- 2019年04月11日 09:15
今のロボットに必要なのは頭より「手」だ
2/2■経費精算やプレゼン資料の準備も丸投げ
仕事上の「雑務」の丸投げもできる。
経費の精算や、備品の整理に資料の仕分け、大量の書類のはんこ押し、プレゼン資料や会議の下準備……など、面倒だけど、いまは人がやらざるを得ない仕事がオフィスにはゴロゴロある。こうした雑務を、AIロボットがすべて引き受けてくれたら、どれほど楽になるだろう。
極論すれば、開けた扉を閉めるとか、出したものを片づけるぐらいのことは、はっきり言って、誰だってやりたくはないはずだ。そんなものに使われる数秒だって、何十年間も毎日のように積み重ねれば、膨大な自分の時間を失っていることに気づくはずだ。捻出された時間で、もっと自分のやりたいことに没頭したらいい。
「手」の技術開発が追いつかない場合、「片づけハウス」や「片づけオフィス」の登場が先になる場合も考えられるだろう。
最近はさまざまな「AI家電」に加え、「AI住宅」も研究されている。家やオフィス自体がAIロボットとなり、家電や家具、建具などと連動し、あらゆることを自動制御する可能性は十分にある。
■家具や家電が「黙々と仕事をこなす」ように
少し前の話だが、2016年に日産自動車が「手を叩けば自動で定位置に戻る椅子」を開発した。日産が研究している自動運転車の技術を応用して、つくられたものだという。動画ニュースなどで、ご覧になった人もいるだろう。雑然と椅子が並べられた会議室で、その場にいる人が手を叩くと、それぞれの椅子が、スムーズな動きで、元にあった机の下の定位置に戻っていくのだ。
この椅子にどれくらいの需要があるかどうかはさておき、技術的にAIオフィスの研究がどんどん進んでいるということだ。家具や家電は、いずれ人がまったく手を触れることなく、黙々と仕事をこなし、静かに自分で元の位置に戻っていく、非常に利口な道具となりえるだろう。
とにかく、いまAIに大事なのは、「手」なのだ。現在のAIロボットに高性能の「手」が搭載されたら、IT革命やいまのAI革命どころではない、次世代の一大産業革命が起きるのではないか。それは社会構造のあり方や人間の価値観を、根幹から変えてしまう可能性すらあるのではないかと、私は想像している。
■人間のディープラーニングを支えたのは「手」
人の文明は、「手」がつくりあげた。4本の長さの違う指と、少し逆の動きをする親指の連動で、「つかむ」「さわる」「なでる」「しめる」など、膨大な量の知覚情報の収集を可能にした。人のディープラーニングを支えたのは、「手」なのだ。
「手」のおかげで、人は文明を継承できたとも言える。筆記具を持ち、文字を書き残せた。人に近い知能を持つと言われるクジラが、なぜあの姿で進化を止めてしまったのか。「手」がないから、文明を書き残せず、次の世代への継承と、クジラの知性体としての進化の機会を放棄してしまったからだ。
人は「手」の獲得により、ほかの哺乳類に比べ、群を抜いた進化を遂げられた。偶然なのか、何かの遺伝信号なのかはわからないが、二足歩行すると決めた瞬間、人は「手」がフリーになった。そのとき、いまの表現で言うなら、人は知性体としての最初のシンギュラリティを迎えたのだろう。
■AIを搭載した人工臓器が登場するかもしれない
人ほど上手に、自由に「手」を使いこなしている動物は、ほかにいない。「手」によって、進化のジャンプを遂げた。

AIが人間社会で、本当の意味で役に立つための成長をするには、人間と同じように「手」を持ち、自由に動き回らなくてはいけない。それは進化論的にも、当然の帰結だ。あらゆるものを手づかみして、あらゆることを学び、私たちのストレスを極限まで減らす、良きパートナーへ育ってほしい。
AIやロボット研究がどこまでも進んでいくと、人間の身体の不具合ができたとき、ロボットのパーツや臓器と取り替え、すぐ健常に戻れる時代が到来するかもしれない。
AIを搭載した人工臓器だ。
レイ・カーツワイルの言う「脳に電極を刺す」だけでなく、脳を入れ替えたり、複雑な交換手術を行ったりすることも可能になるだろう。不具合が起きたから、という理由ではなく、機能の“拡張”のために交換することが当たり前になる時代が来るかもしれない。
私たちはもしかしたら、人間として生まれて、人間のまま死んでいく、最後の世代かもしれない。AIの進化は、そんな生き方や価値観の大転換を、人間に迫ることになるだろう。
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堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)実業家
1972年、福岡県生まれ。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。ライブドア元代表取締役CEO。東京大学在学中の96年に起業。現在は、ロケットエンジン開発やさまざまな事業のプロデュースなど多岐にわたって活動。会員制コミュニケーションサロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」や、有料メールマガジン「堀江貴文のブログでは言えない話」も多数の会員を集めている。
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(実業家 堀江 貴文 撮影=小学館写真室)
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