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原巨人で不安視される未経験コーチ陣たちの手腕 - 新田日明(スポーツライター)

Gの快進撃が止まった。巨人は6日、横浜DeNAベイスターズに敗れて今季初の連敗。開幕2試合目から6連勝を飾ってスタートダッシュに成功していたが、その勢いはやや小休止した格好だ。敵地・横浜スタジアムでの3連戦で今季初のカード負け越しも喫した。それでも、まだ貯金は「3」。少しも慌てるような展開ではないだろう。

4番の岡本和真内野手が3試合連続無安打に封じ込められるなどやや気がかりな点も見られるものの、やはり巨大補強によって膨れ上がった戦力は他球団にとって脅威。多くの評論家や有識者たちが巨人を優勝候補筆頭に挙げているのもうなずける。

(mizoula/gettyimages)

しかしながら初の連敗と初のカード負け越しとなったことで、チーム内の一部からは「そうとばかりも言い切れない」という不安の声が漏れ始めているのも事実。チームが上り調子でいる時はいいが、失速した際の建て直しが困難になるのではないかという懸念が指摘され出しているからだ。その背景にあるのが、指揮官を支える今季の一軍コーチ陣である。

昨オフ、巨人は原辰徳監督の再就任に伴って一軍のコーチ陣もほぼ一新。コンディショニングコーチを除くと7人中で昨季からの留任となったのは、吉村禎章打撃総合コーチだけだ。

その7人の面々のうち宮本和友投手総合コーチと元木大介内野守備兼打撃コーチ、鈴木尚広外野守備走塁コーチ、相川亮二バッテリーコーチはプロでの指導経験が過去まったくない。昨季まで韓国の斗山ベアーズで打撃コーチを務めていた後藤孝志打撃兼外野守備コーチも古巣・巨人での一軍スタッフ就任は今回が初めてだ。

12球団で今季の一軍スタッフをざっと見渡しても、これだけの数のNPB一軍コーチ未経験者を揃えたチームは明らかに巨人が抜きん出ている。球団内で「言わば〝新人コーチ〟ばかりの一軍内閣は相当なレアケース」とささやかれるのも、あながち的外れではない。

そして6人の新任コーチのうち水野雄仁投手コーチも巨人での一軍指導経験が過去にあるとはいえ、古巣の現職に復帰したのは実に18年ぶりのこと。かなりのブランクが空いている。

フレッシュな面々が揃ったと言えば聞こえはいい。開幕2戦目からの6連勝でスタートダッシュを決めた現況のようにチーム全体がイケイケドンドンのムードに包まれていれば、新任コーチの面々にも〝膿〟は見えにくいだろう。だが問題は長いシーズン中に必ず来るであろう谷間の時期だ。

チームにほころびや不協和音が一度生じた際、ほぼ新任で固められた巨人のスタッフにそれらの軌道修正は果たして図れるのだろうか。経験不足のメンバーばかりであるところには、どうしても不安が募る。

実際にコーチ陣の真価が問われるのは、その時だ。勝っていれば選手たちは乗りまくっていて気持ちよくプレーしているが、負けが込んでくればイラつくことでなかなか聞く耳も持ちにくくなる。そういう丁々発止のピリピリとしたムードの中においても経験豊富なコーチングスタッフならばフォローしたり、的確な助言を送ったりすることが出来るものの、その数が圧倒的に少ない今の巨人一軍首脳陣は正直心許ない。

もちろん、今の現場のトップには、百戦錬磨の原監督が座っている。巨人では過去2期に渡って指揮官を務め、7度のリーグ優勝と3度の日本一に輝き、第2回WBCでは侍ジャパンの監督としてチームを連覇へと導いた名将だ。当然ながら数々の修羅場を経験し、クリアする術も身につけているはずだろう。

しかしながら、いくら経験豊富とはいえ、逆境に立たされた際のチームの修正役を原監督1人に任せるのはいくらなんでも無理があり過ぎる。だからこそ、そこで新任のコーチ陣たちが〝真の手腕〟を発揮できなければ、チームは負の連鎖によって一気にガタつき始める可能性も否定できない。

それでは、どうして今回の「第3次原内閣」はこうしたフレッシュなメンバーになったのか。公には「今回の一軍スタッフ選考は将来に向けて指導者を育成していくという目的も込められている」との報道がなされている反面、裏側では別の見解も広がっている。巨人の有力OBの1人は、こう打ち明けた。

「要は人が集まりにくかったということです。4年連続V逸で前政権の高橋由伸監督時代、チームはガタガタになってしまった。天下の巨人とはいえども〝沈みかけた船に乗りたくない〟と敬遠するコーチ経験者は球界に案外多く、原監督もメンバー集めに相当苦労したと聞きます。腐心した結果として、まったく経験がないメンバーで固めるほかに選択肢がなかったというのが本音でしょう」 

キーパーソンの2人

しかし、そうは言っても、このコーチ陣たちの力なしではチームのV奪回など果たせない。原監督としても一蓮托生するしかないのだ。前出のOBはキーパーソンとして宮本コーチと元木コーチの2人の名前を挙げ、その理由について次のように説明した。

「2人ともタレント出身。チャラチャラした感が強いかもしれないが、実はかなりの熱血漢の持ち主だ。タレント業をこなしていたことでコミュニケーション能力にも拍車がかかり、彼らは他人の〝乗せ方〟を十分に知っている。

生き馬の目を抜くような芸能界で活躍し続けていた経験は決してダテじゃなく、それは野球界にも通用するところがあると思う。特に元木コーチは原監督から声出しなどでの頑張りが認められ、春季キャンプでコーチとしては異例のMVPに選ばれた。

宮本コーチも天性の明るさと独特の野球観で去年までは何かと暗い雰囲気だった投手陣のムードをガラリと変えている。この先にチームがガクッと来てしまった時も、この2人がブレることなく芸能界でも培った自己流の人身掌握術を発揮すれば、懸念材料も消えるはず。

そうなってチームがV奪回を果たせば、今年の原巨人は〝タレント出身コーチ〟というニュータイプの成功例を作り出すモデルケースとして後世に語り継がれることになるかもしれない」

巨人復活のカギは原監督や選手だけでなく、新任のコーチ陣たちにも握られていることを忘れてはいけない。

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