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映画版『奥田民生になりたいボーイ(以下略)』を観て自分の中の「奥田民生になりたいボーイ」が愛おしくなった話

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奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール DVD 通常版
出版社/メーカー: 東宝
発売日: 2018/03/14
メディア: DVD
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 映画版の『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(実は原作には「と」が入らないらしい。今書いているときに知った)をようやく観た。

 「奥田民生になりたいボーイ」という言葉を知ったとき、金属バットで後頭部を打ち付けられたような衝撃は今でも忘れられない。何を隠そうぼくも、誰にも言ってはいなかったが、「奥田民生になりたいボーイ」だったのだ(映画版では妻夫木くんが33歳、編集者という風体で出てきたので、今のぼくと丸かぶりだ)。誰にも言ってはいなかったけど、深いところで実はそう思っていたからこそ、その気持ちを奥の方から引き釣り出され、晒し者にされたかのような強烈なインパクトがあったのだろう。

 個人的にぶん殴られたのと同時に、企画としての鋭さにもやられていた気がする。「企画が生まれた時点で勝ち」というコンテンツがあるが、本作はまさにその部類に入るだろう。

 「奥田民生になりたいボーイ」――これほどまでに痛烈な表現が今まであっただろうか。

 天衣無縫でマイペース。ダラダラしているようで、締めるところはビシッと締める。そんな奥田に憧れる同性のファンも多いだろう。しかし、そもそも奥田本人は「奥田民生」になりたかったわけではない。奥田がなんとなく自分のやりたいようにやっているスタイルが、いつしか「奥田民生」という確固たるブランドを作り上げ、それがファンに対して、音楽性以外のところでも憧れられるようになっていったのである。「奥田民生」は「奥田民生になりたかったボーイ」ではないのだ。

 ここに、日本全国、津々浦々にいると思われる「奥田民生になりたいボーイ」の倒錯がある。

 分かりやすくいえば、村上春樹のノーベル賞受賞を祈って毎年のように発表日に酒盛りをしているハルキストたちが最も村上春樹的でないように、自分が『情熱大陸』に出るときのカット割りを妄想することが最も『情熱大陸』的でないのと同じように、「奥田民生になりたい」と思っていることが、最も「奥田民生」的でないのだ。

 原作は「企画が生まれた時点で勝ち」という部類と書いたが、一方で、渋谷さんのいい意味でアバウトな絵のタッチでは、この題材は描ききれていないのではないか、と思うフシがあった。そういうことで、今回は大根仁監督による映画版ならではの「良さ」を綴りたい。

■ 全編でかかりまくる奥田民生の楽曲が臨場感を掻き立てる!

 当然ながら漫画は音のないメディアであり、その点は映画のほうが秀でている。本作では全編で奥田民生の名曲の数々がかかる。また、奥田の本物のCDジャケットも出し惜しみなく出てくる。全部俺は持ってるよ!こうした細部の臨場感が、是が非でも「奥田民生になりたい(なりたかった)ボーイ」の気持ちを揺さぶるのである。

 また、「奥田民生」という実在のポップスターが、超重要な意味を果たす本作。大根監督は良くも悪くも「今っぽさ」の表現に秀でた才覚がある。その才能がこの題材と非常にマッチしているとも感じた。

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