■学生全員が無償ではない
大学無償化法案は、正式には「大学等における修学の支援に関する法律案」で「真に支援が必要な低所得者世帯の対し、社会で自立及び活躍することができる豊かな人間性を備えた創造的材育成すめに必要質の高い教実施大学等おける修学の支援を行い、その修学に係る経済的負担を軽減することより子ども安心して生み、育てることができ環境の整備を図りもって我国における急速な少子化進展へ対処に寄与する」ことが趣旨の法律案だ(※)
低所得世帯への支援は貧困の連鎖を断ち切るための支援策としては必要だとは思う。しかし、そもそもでいえば、授業料が高すぎることが根本的な問題だろう。
■授業料が高いことがそもそもの問題
立憲民主党はこの法案に反対した理由をまとめた資料が送られてきたので見てみると、大学の授業料は昭和63年(1988年)と比較すると約1.7倍になっている。国際的にみても公的負担割合が低いと指摘している。
それがいまや国立が授業料53万5,800円、入学料28万2,000円。私立授業料が108万1,388円、入学料25万2,030円となっている(「国公立大進学でも1000万円以上必要? 教育費であなどれない支出とは」2019/03/21 LIMO [リーモ]より)。
物価の違いがあるとはいえ、高すぎることは良く分かる。
その背景にあるのは、国から大学へだされている「運営費交付金」が下げられ、受益者負担となっているからだ。
『2004年から2016年までの12年間で1470億円(11.8%)の交付金が削減されている。削減された分を授業料の値上げで賄ってきた』。さらに今後も交付金が削減され授業料の値上げも考えられているという(PRESIDENT online「大学の学費が高騰を続ける2つの理由 少子化、デフレなのになぜか」より)。
低所得者対策は必要だが、大学教育への予算を削っておいて無償化はないだろう。教育は日本の未来へつながる。国が授業料の値上げを誘導してきながら、言葉だけの無償化では意味がない。
■質は問われないのか
さらにいえば、保育料無償化では保育の質を問わないことが問題視されているが、大学でも同じことにならないか。少子化で学生が足りない大学が、低所得者を対象にかき集める、なって貧困ビジネスにならないかも懸念される。なにぜ、無償化の財源は、国、もしくは設立した地方公共団体が負担する仕組みになっているからだ。いちおう、対象となるための要件は省令で規定されるとしているが、大学設立に忖度があると指摘されている現状を考えれば、どうなのか、と思えてならない。取り越し苦労だとは思うが。
話は戻り、大学無償化法案。この法案は少子化対策なのだから、その結果を示すことも必要だ。そうでないと、人気取りとしか言えなくなってしまう。
■政治判断
福島みずほ参議院議員が、大学でなく高校無償化に必要な費用について資料請求したところ、3,297億円であることが分かり、第2次安倍政権発足後に増えた軍事費に戻すだけで、5,413億円の財源が生まれ、高校授業料無償化は今すぐに実現ができるとしている(国公労連中央執行委員で雑誌『KOKKO』編集者、井上伸さんのブログより)。国防も重要であり、単純に比較はできないが、税金をどこに振り向けるか。保育料無償化では、無償化よりも待機児対策や保育士の処遇改善が先と考えるが、同じように何を優先するのかが、政治判断が問われており、選ぶ側も問われているのが今だといえる。
立憲民主党は、すべての学生が希望できる機会を! 高すぎる授業料を引き下げますとアピールしている。賛同するが、具体的な財源の話をしないと説得力が出てこないな、と思う。もちろん、考えてはいるはずだが、そこを示して欲しかった。
もうひとつ付け加えるなら、大学がすべてではなく、職人になることや旅にでて経験をして人間味を豊かにしていく価値観も大切じゃないか、と思えてならない。
【参考】
※文部科学省大学等における修学の支援に関する法律案の概要説明資料より。
国立大学と私立大学の授業料等の推移(文部科学省)
私立大学等の平成29年度入学者に係る学生納付金等調査結果について(文部科学省)
平成30年度学生納付金調査結果 (国公立の費用/文部科学省)
立憲民主党 ニュース
政府の大学等における修学の支援に関する法律案「看板に偽りあり」と逢坂政調会長(2019年4月10日)
画像は立憲民主党の資料より