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ビッグイシューを敵視する人々の主張/誤解と思い込みによる攻撃例とその反論

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日本では「ホームレスの人と対等にビジネスをする」「路上でモノを売る」ということになじみがないためか、販売者本人やビッグイシュー日本が様々な誤解や偏見、攻撃、嫌がらせに近い行為をうけることがしばしばあります。
今回はSNS上でもよく見られる、これらの誤解と偏見について解説したいと思います。

【目次】
・ビッグイシューは「貧困ビジネス/悪徳商法」という思い込み
 └ビッグイシューのしくみ
 └「貧困ビジネス/悪徳商法」?
 └「生活保護を受けさせないで路上に固定化している」?
 └「ホームレスの人々から搾取している」?
 └「ホームレスの人々にノルマを課し不当な苛酷労働させている」?
 └「ホームレスの人々の脱税を黙認している」?
 └「ビッグイシューの役員は私腹を肥やしている」?
 └「ホームレスの人々を雇用しないことが貧困ビジネスの証」?
 └「決算公告を出さないことこそが貧困ビジネスの疑惑の証」?
 └「赤字なんて帳簿しだいでどうにでもなる」?
 └「寄付や広告費は丸儲け」?

・「路上での販売は違法」という思い込み
 └「路上での販売は違法」?
 └「ホームレスの人々に路上で違法行為をさせて黙認している」?

・Twitter等SNSでのビッグイシュー日本のスタンス
 └誤解・偏見について
 └嫌がらせ行為について

※応援いただける方へ
 └SNSでの誤解・嫌がらせに近い内容をご覧になったら
 └ビッグイシュー・オンラインサポーター募集

※もっと効果的にホームレス問題を解決したいと思われる方へ

―――

ビッグイシューは「貧困ビジネス/悪徳商法」という思い込み

ビッグイシューについてよく知らない人、「ホームレスの人たちと、合法で健全なビジネスをするなんてありえない」という思い込みをしている人などからは、「ビッグイシューは貧困ビジネス/悪徳商法」と言われることがありますが、これはまったく当てはまりません。ひとつずつ解説していきます。

ビッグイシューのしくみ

有限会社ビッグイシュー日本は、日本のホームレス状態の人々に雑誌販売の仕事を提供し、自立を応援しています。これは1991年に英国ロンドンで始まった事業です。

定価350円の雑誌『ビッグイシュー日本版』をホームレスである販売者が路上で売り、180円が彼らの収入になります。
最初の10冊は無料で提供し、その売り上げ(3,500円)を元手に、以降は1冊170円で仕入れていただく仕組みです。
なお、これはビッグイシュー日本と販売者が雇用関係や契約関係にあるというものではなく、販売者本人が気に入らなければ次の仕入れに来なければよいというゆるやかなものです。
詳しくはこちら「販売のしくみ」


参考:ビッグイシューの説明動画


「貧困ビジネス/悪徳商法」?

「ホームレスの人々とビジネスをしている=貧困ビジネス」と感じる方もいるようです。
いわゆる貧困ビジネスといえば、ヤミ金融、相場より割高な家賃を天引きする住み込み派遣、劣悪な条件の物件に逃げられないように住まわせて生活保護費などを搾取するなどの業者がいます。これらの業者は弱者に寄り添うふりをして、実際には生活に困窮した状態から抜け出せないようにしたうえで、不当に利潤を得つづけようとする業者です。

ホームレスの方を対象に貧困ビジネスをしようとする事業者は、その生活保護費などの搾取が目当てですが、ビッグイシューの販売者は生活保護を選ばずに販売を始めた方なので、そもそも搾取するものがないことからもお分かりいただけるかと思います。
また、たとえ販売者がお金を持っていたとしても、ビッグイシューはホームレスの人々が路上から脱出することを応援する社会的企業です。彼らが少しずつでもお金を貯めて住所を持ち、他の職業に就くことを心から応援しています。

※住宅支援について
ビッグイシュー日本が母体となって設立された、ホームレスの人々の自立を総合的にサポートする「NPO法人ビッグイシュー基金」では、篤志的な家主の方から提供された空き物件を活用し、初期費用や保証人不要で利用できる「ステップハウス」の取り組みも行なっています。
https://bigissue.or.jp/action/stephouse/

「生活保護を受けさせないで路上に固定化している」?

販売希望の方が事務所に初めて来られた場合、生活保護や本人の状況に合わせて得られる支援の情報を必ずご案内しています。そのうえで販売の仕事を選んだ方が販売者となっています。

「生活保護の存在を知ったうえで選ばないなんて、常識的に考えてありえない」と思われる方もいらっしゃるのですが、下記のような理由などで「受給したくない」と思う人が確かにいらっしゃるのです。

・家族に連絡されたくない
→生活保護を申請すると家族などに照会がある。しかし虐待された経験などがあり、居場所を知られたくない事情がある、心配をかけたくない、受給申請を自分がすると地元で家族に迷惑がかかる〈と思っている〉、など

・いわゆる行政の「水際作戦」を恐れて申請できない
→窓口担当者が、生活保護申請をさせないように「水際作戦」をすることがある(あった)。窓口で「路上の人は生活保護の受給資格が無いと言われる」「トラウマについてなど、聞かれたくないことを根掘り葉掘り聞かれる」「心無い言葉を投げかけられる」など。一度当事者がそういう経験をすると、今度は大丈夫だと説明しても恐怖がよみがえり、窓口に行けなくなる。

・集団生活が難しい事情がある
置かれている状況の理解が難しかったり、音に非常に敏感であるといった、障がいやトラウマなどのために集団生活が難しい背景や、生きづらさを抱えた人ほど、施設での集団生活から始まる生活保護の利用がなじまない場合もある。

生活保護ビジネスに搾取された経験がある
ホームレス状態から生活保護を申請しても、生活保護ビジネスに狙われることもある。複数人での相部屋に入れられ、管理者に暴力を振るわれたり、「出て行け」と言われたり、身の危険を感じて逃げ出したりしたケースもあった。

また、人里離れた施設に連れていかれ、寮費や食費、管理費などを受給費から引かれ、手元に残るのは一日数百円程度となりハローワークに通う交通費すら捻出することも難しかったといった声もある。

※これらはあくまでも一例です。ご本人の希望を尊重しながらも、必要に応じて販売サポートスタッフがお声がけをして、福祉や他団体の支援も受けられるよう、NPO法人ビッグイシュー基金と共に伴走をしています。
ビッグイシューは販売者を増やしたくて事業をしているのではなく、“望んだわけではないのに路上生活を強いられる状態の人”を減らすために、路上脱出の手段の1つを提供しているに過ぎません。

また、「路上に固定化している」という声もありますが、「路上で眠る」という状態から「ネットカフェや簡易宿泊所で眠る」ということも路上からの脱出の一つのステップと考えています。
これまで12億1915万円の収入を販売者に提供し、199人がビッグイシューをきっかけに他の仕事を見つけるという形で卒業してきました。
合わない方は、合わないと思った日から仕入れに来なければよいだけなので、ビッグイシュー側が「販売者として固定」するということはありません。

雑誌がたくさん売れれば売れるほど、販売者が路上脱出できる可能性が高まりますので、ぜひ認知拡大・事業理解が広まるように応援いただけると嬉しいです。


ただ、住まいを得たとしても、年齢やホームレス経験を理由に「他の仕事」が見つからない場合はビッグイシューの販売を続けるしかないこともあります。

年齢やホームレス経験を問わない、仕事先にお心当たりがあれば販売者に案内をいたしますので、ビッグイシュー日本のお問い合せ窓口までお寄せください。
https://www.bigissue.jp/contact/
※エリアや業務内容により、ご紹介が可能な販売者がいないこともございますこと、あらかじめご了承ください。

「ホームレスの人々から搾取している」?

「ホームレスの人から搾取している」という声もよく伺います。
搾取とは「他人に帰属すべき利得を不正に取得する」ということかと思いますが、ビッグイシューの1冊の値段は350円。そのうち半分以上である180円が販売者の取り分です。

ビッグイシュー日本と販売者の関係は、雇用や業務委託関係になく、出版社と書店の関係にあたりますが、一般的には書店の取り分は2割程度と言われており、5割以上の取り分は、通常の出版社と比べると販売者に相当配慮したものとなります。

「いずれにせよ販売者に商品を先に買わせて販売するのは、リスクを販売者に転嫁している!」とおっしゃる方もいますが、販売希望の方には最初の10冊はプレゼントしており、その売上(3500円)を元手に雑誌を仕入れて販売を継続されます。販売者はノーリスクで始めることも、またいつでも辞めることもできます。

#また、販売者は最新号ではなくなった雑誌も、バックナンバーとして販売をしております。お客様の中には数か月に1回、販売者のところに訪れてまとめ買いするのが楽しみという方もいらっしゃるため、余裕ができてくると、バックナンバーをそろえる販売者が多いです。

なお、最初の10冊目以降は、数冊売れるたびに仕入れに来られる方もいれば、仕入れに戻る時間は販売機会を失う時間と捉えてある程度まとめて仕入れる方、ご本人のスタイルによりそれぞれです。

仕入れの様子

ビッグイシューでは販売者にノルマを課しているわけでもなく、在庫リスクを販売者に転嫁しているということもありません。
販売者が仕入れなかった雑誌は在庫として会社が倉庫を借りて保管しています。

350円の雑誌のうち180円が販売者の取り分ということは、会社の取り分は1冊あたり170円です。この170円×販売者に卸した部数のなかで、商品である雑誌の編集・販売体制を維持するため編集費・印刷費・東西の事務所の家賃・人件費等をやりくりしています。現状では利益は出ておらず、恥ずかしながら赤字経営が続いています。

「ホームレスの人々にノルマを課し不当な苛酷労働させている」?

「長時間働かせておいて、販売者の収入が少ないではないか!」と詰め寄る方もいらっしゃいますが、ビッグイシューはノルマもなければ販売時間のルールもありません。

長時間販売するかどうか、何部仕入れて何部販売するかは本人が決めており、体調や天気の良い日に数時間だけ、月に何日だけ、という方もいますし、販売しようとしまいと、1冊あたりの販売者の取り分は変わりません。販売者が雑誌を仕入れることがなければ、我々ビッグイシュー日本の取り分はありません。


なかには「“販売者が売れると思う部数のみ自分の判断で仕入れる”と言うが、それはコンビニチェーン本部が、“恵方巻は各店主の判断で仕入れている”と主張しているのと同じ、強者の論理だ!」とおっしゃる方もいますが、コンビニは契約による様々な制限があるかと思います。しかしビッグイシューは販売者とは雇用・契約関係になく対等な関係です。繰り返しとなりますがノルマや罰則もありません。

もし販売者にお心を寄せていただいており、「販売者の収入をもっと増やしたい」と思ってくださるようであれば、最寄りの販売者からビッグイシューを買う、ビッグイシューの認知拡大・事業理解などのご協力を賜れますと幸いです。ビッグイシューは恵方巻きのように腐るものではないので、販売者が仕入れて売れ残っている在庫があれば、バックナンバーとしてもお求めいただければと思います。

参考:あなたにできること
https://www.bigissue.jp/how_to_support/

「ホームレスの人々の脱税を黙認している」?

逆に、「販売者の売上はかなりあるのでは」と想像される方からは「販売者が所得税を払っていないならば脱税だ!」「販売者の脱税を推奨しているなら犯罪だ!」と言われることもあります。これも当てはまりません。

そもそも収入から経費を差し引いた金額である所得が年間38万円を超える対象者が過去15年の間にほとんどいません。また、仕入れの数から売上額が会社で推測できたとしても、経費は販売者により異なっており、会社では各人の「所得」を把握していません。

これは「出版社」が「書店」の「所得」を把握しないのと同様です。
確定申告の相談を受けた場合は、もちろん確定申告の方法をご案内していますので、脱税を黙認しているわけでもありません。

現に過去にはビッグイシュー販売でコツコツとお金を貯めて、住まいを得られた販売者から相談を受けて確定申告した例もあります。
販売者の多くが“所得税の対象になるような売上”が出せるようになりましたら、「確定申告について」という研修の開催も検討いたしますが、該当となる方がほぼいない今は、都度問い合わせがあればご案内というスタイルをとるのが、限られた人的リソースを鑑みると妥当だとお分かりいただけるかと思います。

<ビッグイシューは販売者の所得を把握すべきだ!>という主張は<「出版社」が「書店」の「所得」を把握すべきだ!>と同義です。
「税務対象かどうか所得を把握するべきか」や、また「税務申告指導のあり方」についてのご意見につきましては、ビッグイシュー日本の事業の管轄ではありません。税務署または国税庁など、しかるべき機関にお伝えください。

「ビッグイシューの役員は私腹を肥やしている」?

「ビッグイシューの役員は多額の役員報酬を得ている!」「ビッグイシューで私腹を肥やしている!」というご意見をいただくこともあります。

繰り返しになりますが、会社は現在赤字につき役員報酬どころではありません。また私腹を肥やしている人間もおりません。また、私たちは社会的企業です。黒字になった場合も、販売者サポートや誌面の充実等で販売者・お客様に還元します。
赤字の現在はもちろん、黒字になったとしても多額の役員報酬を得たり、私腹を肥やしたりする人間はおりません。

「“ホームレスの人々を雇用しないこと”が貧困ビジネスの証」?

「ホームレスの路上脱出を考えるのであれば、全員雇用すべきだ!雇用しないなら貧困ビジネス確定!」という意見をいただくこともあります。
確かに現在のところ雇用はしておりません。理由は2つあります。

①ビッグイシュー販売の仕事は、就職などの次のステップへの足がかりとして一時的に機能するもの、という位置づけのため(会社維持が目的ではなく、望まぬホームレス状態の人をなくすのが目的です)

②雑誌の定価の半分以上が販売者の収入になるよう運営していますが、定価の半分以下の収入から捻出している制作費や人件費の他に、雇用で発生する社会保険料の負担が難しい
等の理由があります。

現在スタッフがフルタイム12人、パート8人ほどで運営していて赤字なので、全国に約120人いる販売者を雇用すると、倒産してしまい、かえって販売者が雑誌販売の仕事ができなくなってしまいます。

もし「雇用を検討できるほどの体力をつけるべき」とお考えの方がいらっしゃいましたら、第一歩として、まずは「得をするのはビッグイシューだけ」「リスクをホームレスの方に転嫁している」という誤解を無くすことにご協力をいただけたらと思っています。

参考:あなたにできること

「決算公告を出さないことこそが貧困ビジネスの疑惑の証」?

「決算公告を出さないことこそが疑惑の証」と主張される方もいます。そもそも有限会社である私たちには決算公告を出す義務は法律上ありませんが、毎年本誌の6月15日号(直近では337号)では決算公告要旨と簡単な分析コメントを掲載しています。


こちらの決算公告が誌面にしかないことについて、「今どきWebサイトに載せないなんて!」というご指摘もいただいたのですが、路上で購入いただいた紙媒体である「雑誌」の読者の皆さんに情報をお届けするために、紙媒体での公告が不自然ではありません。

1冊350円の雑誌のうち半分以上の180円が販売者の取り分であること、会社としてはPLが赤字、BSが債務超過になっていることから、いわゆる貧困ビジネスではないことは明らかですが、「決算公告要旨なんて不十分だ!社会的企業を名乗るなら、一般上場企業や特定認定NPO法人並みに詳細なIR情報を出すべきだ!それができないならやはり悪徳商法だ!」と詰め寄る方も中にはいらっしゃいます。

一般上場企業や特定認定NPO法人が詳細なIR情報を掲載するのは、法律で定められているということと、その情報を出すだけのメリットがあるからです。上場企業がIR情報を掲載するのは、株主が投資判断をするからであり、NPO法人の場合は税控除があるからです。IR情報を開示することで投資家が投資してくださるのであれば考えますが、決して儲かるビジネスモデルではありませんので、開示するメリットは、限りある人的リソースを考えると労多くして実りがありません。

もちろん、ご不明な点についてはお問い合わせ窓口にご連絡をいただければ、可能な限りご案内いたします。しかしビッグイシュー日本を設立して15年の間、IR情報が必要とする具体的根拠をもとにした会社へのお問い合わせは1件もないことも付け加えておきます。

「赤字なんて帳簿しだいでどうにでもなる」?

「赤字なんて嘘だ」「帳簿でどうにでもなる」等、赤字について疑う方もいらっしゃいます。私たちも赤字が嘘であればよいと願っていますが現実に赤字です。会社は雑誌一冊につき170円の取り分、その中から編集費用、印刷費用等の経費、東西の事務所・倉庫費用、そして編集部や販売サポート等、29人(フルタイム12人、パート8人含む)のスタッフの人件費がかかっていることからご推測頂けるかと思います。

上記決算公告要旨は会計士とともに作成しており、不審な点はないと認識しています。
それでも虚偽である、疑わしい点がある、という場合は、税務署または国税庁等に根拠をもってご相談ください。

根拠なく虚偽であると公の場で触れ回ることは、営業妨害および名誉棄損にあたりますのでお控えいただければと思います。

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