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人質報道はこれでいいのか?

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安田純平氏 ©Japan In-depth編集部

【まとめ】

・シリアで拘束されていた安田純平氏が講演。

身代金のやりとりを改めて否定。新たな事実関係など具体的な根拠と分析の内容説明。

・虚偽の報道が日本人を危険にさらすことになる。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て見ることができません。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=45177でお読み下さい。】

 4月9日、ジャーナリストの安田純平氏が東京大学で講演会を行った。安田氏は昨年10月、内戦下のシリアで、40カ月に渡る拘束から解放されて帰国した。帰国後の会見は記憶に新しいだろう。安田氏の解放を受けて、日本では「自己責任論」による批判が起こった。虚偽や真偽不明な情報の報道、専門知識や経験、人権への配慮を欠いたタレント達のワイドショーでの放言、それをタブロイド紙やネットメディアが拡散した。今回の講演では、記者会見の時点では分からなかった新たな事実関係を踏まえ、身代金が支払われていない具体的な根拠と分析の内容、日本の虚偽報道がもたらす危険と社会へのメッセージを語った。

◼️紛争地を取材する理由

安田氏は一橋大学を卒業後、長野県の地方紙信濃毎日新聞で記者として勤務していた。しかし、「新聞社にいて記者をしていても、戦争の実感がなかった」という。それほど、今の日本人にとっては戦争は遠い存在だ。安田氏は記者時代に休暇を取ってアフガニスタンやイラクの取材をはじめ、その後フリーランスに転身した。冒頭でその理由を、「戦争によって何がどう変わっていくのか。それは、変わる前と後を見なければ分かり得ないことだ戦争が始まる前に現地にいかなければ、戦争の悲惨さは分からない。『なぜ、前線にいく必要があるのか。』という批判もあった。それは、難民が発生するのは前線だからだ。前線には逃げられない大勢の人がいる。まだそこに、人がいるのであれば、なぜそこに人がいるのか、それを見にいく必要がある。ジャーナリストとしてそれを世の中に伝えるべきだと思っている。世界のことと身の回りのことをどう関連づけていくのか、自分の生き方を考えるうえでも現場を見た方がいいと思った。」と語った安田氏からは、強い使命感と信念が伝わった。

「戦争前は夜でも子供が遊ぶくらい治安がよかった。しかし、道路やビルを作ることをしていた日本企業の社員の一人が、飼い犬の名前をフセインにして捕まった、とか、現地の人は、サダムフセインについて家族の中で話しても、子供がそれを外で話して捕まってしまうという話はあった。家庭内でもそれなりの緊張感があった。」と振り返る。

◼️紛争地での取材

 2012年7月に安田氏がシリア内戦の最前線で取材した映像を紹介した。政府側による空爆の直後で、崩壊した家の瓦礫の中から人を救出し、野戦病院に運び込む場面では、死亡している子供達の生々しい映像が映し出された。

「ここまでの映像は日本のメディアでは流せない。建物が崩壊すると上からの瓦礫のせいで頭が割れている遺体が多い。向こうは子だくさんの家が多く、1軒やられると子供が大勢犠牲になるので子供の遺体も多かった。兵器というのは本当に残酷に設計されている。爆発した後の破片が刺さることで人が傷つくようにできている。強力な威力で一人を確実に殺すよりも、破片で1人に重傷を負わせれば、その負傷者を庇ったり助け出すのに二人は必要になる、そうすれば三人の兵力を失わせることができるからだ。防弾チョッキを着ていても破片が直撃したらどうしようもない。空爆があったら、とにかく腹を地面から少し浮かせて伏せろ、と教えてもらった。それは破片だけでも避けるため、そして振動で内臓がやられないように腹を浮かせて伏せる。あそこで子供が元気に育つのは奇跡に近い。子供が元気に育てない環境は、社会が壊れていることを象徴している。」

◼️身代金は支払われていない

 安田氏が解放される際に、身代金が支払われた、という情報が日本国内で飛び交った。真偽不明な情報を鵜飲みにして、「テロリストに加担した」「プロ人質」などという誹謗中傷がなされた。しかし、政府は身代金の支払いを否定しており、それに疑問を挟むような事実はなんら明らかになっていない。今回の講演で、安田氏は、身代金の支払いはなかった」という政府の主張を補強する事実を明らかにした仮に身代金を支払うとすれば、本人の生存確認が最も重要な前提である。そうでないと、無関係の人やテロリストの集団に金をだまし取られることになるからだ。そうした確認のために、仲介役を通じて本人しか答えられない質問を伝え、本人の回答を待って生存確認をすることになる。

「ところが、外務省が私しか答えられない質問を初めてしたのは、私が解放されてかだ。」という。解放されてから最初に、安田氏本人であることを確認するための質問が行われた。外務省の職員は「子供の頃飼っていたペットの名前はなんですか?」「結婚パーティーをしたのはどこで、結婚の承認は誰ですか」と安田氏に質問した。それで、ようやく、安田純平氏だという身元が確認された。

2016年1月初めに、拘束中の安田氏の元に妻からの別の質問が届いていた。これは仲介役を売り込んでいた、日本政府とは無関係のスウェーデン人が介在していた。しかし、安田氏の回答が妻の手元に届いたのは、2年8ヶ月後の2018年8月だった。しかも、外務省はテレビを通じてこれを見た。

「この時間差の生存確認でわかることは、私が2年8か月前までは生きていた、ということ。解放後に外務省の職員は、最初にしたことが、私の本人確認の質問だ。私が目の前にいるのに。そこまでする政府が、本人の生存確認もできていない状況で、身代金を払うわけはない。そんな外交交渉はありえない。」

その仲介役が介在した時の質問は、「自宅の椅子はどこで買ったものか」「よく買う焼酎の銘柄は」「家族をなんと呼んでいるか」といった内容だった。

「焼酎はたくさん買いすぎて、銘柄がすぐには浮かばなかったので、まず妻の出身地である鹿児島の焼酎”Asahi”と書いた。後にこれが朝日新聞だとか言われることになるのだが(笑)現地の人にとっては、日本語というだけでマイナー言語で解読がされにくいことを利用して、妻にわかるように焼酎の銘柄に見せかけて暗号も書いた。

”Harachaakan”(はらっちゃあかん=身代金を払ってはいけない)、”Danko6446(断固無視しろ)”、”BujiFrog”(ブジフロッグ=無事帰る)

書いている時は、まるで家族と会話をしているようで、本当に嬉しかった反面、暗号がバレてしまうのではないかという恐怖も凄まじく脂汗を滲ませながら書いた。」とその瞬間を振り返った。

▲写真 拘束中の安田氏の元に届いた妻からの質問状  出典 講演会中の安田氏の資料をJapan In-depth編集部が撮影

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