの価値観"には恐ろしい部分があることも見えてきました。まさにリベラル的な「多様性」が、ある意味で排除に向かってしまう問題がそうですよね。「多様性」という名の下で、一つの考え方を押し付けるということになりかねないんです。だからこそ、でこぼこだけれど、お互いが独自のアイデンティティを維持しながら共存していく、そういう多様性の日本は選択をしていかないといけないのではないかと。

 そんな議論をしている時に、視聴者からは素敵なコメントも届きました。「凸と凹が隣同士にいて、組み合わさることが大事だ」と。まさに、立場やバックグラウンド、人種、文化、収入、思想信条、性差…と、自分との違いを持った隣の人と言いたいことが言い合える社会こそが大事なのだと。これから迎える「令和時代」の日本は、でこぼこな、違うものをどう共存させていくのか。そのための方策を本格的に模索していかないとぶっこわれてしまうと思います。

 そのための一つのヒントを、岡山で見つけました。

 かつて「平成の大合併」が行われた頃、僕は岡山放送局にいて、住民投票で「合併しない」という選択をした西粟倉村を取材しました。"合併の交付金ももらえず、過疎の村が生き残れるのか?""広域行政にしていかないと、効率が悪いんじゃないか?"という観点から、都市部から移住してきた未経験者の男性が家族を養いながら林業に取り組む困難さを、ずいぶん厳しい目線でリポートしたと思います。

 あれから15年、実はその西粟倉村こそが周辺で最も輝いている地域になっていたんです。合併を選択肢、美作市と一緒になった隣の旧東粟倉村エリアに比べ、出生数には圧倒的な差が生まれましています。昨年には新しい保育園が建設され、待機児童を解消するため保育士確保をしなければならない、といった課題が出るくらいです。また、村の90%以上が森林なので産業は林業主体ですが、衰退から守るための100年計画を立案、地権者を一度集約して、きちんと管理するようにしました。さらに再生可能エネルギー100%の村を目指し、ベンチャー企業の積極的に受け入れるようにもしました。最近では独自の資金調達を模索しようと、ICOにも挑戦しました。

 そこには"スーパー公務員"ともいうべき、上山隆浩さんという役場職員の存在があります。地元で揉め事が起きると積極的に調整に乗り出してきてくれるんです。でもなによりも、"ウチが一番、他はダメだ"という気持ちが排他的になることなく、良い方向に向かうことができた村民のマインドですよね。

 田舎には独立の気風もある一方、一方で新しいものや外のものを受け入れない、というような意固地なイメージもありますが、西粟倉村は何が違ったのか。上山さんは、「カルチャーです」と言うんですね。地元が好きで、自分たちの土地を大切にしていきたいだけなんだと。自分たちの文化を継承しながら、自分たちにはない新しいものを生み出していくためには、よそものを受け入れて、融合していかないといけないと。

 合併という選択をしなかったのは、住民投票、つまり村民の民意の結果でした。そこから何ができるかと真剣に考えた結果出てきたのが、まさにそういう「多様性」だったんですね。住民投票や国民投票って、ともするとポピュリズムの話とセットで語られるし、ネガティブなイメージもつきまとうけれど、学ぶべきところがあると思いませんか?。

 「平成の大合併」って、ある意味で同一の価値観で大きな町になってやっていくんだ、ということだったと思うんです。でも結局は中心部に資本が投下されただけで、合併した周辺部はどうだったのだろうかといった点など、様々な検証が必要だと思います。でも、そんな中にあって、西粟倉村は極めて"真っ当な保守 "であったと言えるのではないでしょうか。新しい時代、保守であるからこそ多様性を大事にして、地域を前身させなくてはいけない。

 今、たとえば原発のある自治体では、意見を言い合える場がなく、選挙でもなかなか争点化しづらくなっています。それは皆が少なからず原発関連の産業の中で生きていて、あえて自分たちの地域を分断させてしまうようなことをする必要はないのではないか、そう考えてしまうからだと思います。でも、本当は意見を言い合って前進するのが民主主義。「令和」の「和」はハーモニーですから。議論し、投票をした結果、原発を受け入れるという選択があってもいいはずです。

 それに対し、"これは差別だ""解決策はこれであって、これしか認められない"と、一辺倒の意見や価値観で塗りつぶしていく。リベラルの運動も、そういうことで失敗してきた部分があると思う。そうした矛盾も踏まえ、僕はメディア人として、分断を煽ることなく、本当の多様性を持って動いている社会を提示していきたいと考えています。

■プロフィール


1977年生まれ。ジャーナリスト・キャスター。NPO法人「8bitNews」代表。立教大学卒業後の2001年、アナウンサーとしてNHK入局。岡山放送局、東京アナウンス室を経て2013 年4月、フリーに。現在、AbemaTV『AbemaPrime』などにレギュラー出演中。

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