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RWS搭載海自護衛艦に疑問

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RWSが搭載される護衛艦「しらぬい」の進水式(2017年10月12日)出典:海上自衛隊ホームページ

清谷信一(軍事ジャーナリスト)

【まとめ】

・海自護衛艦に遠隔操作銃架搭載へ。人減らし目的はむしろ危険。

・初めから低性能・高価格の国産ありきで実戦に役立つかは疑問。

・仕様を開示しない防衛装備庁。高速ボートテロへの弱点を暴露。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=45105でお読みください。】

海上自衛隊は昨年度発注した新型護衛艦、30FFM及び、現在建造中の「あさひ」級の二番艦である「しらぬい」には日本製鋼所が開発した国産のRWS(リモート・ウェポン・ステーション)が搭載される。

海自はこのRWSの採用したのは「省人化、省力化及び隊員の安全確保の観点から導入した」としている。また「機関銃を自動化したものであり、従来と同等の運用を行う」としている。海上自衛隊ではこのRWSを「水上艦艇用機関銃架(遠隔操作型)」と呼称している。

このRWSの調達コストは30FFM用が2隻分、4基、152,150,400円、調達単価約3,800万円で、護衛艦で、「しらぬい」用には2基が各2,160万円で調達されている。同型艦の「あさひ」にも搭載されるかは明らかにされていない。いずれも機銃は官給品として支給され、この価格には含まれていない。

RWSとは元来装甲車用に開発された機材で、機銃などの小火器にビデオカメラ、レーザー測距儀などを統合したもので、車内にいながら周囲を監視し、射撃できるシステムだ。戦車や装甲車は外部の様子がわかりにくい。このため車長がハッチから頭を出して周囲を観察することが多いが狙撃されたり、砲弾の破片にあたって死傷したりすることが多い。このため車長の死傷率が極めて高い。このような被害を低減するために開発され、90年代ぐらいから各国の陸軍で普及しだした。

現在のRWSは暗視装置や安定化装置、自動追尾装置などが装備されることが多く、夜間や走行中で安定して動く目標を射撃することが可能である。またビデオカメラでは肉眼よりも遥かに遠方の目標を確認できる。

▲写真 重量物運搬船「ブルー・マーリン」に運搬されるUSSコール。小型ボートを使った自爆テロにより艦体に破孔が生じた。(2000年10月)出典:Pubic Domain(Wikimedia Commons)

海軍用のRWSは2000年にUSSコールが自爆ボートに襲撃された事件をきっかけに各国海軍が近接防御用として急速に採用してきた。手動式の機銃座に比べて、遥かに正確にターゲットを捕捉、追尾して攻撃することが可能である。またビデオ画像によって交戦の一部始終を録画できるため、後に交戦の正当性を証明することができる。

▲写真 自爆テロに攻撃されたUSS Coleの船腹 出典:US Navy

我が国では2001年に北朝鮮の不審船と海保の交戦があった。このとき巡視船は搭載されていたRWSの一種である20ミリ機銃を装備した無人砲塔を使用し、その模様はニュースなどでも繰り返し報道されたが、海上自衛隊はRWSの採用にこれまで消極的で、全く装備してこなかった。

▲写真 防衛省技術研究本部が発表した車輛搭載用RWS 画像提供:清谷信一

海自が採用したこのRWSは平成21~23年度までに技術研究本部(現防衛装備庁)が陸上自衛隊の車輌搭載用として12億円を掛けて研究試作されたものをベースにしている。主契約者は日本製鋼所である。このRWSはサーマル・イメージャー、ビデオカメラ、レーザー測距儀、自動追尾装置、安定化装置などが組み込まれたもので、火器としては5.56mm、7.62mm、12.7mm機銃及び、40mmグレネードランチャーが装着して評価された。

その後陸自では採用がなく、コマツが開発した8輪の装輪装甲車(改)に搭載されるはずだったが、このプロジェクト自体がキャンセルされたため、陸自がこのRWSを採用する計画は現時点では存在しない。

▲写真 技本が発表した車輛搭載用RWSとコントロールパネル。海自用はこれをベースに開発された 画像提供:清谷信一

海自ではこのRWSの搭載火器は住友重機製の12.7mmM2機銃と、日本製鋼所が独自に開発した動力付きの20mm機関砲が評価されたが、12.7mm機銃型が選択された。なおこの20mm機関砲の反動はM2よりも小さいという。日本製鋼所はこの20mm機関砲搭載型の試作品は平成29年に87,544,800円で日本製鋼所が防衛装備庁から受注している。

なお海自によるとこのRWSはノルウェー、コングスバーク社製のシー・プロテクターと比較を実施し、国内品は輸入品に比べ、維持整備が容易であること、海自の所要に合致した陸自要求の研究試作品があったこと等を考慮し、国産品を選択したのとのことである。だが実態は単に書類審査をしただけのようだ。

このRWSは30FFMの艦橋のルーフのセンサーマストの付け根左右に装備される。仰俯角や旋回半径、サーマル・イメージャーのスペックなど仕様の詳細は公開されていない。このRWSには陸自型では装備されていたレーザー測距儀や自動追尾装置などが装備されていない。同様にビデオ映像を保存する録画機能も付加されていない。

これは海自がRWSを主として見張り用であり、また単に遠隔で射撃ができればいい、見張りと機銃の要員を兼ねさせればクルーの数を減らせるという考え方のためだろう。射手と補弾手、監視要員の3名を1名でこなせるので省力化になるというわけだ。

また見張り要員が艦橋横の見張り用の張り出しにでて雨風に耐える必要がなく、ブリッジ内で見張りができるので負担が軽減できるということだろう。このためか30FFMにはその他の機銃の銃架は設けられない。

だが、これはRWSの導入としては極めて歪んだ考え方だ。本来RWSは水上艦艇の近接防御のためのシステムである。口減らしのためのものではない。左右2基のRWSでは360度の近接防御は不可能である。これまで海自の護衛艦は近接防御用として20ミリガトリング機関砲を装備したCIWS(Close In Weapon System)を搭載していたならば、RWSの死角をカバーできたが、FFMが採用したSea RAM(Rolling Airframe Missile)は短距離用ミサイルしか搭載していないので向いていない。このため後部はほぼ死角となる

▲写真 CIWS(Close In Weapon System)画像提供:米海軍

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