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LIXIL新旧CEO対決-ホールディングスのCEOとして求められるものは何か

国交省の幹部が民間企業の役員を威嚇したとして国に530万円の損害賠償が認められたそうです(朝日新聞ニュース)。国交省の幹部の方が「もうお前のところには発注しない」として、個人の資格で(国交省行政に反するような)請願を行った取締役を辞任に追い込んだ、とのこと。法律に基づかない事実上の行政介入および憲法16条違反(請願権侵害)ということで、高裁での逆転判決です。判決内容によっては企業実務にも影響を及ぼしそうで、ぜひともこの判決文は全文読みたいですね。

「取締役の辞任」といえば(?)、昨日に引き続きLIXILさんの新旧CEO紛議のお話です。本日(4月10日)の読売新聞朝刊の記事(リクシル対立-新旧トップの主張)は素晴らしい。前CEOの瀬戸氏と会長兼CEOの潮田氏のインタビューを同時並列で掲載して対立の論点を明らかにしています。今まで報じられてきた内容を超えていて、こういった記事が早く読みたいと思っていました。

瀬戸氏は調査報告書の内容に「恣意性を感じる」として不満を抱いておられます。おもにガバナンスの面から強く批判をしておられますが、「私はハンズオンのタイプの経営者。CEOは現場に赴いて管理をすることが大切。海外拠点(シンガポール)で経営などありえない。当社は今、管理が必要なとき。可能性を広めるときではない。会社の状況によって求められる経営者の像は違う」とのこと。一方の潮田氏は「ホールディングスのCEOとしての仕事をせよ。各事業会社には優秀なトップが存在するのだから、これを束ねて最適な資源配分をするのがホールディングスのCEOの役目。11億もの報酬をもらっておきながらこの業績なら責任をとるのが当然。私が海外の拠点からリスクやチャンスに関する情報を提供することは取締役会での合意があってのこと」と述べておられます。

グループ経営でCEOに求められるのは各事業会社のシナジー効果を上げること(ヨコの関係)と、資本コストを上回る業績を上げるための最適なポートフォリオを組み立てること(タテの関係、各事業の最適な資源配分を行うこと)ですから、瀬戸氏はシナジー効果重視、潮田氏は最適資源配分重視というところでしょうか。このあたりはホールディングスのCEOに求められるものを考えるうえでとても興味深い。

私自身の意見としては、グループとして中小規模のホールディングスなら瀬戸氏のようにハンズオン志向が大切だと思います(ハンズオンで人を育てることができるのは組織の大きさに限界があるように思います)。しかし、LIXILグループのような大規模なグループをまとめるのであれば、夢を語るのと同時にグループ全体のポートフォリオにこそ注力すべきと思います。「選択と集中」において厳しい仕事を通じて結果を出すことに(度胸と才能がなければ到底できない仕事として)11億円の報酬価値があるように思います。ということで、個人的には潮田氏の意見に共感するところが大きいです。

たしかに、3月29日に公表されたLIXILグループ会社における不正会計事件の調査報告書を読みますと、「選択と集中」「最適ポートフォリオ」の本社趣旨・理念が現場に浸透していなかったことに(会計不正の)原因があったと認定されており、瀬戸氏が主張している「現場管理」はいまのLIXILのブランド価値を維持するためには重要であることは否定しません。しかし、そこはCEOの仕事というよりも取締役会を中心とした内部統制システムの運用として対応するべきではないかと。

上記読売新聞の記事をお読みになって、いろんな意見が出てくると思いますが、これも「ガバナンスの力」があるからこそ、です。私のような野次馬が新聞記事を読んで云々というよりも、こういった意見の違いが社外取締役の前で開示されて、これを社外取締役が自らの知見をもって議論し判断する、ということが健全なガバナンスだと思います。そういった意味では瀬戸氏がLIXILのガバナンスを大いに批判しておられる点は正論だと思いました。

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