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改めて問い直される「特許の価値」と「契約」の意味。

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今や、「オプジーボ」は小野薬品だけで年間1000億円以上を売り上げるヒット商品になり、一方の本庶教授もノーベル賞学者としての栄誉を手に入れた。

そういった「結果」だけから遡って、後になって「対価が低すぎる」と主張すれば、一見、説得力のある主張のように聞こえるかもしれないが、そういった後出し主張をすべて認めてしまうと、そもそも、一定の基準時を設けてリスクとリターンを分配するところにキモがある「契約」というツールが機能しなくなってしまうのでは?ということを自分は懸念している*3

法は、海のものとも山のものとも分からないアイデアであっても、一定の要件を満たして登録されれば「特許」として保護され、権利として活用することを認めた。
しかし、法が定めたのは「権利として保護される」ということだけであって、最終化された製品が利益を上げた際にその「権利」を持つ者にどれだけの「見返り」が与えられるべきか、ということについては全く関与していない、というのが自分の理解である。

だとすれば、まず出発点とされるべきは、「当事者が契約でどう定めたか?」と、「なぜ、その時そう定めたのか?」ということであって、いくら代理人弁護士が「用途特許ならば5~10%が常識的なレベルだ」といったところで、その主張にはあまり説得力が感じられない。

もちろん、2006年の契約締結の過程に何らかの瑕疵があるようなら(例えば、本庶教授が主張される「契約時の説明内容が不正確」の実態が、「小野薬品側で、出願中の特許が製品を極めて広くカバーする用途特許であることを認識していながら、あえて虚偽の説明をして低い料率で契約を締結させた」というようなレベルのものなのであれば)、契約の成立そのものを争う、という選択肢もありうるが、そこまでの材料を教授側で持っていないのであれば、この件であまり角を突き合わせてガチガチやるのはどうかなぁ、というのが外野からの素朴な感想*4

今は、本件に関する法律論争がこれ以上ストレートに盛り上がることなく、゛大人の解決”で落ち着くことを願うのみである。

*1:タイアップする会社が「モノ」を売る会社ではなく、「サービス」で勝負するような会社であればなおさらである。

*2:記事によれば、今回のケースでは出願の3年後に契約をした、ということだから、中間手続を経て、ある程度特許の出来上がりが見えてから契約した可能性も否定はできないが、現時点では何とも言えない。

*3:これが職務発明であれば、そもそも「契約」すら交わされず、会社が一方的に定めた「勤務規則」等で対価支払いのルールが決められてしまう、という本来的な不平等さがあるから、司法府等による事後的な介入もある程度は許容される余地があるのだが、今回のケースで対価を主張する本庶教授は、「個人」と言えど独立した契約当事者である、ということを看過すべきではないと思う。

*4:なお、記事の中で、「本庶氏らは訴訟は避け、今後も小野薬品に直接交渉するよう求めた。」とあるが、仮に教授側が訴訟提起したとしても、司法手続の場でできるのは2006年契約を無効又は取消して白紙に戻すところまでであって、契約の再交渉、再締結まで裁判所が強制することはできないので、「避け」というよりは、事実上手段としては使えない、というのが正しい表現ではないかと思う。もちろん、契約無効主張とセットで特許権の共有持分に基づくライセンシー(共有者である小野薬品自身は自己実施できるので、あくまで対象は共有者間の契約に基づきライセンスを受けている第三者、ということになろう)への差止請求権行使にまで踏み込めば、おのずから和解手続きでの再契約締結に至るのかもしれないが、そこまでやるのはいくら何でもハレーションが大きすぎる。

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