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中国・米国の株価急騰、その要因と持続性

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~ 米中対決が引き起こした金融緩和+株高競争

(1) 想像を絶する米中株高

昨年クリスマスの時点で年初3か月間の株価急騰を予見できた人は皆無であろう。米国S&P指数は昨年9月末の史上最高値からクリスマスまで20%の暴落となったが、先週末(4月12日)までに24%の急騰を遂げ、史上最高値比-1%の水準まで回復した。今や最高値更新は時間の問題であろう。

中国株式の急騰は一段と強烈で、上海総合指数は4月4日には3247ポイントと、1月2日のボトム比32%の上昇となった。上海総合指数は、米中貿易戦争勃発が明らかになった昨年3月初旬が3200~3300ポイントであったので、貿易戦争勃発前の水準を回復したのである。米中貿易戦争の米中合意が成立する前に、貿易戦争の当事国中国と米国の株価が完全回復し、世界をリードするとは!!

昨年末までほとんどの市場参加者は、米中貿易戦争が世界経済の失速と株安を引き起こすことを心配していた。株価急落の起点となった昨年10月4日、ペンス米副大統領がハドソン研究所において、非常に厳しい中国批判のスピーチをした。

これまでの貿易や経済に限定した批判の枠を超え、政治、軍事、情報、技術、あらゆる面での中国の不公正さを非難した。WSJ紙は「ペンス副大統領は第二次冷戦の開始を宣言した」という論説(ウォルター・ラッセル・ミード氏)を掲載し、米国が全面的な中国封じ込め政策に転換したとの評価を伝えた。「いよいよアメリカと中国は根底からの戦いの時代に入った。経済や市場関係者は、国家安全保障が経済に優先する時代に入ったことを過小評価している」と論説は主張した。

経済も株価も貿易戦争の犠牲になる覚悟をせよ、というわけである。ところが今、広く共有されていた懸念とは真逆の株価上昇が続いている、なぜだろうか。


(2) 米中で覚悟を持った金融緩和が展開されている

金融緩和⇒株高が国家プレゼンスを押し上げる
最大の理由は米国、中国ともに、相当な覚悟を持って金融緩和を展開していることであろう。トランプ大統領は昨年央以降執拗にFRBに金融緩和促進のプレッシャーをかけてきたが、その理由の一つは、米中貿易戦争によって予想される景気悪化効果を相殺する必要があったから、と思われる。後述するようにFRBは昨年末以降、金融引き締めから緩和へとかじ取りを大転換させ、それが米国株高の最大の推進力になった。

他方中国も、昨年春先までシャドー・バンキングを抑制する意図から、預金準備率の引き上げ、融資抑制など引き締め政策をとり、固定資産投資など国内需要の急鈍化と株価下落を引き起こした。しかし米中貿易戦争の激化に対応し、金融政策を大転換させている。預金準備率は2016~2018年前半の16.52%から13.5%にまで引き下げられ、銀行融資が急拡大、1~3月の人民元建て融資額は5.8兆人民元(=約8,641億ドル)前年比19.5%増と大きく増加した。そうした資金が、株式、不動産、コモディティ投資などに向かっていると推測される。


このように米国も中国も貿易戦争と覇権争いが激しくなればなるほど、自国の株価を引き上げ、それによって信用創造と需要拡大を行い、その結果として世界経済におけるプレゼンスをより高めるという方向に向かっているのである。以上が米国と中国の株価が突出して大きく上昇している理由である。

株価の全面回復に加えて、米中通商協議が合意されれば、需要の押上げ効果も起こりえる。貿易戦争による見通し難により、昨年末に中国での設備投資が一旦ストップしたが、懸念された米国・中国の最終需要減少の可能性はほぼなくなった。となると、投資の一旦停止はこれからの供給力の鈍化をもたらすわけで、将来的には需給ひっ迫の可能性を高める。昨年クリスマスのボトム比40%上昇という米国半導体株価の急騰は、そうした可能性を織り込んでいるとも考えられる。米中の経済が浮揚感を強めれば、それに輸出している日本やドイツ、韓国などの景気も押し上げる。

このように米中貿易戦争がもたらす帰結は、世界経済の悪化や資産価格の下落ではなく、逆にむしろ株価と経済を強く押し上げることに結びつき始めているように見える。なぜこのような展開になったのかだが、それはインフレが起こらないために全くコストなしに需要を押し上げることが可能だから、ということに尽きよう。金融緩和による株高が購買力を高め景気を押し上げる、それは中国に関しても当てはまることである。

今や世界的に適切な金融緩和のサポートによる株高が、自国経済の優位性に繋がるという時代に入っているのかもしれない。


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