
[東京 16日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は16日の衆院財務金融委員会で、今後も地域の人口減少などの構造要因が地域銀行の収益押し下げ要因として継続的に働くとし、将来的な金融仲介機能に悪影響を及ぼさないかしっかり点検していく、と語った。緑川貴士委員(国民)の質問に答えた。
総裁は地銀の経営環境について、地域の人口・企業数の減少や低金利環境の長期化によって、基礎的な収益力がすう勢的に低下しているとの見解を示した。
そうした中でも、これまでは有価証券の売却益や信用コストの低下が全体の収益を支えてきたが、総裁は「有価証券売却益が将来にわたって続くわけではないし、信用コストもこれ以上下がっていくことは考えにくい」と指摘。
現状は「地域金融機関は十分な資本と流動性を備えている」としながらも、「今後も地域の人口減少などの構造要因が地域銀行の収益力の押し下げ要因として継続的に働くことが見込まれる」と語った。
そのうえで「将来的に金融機関の資本基盤やリスクテイク能力が制約を受け、金融仲介機能に悪影響を及ぼすことがないか、しっかり点検していくことが適当」と述べるとともに、地域金融機関に対して「コストの削減であれ、あるいは提携の拡大であれ、さまざまな努力を行っていただく必要がある」と要請した。
また、総裁は世界経済の減速を受け、日本の輸出・生産も弱めの動きとなっているものの、3月調査の日銀短観などを踏まえて「設備投資はかなり堅調で、消費もしっかりしている」と指摘。日本の内需は全体として堅調に推移しているとの認識を示した。
先行きは、中国や欧州の持ち直しを背景に、世界経済が年後半にも回復し、来年は高成長が見込まれるとし、日本経済も「全体として緩やかな拡大が続くとの見通しは、かなり確か」と表明。
物価面では、2%目標に向けたモメンタム(勢い)は維持されている中で、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくことが展望できるとし、金融政策運営は「現在の大幅な金融緩和を粘り強く続けていくことが重要」と語った。
(伊藤純夫)