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特集
休みのトリセツ 〜今日から始めるニッポン休み方改革〜
新生活に入るビジネスパーソンも多い4月。「頑張って働くぞ!」と意気込んでいる方も多いのではないでしょうか。しかし、働くことと同じくらい大切なのが「休む」こと。そこでBLOGOSでは今月、さまざまな角度から「休み」について考えるための特集を始めます。目指せ、休み上手!

若者の“旅行離れ”は間違いだった!星野リゾートが提案する「居酒屋以上、旅未満」の休日

  • 2019年04月12日 09:10
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2019年2月、星野リゾートが軽井沢に新たな業態の宿泊施設「BEB5 軽井沢(以下、BEB5)」をオープンした。旅行にあまり出掛けない若い人に向けて「旅行の楽しさ」を提案するというミッションを持つホテルだ。

「若者の旅行離れ」が取りざたされる昨今だが、若い年代を対象にした聞き取り調査を行ったところ、見えてきたのはイメージされているのとは異なる行動パターンだったという。若者の消費行動から見えてくる旅行への意識とはどのようなものか、そしてBEB5では若者の行動をどのように集客につなげているのか、支配人・金子尚矢氏に聞いた。【取材・島村優】

若者たちは“旅行離れ”していない

—まず今回新しくオープンした、こちらのBEB5のコンセプトを教えてください。

コンセプトは「仲間とルーズに過ごすホテル」です。当ホテルはターゲットとして20~30代の方を想定しております。星野リゾートとしては、これまでこの年代向けの施設は展開していませんでした。今回、この年代のお客様にターゲットを絞り、ホテルとして滞在できる施設を作っていこうと考えて、このコンセプトを設定しました。

—あまりホテルに滞在するイメージのない20〜30代の若い年代層にターゲットを絞ったのはなぜでしょうか?

日本の観光産業は、インバウンドが増えて外国人観光客に支えられているイメージがありますが、実際は金額的には国内のお客様の消費が約8割を占めています。

旅行の意向調査などを見ると若い年代のお客様、特に男性は、「宿泊を伴う旅行」への関心が他の年代に比べて低くなっています。依然として国内消費が重要な一方で、若い方の旅行に対するモチベーションが下がってきている、と。旅行業界として長期的に観光産業を考えても、現在大きな割合を占めている、旅行を楽しんでいない方が年を重ねた時にどうなってしまうのか、何か手を打たないとまずいのではないか、と考えたのが出発点でした。

—まだあまり旅行に親しんでいない人に向けたホテルなんですね。

そうです。旅行を楽しんでいない若い人がいる、という現状に対して「旅行の楽しさ」を我々なりに提案しようというのが、このBEB5の一番のミッションですね。

—若い人たちの“旅行離れ”の背景にはどのような要因があると捉えていますか?

一つには、上の年代との消費意識の違いがあるのではないかなと感じています。つまり、消費よりも「価値観の共感」に身を置きたい、といったような意識の変化ですね。

様々なインタビュー調査を通じてわかったのは、確かに彼らは滞在を目的にした旅行はしていないかもしれないけど、その一方で誰と行くか、何をするかといった点から計画した旅行はしているということです。必ずしも旅行離れしているわけではなく「気の合う人と時間を過ごそう」「夏フェスに行こう」「カニを食べよう」というお金の使い方はしているんです。

—「旅行離れ」は一面では正しいけれど、それだけではなかったと。

それに対して、今までのホテルや旅館が提供してきたのは消費的な価値だったんだと思います。高級ホテルならステータス、旅館でいうと一泊二日のパッケージ、という形で過ごし方も決まってきます。つまり、旅行離れというより、時間とお金をそういったスタイルの旅行に使うというマインドが変わってきているのではないかなと。これまでのように「このホテルに来てください」というアプローチだと届かなくなっているんです。

BEB5の支配人・金子尚矢氏

「ノリ」で行ける旅先のホテルを提案

—実際、どのように旅の楽しさを提案しようと考えていますか?

キーワードとして「居酒屋以上、旅未満」という言葉を使っています。彼ら、若い年代の人たちは外出していないわけではないし、遊んでいないわけでもない。ただ、大事なのは何をするか、誰と行くか、ということなんです。そこで大事なのは何かを考えたら、それは「ノリ」です。

彼らは休みが合った、というところからスタートして、こんなところに行きたいよね、いいね、とその場で予定が決まるくらいの気軽さで動いていくと思いますが、その欲求を満たせる場所がどこかというと、例えば居酒屋がその一つでしょう。

—とりあえず誰かと何かをする、という時の気軽なスポットとして居酒屋が使われていると。

そう、休みがあって何するか、じゃあ飲みに行こうぜ、と気軽に使うことができます。ネットで調べれば予算感もわかるので、お金の心配もありません。彼らはこういう「ノリ」を大事にしたいんですけど、旅行だとそう簡単には進みませんよね。予定を合わせて、目的地を決めて、旅行の期間に何をするか決めて、それから最後に泊まる場所を決める。居酒屋には足が向いても、旅となると腰が重くなってしまうんです。

一方で、居酒屋では満たせない欲求があるのも事実です。終電やラストオーダーの時間、あるいは席の範囲でしか楽しめない、といった制限があります。家飲みという方法もありますが、準備などいろいろと大変だし、家はあまり素敵じゃない。逆にホテルの強みはそうした制限がないというところです。ずっと一緒にいられる素敵な空間を用意することができ、お客様からするとちょっとした非日常感があります。

—そこが「居酒屋以上」になるんですね。

こうした点はホテルの圧倒的な強みで、そこに若い人たちがまだ気づいていない価値があります。そこを前面に押し出し、20、30代の方に新しいホテル滞在の体験を提案したいという思いを「居酒屋以上、旅未満」という言葉にして発信しています。

—もう少し年代が上がると、旅行の仕方も「どこに泊まるか」という滞在そのものが目的になっていくんでしょうか。

そうですね。そして、私たち星野リゾートがこれまで展開してきたブランドはその層にフォーカスしていたんですね。40代以上の方々がお金や時間を使う、旅行の目的地になるホテル・旅館作りを進めてきました。ですが、ターゲットを変えたにもかかわらず同じことをやっていてもダメなんだなということに気づきました。

—若い年代の旅行が滞在目的ではないというのは、どのような部分に現れていますか?

旅行に行ってもホテルの優先順位が低いということですね。目的地や現地でやることを決めて、最後にホテルを考えるというパターンが多いかと思います。ホテルに求めるのは、目的地から近いかどうか、それから値段、次にネットで口コミを見る、というようなもので、言ってしまえばホテルはおまけなんです。

それに対して、BEB5ではホテルを目的の一つとして捉えてもらうためにはどうしたら良いかを考えて、「仲間とルーズに過ごす」というコンセプトを伝えるためのコンテンツを幾つも用意してあります。

—それは、例えばどんなものでしょうか?

一番は中庭からカフェ全体を指す「TAMARIBA」というパブリックスペースです。カフェは24時間営業で、お酒もおつまみも欲しくなった時にすぐ手に入ります。またテーブルの上に置かれたゲームや、冬は中庭にある天然氷の卓上ホッケーなど、仲間と時間を忘れて楽しめる仕掛けや遊びの要素を散りばめています。

ホテルというと「○○してはいけない」という約束事が多いですが、ここでは自由度、寛容度を持たせているので、お客様自身で時間の使い方、滞在の仕方を作っていってほしいと思っています。さらにそこから、今はSNSで発信してくださる方も多いので、顧客が顧客を呼ぶというサイクルも生まれていくと。

Instagramでホテルの情報を調べる若者たち

—SNS経由でホテルを知って来るというお客さんも多いですか?

とても多いですね。面白いなと思ったのはそんな若い人たちの行動パターンで、まず拡散性に優れたTwitterでホテルのことを知って、実際に行くかどうかはInstagramで情報収集してから判断しているようなんです。値段はどのくらいで、どんな過ごし方ができるのか、どんな設備があるのか。お客様のSNSでの発信が、ホテルでの過ごし方の説明になっているんです。

—Instagramでそういった情報収集も行っているんですね。すごく面白いですが、ホテル側としては情報発信が難しそうです。

それは今までの星野リゾートの施設とは全く違うところで、難しさでもあるしチャンスでもあると感じています。電話でかかってくるお問い合わせでは「Instagramで見たんですけど…」と公開していない情報についての質問も多く来ます。「こんなことができるんですか?」と。公式サイトはあまり見てもらえないですし、見てもらえたとしても先にSNSを見てからアクセスしてくれた人がほとんどです。

—なるほど。実際にオープンして、利用客は想定していた年代と同じくらいでしたか?

いや、実は若いお客様が予想以上に多いことに我々も驚いています。20代の方がとても多く、夜遅くまでパブリックスペースにいる方が多いということも想像以上でした。「仲間」というキーワードと、こういう風に時間を過ごしたい、というニーズが施設とマッチしていたのかもしれません。そこには手応えがあります。

従来の西洋型のホテルはプライベート感を重視していて、リゾートだと離れのヴィラとか、他の人との断絶した空間を大事にしています。一方で日本の旅館は、部屋は分かれているけど、同じ浴衣を着て同じ空間にいるというセミプライベートな雰囲気があって、そういう日本の旅館的な距離感は大事だなと改めて思いました。

—全員35歳以下なら1室16000円というのもすごいですね。

これは安さを前面に出したいというより、お客様がノリで決めやすいようにするための設定です。ホテルって休前日や繁忙期に値段が上がるじゃないですか。そういう心配をしなくても良いよ、と。とりあえず来ていただけたら、遊ぶものは揃っているので。気軽なノリで決めてほしいですね。

お客様もこれまでは「この値段ならこのくらいの部屋だな」といったように、価格で妥協していた部分もあるのではないかと思います。そういった面でも満足してもらえるように細部までこだわっているので、ぜひ楽しんでほしいです。

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