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祭服姿で少年に性行為 「神父の性的虐待問題」日本のカトリック教会が実態調査へ いじめられて、孤独だった少年に1年間にわたる性的虐待を - 広野 真嗣

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 大きな反響を呼んだ「“バチカンの 悪夢”が日本でもあった! カトリック神父『小児性的虐待』を実名告発する」(文藝春秋3月号)の発表から2か月、日本のカトリック教会の全国組織が国内の被害の実態調査に向けて動き出す。

【写真】神父からの性的虐待を告白した竹中勝美さん

◆◆◆

※写真はイメージです©iStock.com

 事前の予定にはない“和解”の瞬間だった。

「聖職者によって性的虐待を受けた人が勇気を持って語ってくださった。深い敬意を表したい」

 黒いブレザーの首元に白いローマンカラーをのぞかせた大司教が壇上で、頭を下げた。その視線の先の前列にいた白い口髭の男性は、おもむろに歩み寄り、2人は手を握りあった。

――4月7日、都内で開かれた性虐待をテーマにした集会に姿を見せたこの聖職者は、高見三明・長崎大司教(73)。日本カトリック司教協議会の会長の職にあり、800近くある日本のカトリック教会を統括する立場にある。そして握手を交わした相手は、54年前の小学4年当時、在籍した児童養護施設「東京サレジオ学園」でドイツ人神父から1年間にわたって性的虐待を受け続けた体験を訴え出た竹中勝美さん(62)だった。

きっかけは文藝春秋のスクープ

 男性神父が未成年に性的関係を迫る性的虐待は米国、アイルランドなどカトリック信徒が多くいる国々を中心に十数か国に広がっているが、これまで被害が露見していない日本では、信徒にとっても“対岸の火事”と受け止められてきた。

 思い込みを根底から覆したのが、竹中氏による実名告白だ。親が離婚し母が入院していた竹中さんはイタリアに本拠を置く修道会「サレジオ会」が運営する児童養護施設で中学卒業までの9年間を過ごした。施設の園長だった長身の白人神父は、いじめられ孤独だった竹中少年の心理に巧みにつけ込み、祭服姿で性行為を強いていた。

 竹中氏が語った驚くべき実態を、私は文藝春秋(3月号、発刊は2月9日)誌上に12ページにわたって書いた。レポートが発表されると、信徒や聖職者のみならず、プロテスタントの牧師、仏僧など他宗関係者にまで反響が広がっていった。奇しくも2月下旬にはバチカンで、世界の大司教を集めた「未成年者保護会合」が開かれてもいた。日本代表として出席した高見大司教は、帰国後にしたためた竹中さんへの手紙に「話を聞きたい」と書き、開催を知らされた報告集会に、長崎からかけつけることを決めたという。

 この日、聴衆席で竹中氏の体験を改めて直接聞いた高見大司教は、マイクを渡されると「私たちが充分なことができず、苦しい思いをさせていることを本当に申し訳ないと思っております」と述べた。

「教会にかたちばかりの懺悔をしてほしいんじゃない。私以外にも被害者はいたはずで、きちんと調査をしてほしい。そして、被害者に謝罪してほしいんです」

――1月のインタビューの際、竹中さんはそう繰り返していた。直接の被害だけではない。その後も長年、辛い記憶によって人生を狂わされてきたからだ。

 虐待の記憶を失った竹中さんは、結婚、子育てを始めてまもない30代半ば、唐突にその大部分について鮮明な記憶を取り戻した。記憶に空白があった時期には悪夢を見てはうつ症状に苦しんだが、記憶を取り戻してからは鮮明な性行為のイメージが不規則に脳裏を占拠するようになり、仕事が手につかない時期も過した。

「今も添い寝と称して自室に連れ込む職員がいる」という声が力に

 転機となったのは、45歳の頃だ。気持ちの整理のために匿名で書きつけていたブログを読んだ東京サレジオ学園の関係者から、「今も添い寝と称して自室に連れ込む職員がいる」という声を耳にした。過去と対峙する気構えで自らの体験を手紙に書き送ったが、教会――学園、修道会(サレジオ会)、中央協議会はいずれも、本格的な調査に乗り出すことはなかった。

「修道会の責任者は話を聞く機会こそ用意したけれど、祈りますというだけで責任を引き受けているように見えなかった。訴えを諦めるのを待っていたのではないか」(竹中さん)

 憤って東京大司教座があるカテドラル関口教会の前でビラ配りをしたこともあるが、紙に記した被害実例が自分であるとは書けなかった。名前を明かすことで公務員の仕事を追われ、家族の暮らしを脅かすことを恐れたという。

 こうして性的虐待は被害者から当たり前の人生を奪うのである。 

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