- 2019年04月15日 14:43
【読書感想】岩盤規制 ~誰が成長を阻むのか~
2/2著者は、自身が関わっていた「加計問題」について、こう述べています。
加計問題は、2017年春頃からメディアで注目され始めた。安倍総理の友人が理事長を務める学園のため、国家戦力特区の枠組みを利用した利益誘導がなされたのではないかという”疑惑”だ。文部科学次官を退任した前川喜平氏が「行政が歪められた」として会見を開き、批判一色の様相となった。
私は、国家戦略特区ワーキンググループ(以下、「特区WG」)の委員を務めている。獣医学部をめぐるここ数年の政策決定プロセスには、直接当事者として関わってきた。
直接の当事者だった私からみると、真相は全く異なる。
まず、前川氏のいう「行政が歪められた」は、間違いだ。真相は、「歪められていた行政をただした」ということだ。
獣医学部の新設は52年間なされてこなかった。一般に大学や学部は、文部科学省の認可プロセスを経て、適正な計画ならば認められる。ところが、獣医学部の場合、すでに存在する16学部だけしか認めず、新設は一切門前払いする規制があった。
新規参入に対する規制は、大学学部に限らず、さまざまな分野にある。運輸、宿泊、エネルギー、通信、放送、農林漁業、医療、介護、保育などなどだ。こうした規制はしばしば、参入のハードルを必要以上に高く設定し、過剰なものになりがちだ。すでに参入した事業者にとって、新規参入で競争相手が増えるのは望ましくないからだ。こうした既得権者が業界団体を作り、政治・行政に働きかけ結託し、過剰な規制設定・維持していく。これが、いわゆる「岩盤規制」の基本構造だ。
規制があるとはいっても、獣医学部のように「新規参入は一切禁止」という極端な規制には、あまり例がなかったそうです。
特区WGが、「なぜそんな規制があるのか?」と文部科学省に質問すると、「獣医師の数がこれ以上増えると、将来獣医師が余ってしまうから、需給調整のため」だという回答だったのですが、実際は、獣医師は現在でも足りてはいないし、将来的に必要な数についても、ペットの数の増減も含めて、不確定要素が多すぎるのです。
まず、新規参入を排除したい、という業界からの要求があって、そのために、それらしい(とはいっても、かなり無理がある)「理由」がつくられている、ような感じです。
「総理の友人が理事長を務める加計学園だけが認められたのはおかしい」との批判もあった。これも、政策決定に関わってきた当事者からみると、筋違いだ。
特区WGの委員たちは、「2校でも3校でも新設を認めるべき」と主張していた。これに対し、「1校限定」に強くこだわったのは、獣医師会だ。特区WGの委員でもなければ、総理でもない。獣医師会が「1校限定」でなければ容認しないと強く反対した。
獣医師会が強く反対しようと、「2校でも3校でも」を貫けばよかったではないかと思われるかもしれないが、そう簡単ではない。政策決定には、政府・与党での合意形成が必要だ。こうした強い反対を押し切ろうとすれば、また何年もかかりかねない。私たちは、それよりは、スピーディに一歩前進することを選び、当面「1校限定」でスタートすることにした。
そして、「1校限定」ならば、最も準備が先行している今治市と加計学園が選ばれるのは当然だった。そのほかに新潟市と京都府・京産大の提案もあったが、前者は具体化が進んでおらず、後者は具体的提案を示したばかりで準備は遅れていた。
一連のプロセスで、総理の友人関係は何の関係もなく、私はそんな話は知りもしなかった。利益誘導など存在しようもない。
歪められていた行政をただした。地域限定・1校限定で、まだ不十分な面はあった。それでも、52年間固まりきっていた歪みを小さくし、さらにただしていく起点を作った。
これが、政策決定に直接携わった当事者としてみた、加計問題真相だ。
規制改革を検討する立場であった著者からみた「内幕」は、メディアで伝えられているものとは、かなり異なっているのです。
著者は、「岩盤規制」の歴史や「電波オークション」についても言及しているのですが、日本という国は、既得権者が守られやすい、社会が安定している一方で、参入規制が厳しく、自由競争が妨げられることによって、生産性が上がらず、世界の進歩に取り残されてきてもいるのです。
僕自身は、著者の主張が全面的に正しい、と考えているわけではないのですが、「メディアで悪者にされがちな側」の主張にも、耳を傾けるべきところはたくさんあるのだな、とあらためて感じました。
善と悪、正と誤の対決ではなくて、それぞれの正しさどうしの争いだからこそ、規制とその改革というのは難しいのです。
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