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米国がファーウェイを禁止する本当の理由

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中国の通信大手・ファーウェイに対し、米国が強硬姿勢を続けている。2014年には政府機関などでファーウェイ製品の使用を禁止。2018年12月には、米国の要請でCFOの孟晩舟氏がカナダで逮捕された。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は「米国の態度を『米中貿易戦争』だけで理解しないほうがいい」と指摘する――。

※本稿は、田中道昭『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』(日本経済新聞出版社)の一部を再編集したものです。


※写真はイメージです(写真=iStock.com/RomanBabakin)

疑われてきた中国の情報機関との関係性

創業者のレン・ジンフェイはかつて人民解放軍に所属しており、創業当初は人民解放軍時代の人脈を活かして業績を伸ばしたともいわれます。そういった背景から、ファーウェイは長らく中国人民解放軍や中国の情報機関との関係性が疑われてきました。

しかしファーウェイは、こうした疑念を強く否定しています。近年は中国政府から距離を置く姿勢を明確にしてきましたし、未上場企業でありながら内容の濃いアニュアルレポートをつくって情報開示に努めているのも、グローバルにビジネスを展開していく上でチャイナリスクを払拭したいという意思の表れなのかもしれません。

同社のサイトの「サイバー・セキュリティ」に関するページには、次のような文章が掲載されています。

【サイバー・セキュリティは一国、一企業だけの問題ではない】現在、ファーウェイに部品を提供しているサプライヤーは世界に5700社あり、部品の70%をグローバル・サプライチェーンから調達しており、米国がその32%を占める最大の調達先となっています(台湾・日本・韓国28%、欧州10%、中国30%)。したがって、サイバー・セキュリティ問題は、国と業界全体がグローバル規模で取り組むべき問題です。
【Made in Chinaが問題ではない】多くの欧米系ICTベンダーが大規模な研究開発センターを中国に設置しています。また、生産拠点を中国に置くICTベンダーも数多くあります。
【売上の約6割は中国以外の市場から】世界170か国以上で事業を展開しているファーウェイの売上の約6割は中国以外の市場からもたらされています。
【100%従業員所有】ファーウェイは非上場企業であると同時に従業員持株制度を採用し、2015年12月31日時点で7万9563人の従業員が全株式を保有しています。従業員は、不適切な行動をとったりすれば、自らの資産が損なわれることを理解しています。

ファーウェイを警戒する動きはアメリカ以外でも

この文面からは、「ファーウェイは情報を中国当局に流すような会社ではない、そのような疑いがかけられるのは遺憾である」という強い思いが読み取れます。

しかしこうした情報発信の甲斐なく、ファーウェイは長らく警戒の目で見られてきました。2011年には、米国政府はサーバー技術を持つ米国企業3Leafをファーウェイが買収するのを阻止。その理由として、ファーウェイが軍人によっても投資されていること、人民解放軍が長期にわたって無償でキー・テクノロジーを同社に提供していること、両者が長期にわたる多くの協力プロジェクトを有していること等が挙げられました。

さらに2012年には、米国下院議会調査委員会が報告書を発表しました。そこではファーウェイとZTEという中国の通信機器大手企業について米国の安全保障への脅威であると主張されていました。そして2014年には、米国の政府機関などでファーウェイ製品の使用を禁止する措置がとられたのです。

2018年には、FBI、CIA、NSAなどの米秘密情報局幹部から、ファーウェイ製品やサービスの利用を控えるべきだといった発言があり、政府機関と政府職員がファーウェイとZTEの製品を使用することを禁じる国防権限法も成立しました。

こうした動きはアメリカで顕著ですが、ほかにカナダ、オーストラリア、ドイツ、英国などでも長らくファーウェイを警戒する動きがあったのです(山田敏弘「世界を読み解くニュース・サロン:ファーウェイのスマホは“危険”なのか『5G』到来で増す中国の脅威」ITmedia)。

2018年12月「ファーウェイ・ショック」の根底にあるもの


ファーウェイ、1月のCES2019で筆者撮影。「Seeing is believing. 」意味深なメッセージである(撮影=田中道昭)

このような背景のもと、2018年12月に起きたのが「ファーウェイ・ショック」でした。前述したように、孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)が違法金融取引の疑いで、米国の要請に応じたカナダ当局によって逮捕されます。

孟副会長は、レン・ジンフェイの娘です。12月5日に逮捕が発覚すると、翌6日からの米国株式市場でダウ工業株30種平均は2営業日続落して、2万5000ドルを割り込む事態となりました。日経平均も一時600円を超す急落、中国株も下落と、「ファーウェイ・ショック」は世界同時株安をもたらしたのです。

本書執筆時点の2019年1月でも、「連邦検事がファーウェイを調査・起訴する可能性がある」と、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じるなど、まだ問題に決着はついていません。そして私はこの問題は長期化すると考えています。

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