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特集
休みのトリセツ 〜今日から始めるニッポン休み方改革〜
新生活に入るビジネスパーソンも多い4月。「頑張って働くぞ!」と意気込んでいる方も多いのではないでしょうか。しかし、働くことと同じくらい大切なのが「休む」こと。そこでBLOGOSでは今月、さまざまな角度から「休み」について考えるための特集を始めます。目指せ、休み上手!

ホリデーのために働く英国人 世界で一番休むドイツ人 働きたくても仕事がないギリシャ人(木村正人)

  • 2019年04月15日 09:57
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スチームパンクのイベントに参加するオリンピアさん(本人提供)

英国人は「ホリデー」が生きがい

[ロンドン発]多くの日本人にとって生きがいは「働くこと」だが、英国人の生きがいは「ホリデー」と言っても差し支えないだろう。ロンドンとは異なり、喧騒とは無縁の英南部ワーシングで暮らす友人のオリンピア・ブライトリングさん(58)にホリデーについて尋ねてみた。

「ホリデーを心から愛しているわ。ホリデーがあるから働いているのよ。もっともっと旅行に出掛けて、世界を観てみたい。日本は行ってみたい魅惑的な国リストのトップよ」

ちなみにオリンピアさんは合気道五段の腕前だ。

「でも、それは叶わぬ夢ね。2匹の白猫を飼っていて、あまり長く家を空けて放っておくのは嫌だから。クリスマスになると来年のホリデーはどこに行けるかしらと夢を膨らませ、勤め先に有給休暇を申請するの」

「日にちが決まっていれば職場も大助かりよ。診療所の受付を4人で回しているので、みんなが同時にホリデーをとるわけにはいかないから。一緒に旅行に行ったり、ちょっとした冒険を試みたりするのはパートナーとの仲を良くするわ」

レトロな蒸気機関への思い

オリンピアさんは趣味が共通するパートナーのニックと一緒に暮らしている。今、完全にハマっているのが「スチームパンク」だ。

スチームパンクで決めたニック(本人提供)

蒸気機関による産業革命で七つの海を支配した英国には「スチーム(蒸気)」に特別な思い入れがあるようだ。レトロな蒸気機関を未来ファンタジーに置き換えたサイエンスフィクション(SF)に始まり、スチームパンクはアートからデザイン、ライフスタイルと幅広い。

「科学少年」がそのまま大人になったようなニックはカイゼル髭をたくわえている。コスチュームだけでなく、スイッチを入れると水泡が発生するシリンダーや計器盤、煙を吐き出すミニ煙突を組み合わせた皮鞄を自作する熱の入れようだ。

「友人の結婚式に特別なテーマを持ったスタイルで参加するよう招かれ、スチームパンクのファッションをして行ったのがきっかけ。新郎新婦が感激してくれた。それから、すっかりスチームパンクの虜になり、衣装をそろえてイベントに参加するようになったの」

ハローウィンにスチームパンクで着飾るオリンピアさん(本人提供)

スチームパンクにとって最も重要なのは、蒸気機関全盛のビクトリア朝を思わせる衣装やアクセサリー、ガジェットを自分で作ることだ。イベントに出掛けて自作の衣装やアクセサリーを他の人と比べて、新しい着想を得て帰ってくるという。

昨年はウェールズで開かれる恒例のイベント「コーグワーツ・スチームパンク・スペクタキュラー」にも参加した。本物の蒸気機関車が走り、舞踏会が開かれ、友だちもたくさんできた。2人にとってスチームパンクはある種の冒険だ。

「できれば、もっと働きたい」

今年4月末には仏西部ナントに遠征するスチームパンクに参加しようと、オリンピアさんはニックと相談し始めた。夏には世界最大のスチームパンクイベントにも出掛けたい。「リスボンにも旅行に行きたいけど予算オーバーかも」と笑う。

オリンピアさんは母親が体調を崩して亡くなった時、フルタイムで働くのを止めてパートタイムに切り替えた。現在は午後週3日と月1回土曜日に働いているので週の労働時間は15~20時間。「収入の穴を埋めるため、もう一つのキャリアである心理セラピストの仕事を増やしたい」とオリンピアさんは言う。


ホリデーが生きがいの英国でも2008年の世界金融危機以降、「もっと働きたい」と望む人が激増した。パートタイムや、雇用主から連絡があるまで自宅待機を強いられるゼロ時間(待機労働)契約が増えたためだ。

失業率は34年ぶりに4%まで下がったものの、就業者3267万1000人のうち319万7000人が「もっと働きたい」と考えている。その一方で1009万1000人が「働く時間を減らしたい」と望んでいる。

労働市場のミスマッチを是正するのは至難の業だ。

G7で一番ホリデーが多いのはドイツ

経済協力開発機構(OECD)が2016年にまとめた報告書では英国の休みの数(有給休暇と祝祭日の合計)は先進7カ国(G7)の中では2番目に多く、37日間。

一番長いのはドイツ。法定の有給休暇は最低で20日間だが、労使協定で30日間与えられ、祝祭日は州によって異なり9~13日間。最長では43日間もホリデーがある。


最短は米国の10日間で、日本は25日間だ。しかも日本の有給休暇取得率は旅行予約サイト、エクスペディアの調査で50%と3年連続で最下位。筆者自身、新聞社に勤めていた頃、有給休暇とは無縁だった。

ケルンのドイツ経済研究所(IW)も15年に「ドイツのホリデーは欧州連合(EU)の中で最長」という報告書をまとめ、「今やドイツは世界をリードするホリデー大国になった。それでも国際競争力は依然として高い」と指摘している。

ドイツ人のように効率よく働いて、ゆっくりホリデーを取るのが理想的かもしれないが、欧州全体を見渡すと「働きたくても仕事がない」という厳しい現実が横たわる。

「働きたくても仕事がない」ギリシャ

昨年8月、EUや国際通貨基金(IMF)のギリシャに対する金融支援プログラムが8年ぶりに終了したものの、ギリシャの若年(15~24歳)失業率は37.5%と高止まりしている。ホームレスも急増している。

ワゴン車に洗濯機を積み込んで無料の洗濯サービスを提供する市民団体ITHACAのディミトラ・コトリオティさんはこう言って表情を曇らせる。

「ギリシャではホームレスの人たちだけでなく、難民も無料の洗濯サービスを必要としている。社会経済危機のもたらす後遺症は短期では解消できず、長期に及ぶ。金融支援プログラムが終了したからと言って貧困問題がなくなるわけではない。ギリシャの状況は決して良くなっていない」

洗濯サービスを利用するホームレスの人たち(ITHACA提供)

アテネだけでホームレスは2万人を超える。衣服の洗濯もできない。ITHACAはこれまでに8000回、計40トンの汚れ物を洗濯した。4人のホームレスが活動に参加する形で仕事を得たという。

生活困窮者に無料で食料を配布する支援団体「フードバンク・ギリシャ」のディミトリス・ネンタスさんは「状況は不幸にも何一つ変わっていない。慈善団体から毎日、新しいリクエストが届く。経済的な困窮が長期化し、人々は希望を失っている」と語る。

「失業は大きな問題だが、賃金が低すぎて、とても生活できない状況に陥っているケースが数多くある。一家の稼ぎ手が病気になって家族に大きな変化が起きることもある」。年に取り扱う食料は4年間で24トンから41トンに増えた。

ネンタスさんは「政治家はいつも、状況は良くなっていると言うが、私の目から見ればギリシャがこの数年で直面すると予想される経済的な困難を克服できるのかどうかは定かではない」と深いため息をついた。

ホリデーは十分な仕事と賃金があって初めて有り難みがあるのは言うまでもない。

木村正人(きむら・まさと)
元産経新聞ロンドン支局長(2007~12年)。京都大学法学部卒業。02~03 年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で事件記者をした後、政治部・外信部のデスクを経験。12年に独立してロンドンを拠点に国際ジャーナリストとして活動している。著書に『欧州絶望の現場を歩く 広がるBrexitの衝撃』『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』、共著に『税金考』『現代ひったくり事情』『戦後史開封』がある。

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