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- 2019年04月16日 12:06
【読書感想】大統領とハリウッド-アメリカ政治と映画の百年
2/2実はケネディはそれほど映画好きではなく、よほど面白い作品でもなければ、上映から20~30分で席を立つのが常であったという。彼はさしてセレブに関心はなかったのである。彼自身が一番のセレブだったのだから。
ケネディのお気に入りの映画は、ワイラー監督による洗練された『ローマの休日』(1953年)であったという。夫の在職中に、ジャクリーンは約70本の映画をホワイトハウスで鑑賞しており、その中には、アラン・レネ監督『去年マリエンバードで』(1961年)のように抽象的な作品も含まれていた。もちろん、夫は観ていない。
さて、『市民ケーン』である。「ザナドゥ―」という豪邸で、稀代の新聞王ケーンが孤独のうちに死ぬ。『バラのつぼみ』という言葉を残して。この言葉の謎を解くために、ある記者がケーンの人生をたどる。
偶然に巨万の富を手にしたケーンは、自己顕示欲を膨らませながら、妻を失い愛人を失い友人を失っていく。この間、彼はキューバでの危機を利用して、自らの新聞の発行部数を増やそうとした。自社の特派員が戦争など起こりそうにないと報告すると、この新聞王は傲然と答えた。
「君が退屈な散文を提供するように、私は戦争を提供するのだ!」。まさにフェイク・ニュースである。同様に、ケーンはその新聞を利用して世論を左右し、知事選挙に立候補さえした。だが、不倫が発覚して、彼は落選する。
彼の新聞は二種類の見出しを予め用意していた。「ケーン当選」と「不正投票」である。結局、件の記者は「バラのつぼみ」の謎を解明できずに終わる。母とともにあってまだ幸せだった子供時代に、ケーンが愛用した雪ぞりの模様が「バラのつぼみ」だったのである。
孤独なデマゴーグによる大衆扇動の危険が、ここでも描かれている。しかも、そのデマゴーグが主人公なのである。実は、『市民ケーン』はトランプ大統領のお気に入りだという。
自らが「フェイクニュース」の震源地であるトランプ大統領は、どんな気持ちで、この映画を観ているのでしょうか。
ケーンに共感しているのか、自分はこんな失敗はしないぞ、と反面教師にしているのか。
いずれにしても、いまの時代は「一昔前のハリウッド映画よりも、映画的な世界」になっている、ということなのでしょう。
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