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炎上したコンドームの広告、「同意」をめぐる議論はなぜなくならない?

Tulipanの広告より(Courtesy of Tulipan)

先週、コンドームやアダルトグッズを販売する会社Tulipan社が、双方の性行為への同意なしでは使えないコンドームの広告を公開した。コンドームを使用するには、箱の四辺を同時に押さなくてはならない。つまり、箱を開封するには4本の手が必要となる。

Tulipan社は広告に「PlacerConsentido」、英訳すれば「快楽は許可されました」というハッシュタグをつけてキャンペーンを展開。きっと同社は、前向きな性的体験を得るには双方の協力が必要だ、という力強いメッセージをクリエイティヴに発信したかったのだろう。また、この手の社会啓発キャンペーンをおこなう他の企業と同様、こうしたメッセージを発信することで世間から拍手喝さいを浴びると考えたに違いない。だが、実際はそうならなかった。

よくぞ「同意」の重要性を推奨してくれた、と称賛されるどころか、Tulipan社のコンドーム広告はソーシャルメディア上で酷評された。その理由は実に様々だ。一部の人々は、腕を切断して箱を開けられない人々がいることを無視しているとして、これは障がい者差別だと主張した。また別の人々は、性行為は2人でおこなうものだという考え方が、複数のパートナーとの関係を好む人々を差別していると主張した。またある人は、仮に性的暴行事件があった場合、実際には同意の上ではなかったのに、同意があったことを示す「証拠」としてこうしたコンドームが用いられ、被害者ではなくむしろ加害者を守ることになるのでは、と懸念している。

結局のところ、Tulipan社のコンドームは決して店頭販売を目的としていないので、こうした主張は非現実的だ、と言うのは、同社のエグゼクティヴ・クリエイティヴディレクターを務めるホアキン・カンピーナス氏。「小売販売の予定はありません。あくまでも、同意に関する関心を高める目的で作った限定商品です。ですから、商業的な意図は一切ありません」とカンピーナス氏はローリングストーン誌の取材にメールで答えた。

しかし、Tulipan社は根本的に同意の意味を取り違えている。ある女性がTwitterに投稿したように、「コンドームをつけたからといって、自動的にあらゆる性行為にも同じようにOKしたわけではない」のだ。そもそもこの広告は、同意が行為の途中で撤回される可能性がある事実をないがしろにしている――相手の望まない行為をする、あるいは単に何らかの理由で心変わりした場合などだ。コンドームを使うことへの同意は、性行為への同意承認プロセスの一段階ではあるものの、最終段階ではない。また一部の人々が主張しているように、同意というものは性行為の前だけでなく、行為の最中や終了した後も

性行為への「同意」に関する議論に首を突っ込んでマーケティング戦略に利用した企業はTulipan社が初めてではない。広告代理店Ogilvy Sao Paolo社は昨年Schweppes社のために、女性がクラブでどれだけ頻繁に身体を撫でまわされているかをテーマにした「スマートドレス」という広告を制作した。広告の中で、はじめのうちは女性蔑視的な意見だった男性陣が、恐怖の面持ちで動画を見ている。これまで女性たちが再三訴えてきたこと、つまりハラスメントという問題がそこら中に蔓延していることをはっきりデータで見せつけられ、驚いている。

またIT業界では、心優しき起業家たちが性的暴行を防ぐウェアラブル装置を開発して、新たな市場を開拓しようとする傾向もみられる。たとえば2017年、MITの卒業生の一人がBluetooth対応ステッカーを開発した。無理やり服を脱がそうとすると、服を着ている本人が同意の上であることを指示しないかぎり、自動的に5つの緊急連絡先に電話がかかる仕組みになっている。性行為の前に双方が使用することを想定した同意承認アプリなるものもあるが、Tulipan社の広告同様、性的暴行防止派の批判を浴びている。同意が会話の流れの中で行われるものであることを認識していない、というのが彼らの主張だ。ベッドの中で何がアリで何がなしか、その線引きは話し合いと交渉を繰り返すうちに決まるものだし、そうあるべきだ。「契約書を交わすのとはわけが違うのよ」。Feministingというブログでレイナ・ガットゥーソはこう書いている。「同意というのは、ベッドルームから教室の中、活動の場に至るまで、より平等的な社会規範を作ろうという包括的なプロセスなのよ」

Tulipan社側は広告が会話の糸口を作ったとして、世間の厳しい反応にご満悦なようだ。「BBDO社では、今回のキャンペーンで起きたことに大変満足しています」。広告に対する痛烈な批判について尋ねられたカンピーナス氏はこう答え、広告キャンペーンが失敗に終わったのは「Tulipan社がローカルのブランドで、潤沢な予算がない」ためだと語った。

「この広告の目的は啓発です。性行為の同意に関する議論を社会に促すことです」とカンピーナス氏。「事実、こうして議論の新たな側面が持ち上がり(例えば、同意が途中で撤回される場合があるなど)、それが広告に反映されることで、この問題が再び議論されてゆくのです」。だが本当に問題なのは、性行為の同意をめぐる議論がそもそもなぜ必要なのか、ということだ。

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