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南極大陸の氷河が急速融解、緊急調査開始ー主任研究員が語る、不確実な未来

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ー数週間前、西南極に関する新たな研究論文が発表され、多くの注目を集めました。スウェイツ氷河の下には、マンハッタンの広さに匹敵する空洞があるという内容でした。スウェイツ氷河が誰の予想よりも早い時期に崩壊する可能性があるという、より明確な証拠です。この結果には驚いたでしょうか?

そうは驚かなかった。一般的に空洞という場合、棚氷の下にできる海洋の空間を指す。その手の空洞は、南極大陸周辺に数多く存在する。しかし今回の新しい研究は、スウェイツ氷河の海岸線地域上空からの最新衛星画像データに基づいている点が重要といえる。スウェイツ氷河の海岸線を後退させている主な要因は、棚氷の下を流れ海岸線部分の氷を溶かす海水温の相対的な上昇だ。棚氷が薄い部分は氷河の上流への流れに耐えられず、氷河の海への倒壊を促す。全体として、より多くの氷が失われることとなる。

ーウェイツ氷河はどれほど脆いのでしょうか? これまでインタヴューした多くの科学者が、スウェイツ氷河の崩壊はすでに加速している可能性があり、食い止める方法がないとしています。

はっきりとは答えられない。スウェイツ氷河では、20年前から劇的な変化が続いている。流量は増え続け、棚氷がほとんど残っていない。スウェイツ氷河に関して言えば、氷河の下を流れる温かい水の侵入量によるところが大きい。水の侵入を減速したり食い止めれば、後退のスピードも落ちるだろう。しかし実現できたとしても、現在の海岸線は海へ向かってせり上がる斜面上にあるため、問題は残る可能性がある。海岸線から南極大陸の内陸部へ向かうに従って、氷河の底部は深くなっている。1970年代以降、不安定な状況にある可能性が指摘されてきた。もしも既に不安定な状況にあるのであれば、スウェイツ氷河の完全崩壊は避けられないかもしれない、と多くの人が言うだろう。

ー現代を代表する氷河学の権威のひとりであるペンシルベニア州立大学のリチャード・アレーは、今世紀の終わりまでに15フィート(約4.6m)の海面上昇は避けられない、と述べています。このように極端なシナリオは、西南極の氷が大量に溶け出すことに由来しています。

いわゆる海氷崖の不安定性が原因で、100m以上の氷崖は不安定で将来崩壊する、という考え方だ。もしもスウェイツ氷河で発生した場合は、特に問題だ。なぜならスウェイツ氷河は海へ向かってせり上がる斜面上にあるため、内陸部へ行くに従って氷の崖が高くなっているからだ。崩壊が始まると、予想以上に速く進行する可能性がある。どの程度の速さかは、定かでない。

サンプル
南極大陸の堆積物コアを分析する主任研究員のロブ・ラーター(Photo credit: Linda Welzenbach/Rice University)

かつての南極大陸はどのような姿だったでしょうか?

それは遡る時代による。南極大陸は、約5億年前に存在した超大陸ゴンドワナの土台だった。約1億8000万年前のジュラ紀には南アメリカ大陸とアフリカ大陸が分裂し、続いてインド、オーストラリア、ニュージーランドができた。南極大陸がおよそ現在の形になったのは約9000万年だが、今よりもっと気温が高かった。この時代の恐竜の化石が発掘されているし、当時はもっと草木が茂っていた。

巨大な氷床は約3400万年前に出現したが、これは突然形成された。おそらく、大気中の二酸化炭素レベルの減少により気温が下がったことによるものと思われる。しかし決定的なトリガーとなったのは、南極大陸の周囲を流れ、回帰線から大陸への海洋熱を遮る環南極海流の発生だろう。

ー今回の航海中の調査で興味深いのは、あなたがどのように歴史を遡って将来を知るか、ということです。そこで出てくる疑問は、もしもスウェイツ氷河が崩壊しようとしているのであれば、我々はどのようにそれを認知できるか、ということです。

とてもいい質問だ。近年、氷床の振る舞いについて多くのことがわかってきた。しかし、海氷崖の不安定性など新たなプロセスの発見があったこともあり、残念ながら、いくつかの事柄の信頼度が下がってきてしまった。今では、我々は不安定性を過大評価してきたのではないかとも思える。しかし、無知のまま進んで行くよりも良い。

地質学上の記録が示す通り、まだ知られざるものが多い。約1万4500年前に発生したMeltwater Pulse 1Aと呼ばれる氷床の急速な融解が、ひとつの良い例だ。最も有力な証拠によると、350年の間に海面が約50フィート(約15m)上昇していることを示している。本当に驚くべきことだ。1世紀に14フィート(約4.3m)上昇してきた計算になる。毎世紀、連続3世紀の間、西南極の氷床を失って行くようなものだ。人が経験してきた中の何よりも圧倒的に速い。これが現在起きたとすれば、沿岸の各都市に破滅的な被害をもたらすだろう。私の意見では、これがシステムにおける大きく急速な変化の発端を示すものだと思う。しかし、過去にどのような形で起きたかは正確にわからない。また、再び起きるかどうかも定かでない。

「これまでに経験したことのないものが起こりそうだ」と察知することで、気候変動の予兆を捉えようとしている人たちにとっての警戒警報となると思う。我々が発生場所やプロセスを認知するまで、過去に起きたことが今後二度と起きないとは言い切れないのだ。

本インタビューは長さを調整し、説明を加えて編集済み。

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