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- 2019年04月15日 06:50
音楽業界の財源となったストリーミングサービス、利益分配に関する新事実
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業界標準とされているIFPIの年間レポートによると、昨年2018年にイギリスの音楽産業の市場規模は、アメリカと日本に次いで世界第3位となっている。イギリスが欧米の音楽産業の中心地のひとつであるという事実を前提に、同国における各収入源のトレンド傾向を前年のアメリカ市場に適用してみることにする。RIAAの発表によると、アメリカ国内における2018年度のストリーミングの「小売」収入は54億ドルであり、その他のフォーマットを含めた総収益の半分以上となっている。54億ドルの2.5パーセントは1億3500万ドルだ。
この変化は決して小さくない。言うまでもないが、アメリカはあくまで市場のひとつに過ぎない。レコード会社の同意を得てSpotify(およびその他の企業)が2017年に受け取ったマージンが、9桁におよぶ昨年のストリーミングサービスの総収益に反映されることは間違いない。
アメリカにおける作曲家が受け取る印税レート向上の決定に対し、異を唱えた4つの大企業のひとつがSpotify(その他はAmazon、Pandora、Google)であることが発覚し、先月同社が大きな批判にさらされたことを踏まえると、この事実はまた違った意味を持ってくる。著名作曲家や弁護士たちはこぞってSpotifyを「恥知らず」であり、「企業の存続を可能にしている人々に対する明確な攻撃だ」と非難した。
それに対し、同社は遠回しな表現を多く含む回答をブログに掲載し、そこには以下のようなくだりが登場する。「小売業者、アーティスト、作曲家、そして株主たちの収入源が同一である以上、自分の取り分を少しでも多くしたいという考えは皆同じです。しかしそのことが、ストリーミングサービスが支える音楽産業の成長を妨げてはなりません」
Spotify側の主張はこう言い換えることができる。「レーベルとアーティストたちへの支払いは我々のビジネスモデルを強く圧迫しており、作曲家(および彼らの出版権保有者)に対する支払いの増加はとどめの一撃になりかねない。アーティストとレーベルが受けとる割合を下げることで、作曲家と出版権保有者がより多くの額を受け取るようにするなど、全体のバランスをより公平なものに見直す必要があると我々は考える」
先述の統計を見れば、その提案にレコード会社をはじめとする業界の各団体が反対するのは必至だ。世界で最も有名なエレクトロニックミュージックプロデューサーの1人のマネージャーを務める人物は、先日「Spotify vs. 作曲家」というテーマについて筆者にこう語った。「Spotifyはこっそりとレジを開けようとしているところを見つかって、企業イメージを著しく悪化させた。でも音楽業界の人間は、Spotifyがこの産業を死の淵から救ったという事実を忘れてしまいがちだと思う」
彼の主張は事実だ。IFPIが発表した最新の統計によると、録音物を対象とする世界全体の市場は4年連続で成長しており、Napsterから始まった違法ダウンロードが横行する事態は完全に沈静化した。その原動力が、Spotifyをはじめとするストリーミングサービスであることは紛れもない事実だ。それらの企業が業界全体の利益からより多くのパーセンテージを受け取っているとしても、結果的にアーティストたちが受けとる額は増えている。
ストリーミングというテクノロジー、そしてSpotifyやApple Music等による巨額の投資によって、音楽業界は再び利益を生むことができるようになった。しかし今も昔も、そのお金を誰が受けとるかという点が大きな問題になることは変わらない。
・著者のTim Inghamは、Music Business Worldwideの創設者兼出版人。2015年より、世界中の音楽業界に最新情報、データ分析、求人情報を提供している。毎週ローリングストーン誌でコラムを連載中。
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