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雅子さまは皇后即位で「生きる意味」を取り戻せるか? - 斎藤環/矢部万紀子

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美智子さまの「奇跡の軌跡」を追うとともに、雅子さまと紀子さまのこれからを等身大で考察した、コラムニスト・矢部万紀子さんの『美智子さまという奇跡』。雅子さまの闘病を理解するうえで、最も矢部さんの助けとなり、また矢部さんが最も共感したのは、精神科医・斎藤環さんの意見でした。皇太子妃となった雅子さまの「生きづらさ」とは一体何だったのか? 斎藤環さんと矢部さんの対談、前編です。

* * *

バッシングされていたら絶対に回復できない

矢部 拙著『美智子さまという奇跡』の中で、斎藤先生を皇室の広報担当にスカウトしたいと書かせていただきました。

斎藤 あれは面白いアイデアですね(笑)。主治医は守秘義務があり、広報役は担えませんから。

矢部 雅子さまは新しいタイプのうつで、それは自分が生きる意味を失った時に苦しみが始まる「実存のうつ」だと、先生は「病の意味」を語ってくださいました。生き延びるために頑張りすぎてつぶれる「生存のうつ」とは違うということ、わがままに見える病だということ、全ての解説に納得しました。これが国民、メディア、そして皇室内でも理解されていたら、雅子さまはあそこまで追い詰められなかったのでは、と思ってのことです。

斎藤 雅子妃の場合は、多少なりとも擁護の論陣を張らないとバッシング一色になってしまうと思いました。診ないで語ると精神科医は批判されがちですが、診ないからこそ語れるんです。担当医の方も、もう少し弁護的なことをおっしゃってもいいんじゃないかなという気はしますけれど。

矢部 大野裕先生は「東宮職医師団」として年に一度、文書を示すだけですが、内容はずっと同じです。最初の見解から15年経ちますが一貫して、「回復しているが体調に波があり、過剰な期待は負担になるので、温かく見守ってほしい」と。

斎藤 そういう診断書、私もたくさん書いています(笑)。職場に復帰できそうでできない人の場合、「一進一退」と書かざるを得ない。

矢部 それでも最近の雅子さまは、ずいぶん体調が良くなっているように見えます。まだ欠席される行事もありますが。

斎藤 一番いい影響を与えているのは、雅子妃へのバッシングがなりを潜めていることだと思います。

矢部 確かに最近は秋篠宮家、中でも紀子さまへのバッシングが目立ちます。

斎藤 私は雅子妃バッシングの渦中、こんなに注目されていたら絶対治らない、海外に1年以上行くしかない、と言っていました。逆に言えば、世間が無関心になればとてもいい影響がある。このままずっと無関心でいてほしいと思います、医者としては。

矢部 退位の話が天皇から出た時点で、雅子妃が近く皇后になるという道筋がはっきりしました。それにより、メディアの筆先も鈍ったと思います。その分、紀子さまがものすごい言われようになっていて。

斎藤 期せずして、盾になっているとも言えますよね。

矢部 ただ5月以降は新しい皇后として雅子さまのメディアへの露出は増え、注目もぐっと増えると思いますが。

斎藤 バッシングでなければ大丈夫だと思うんです。皇后になってますますバッシングしにくい状況になれば、少しずつ宮中祭祀などもこなせるようになるかもしれない。

「旧家のしきたり」に適応できないのは当たり前

矢部 本の執筆にあたりとても参考になったのが、先生も出席された「文藝春秋」2008年4月号の座談会です。世代の異なる6人の識者が出席される中、先生が宮中祭祀へのクールな見方を提示されていて非常に腑に落ちました。私は先生と同じ1961年生まれですので。


斎藤 あの対談の中で「旧家に嫁ぎ、意味のわからない行事に参加させられた」女性の話をしました。

矢部 それが屈辱的でトラウマ的な体験になり、離婚された、と。

斎藤 実は、妻の話なのです。彼女の前の結婚相手が地方の大きな旧家の人で。対談でその話をしたこと、妻から感謝されました。同じ思いをしている女性がいるはずだ、と。

矢部 ましてや天皇家の古さといったら、日本一ですから。

斎藤 一般の旧家とは比べものにならないくらいの行事、つまり宮中祭祀がつるべ打ちでやってくるわけです。ハーバードや東大で徹底して合理主義者として育てられた人が、納得できるとは思えない。もっと言うなら、宮中祭祀のほとんどは明治期以降ですよね。

矢部 1908年(明治41年)に制定された皇室祭祀令で詳細が定められ、戦後も基本はそれを受け継いでいますから。明治天皇の神格化と重なっているように思います。

斎藤 これが2000年の歴史であれば雅子妃も納得できたかもしれないですが。

矢部 潔斎(けっさい)など大変な負担を強いられますしね。

斎藤 そういうものに従う義務があるのかという疑問は当然感じるでしょうし、やらないとバッシングされることにもすごいストレスを感じるだろうと思います。「適応障害」でも、適応先があまりにもストレスフルだから、これはやはり環境のせいと言った方がいいと思いますねえ。

矢部 その環境に美智子さまは大変適応され、それを私は「奇跡」と思うわけですが。先生は文藝春秋の対談で、皇后は「ヒステリー体質」だと語っていらっしゃいましたが、それと適応は関係あるのでしょうか? 

斎藤 誤解のないように説明しますが、ヒステリー体質といっても、キーッとなるような一般的なイメージのそれではありません。感応性の高い体質、時に憑依(ひょうい)されるような体質で、巫女などの職業に向いています。バッシングで失声症になり、硫黄島で祈って回復するあたりも、そういう資質がすごくある方だと思います。

矢部 皇室に入り、憑依するかのように適応された、と。

斎藤 それもあると思います。皇室のシステムがそうあることを要求するという面が多分にあるので。ただ宮中祭祀というものは、巫女役を自ら引き受けるくらいでないと、とてもやりきれないものだと思うんです。肉体的にもハードな行事が、通年続くわけですから。だから結婚で変わられた部分もあると思います。

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