- 2019年04月08日 09:15
"ゴーン対特捜"泥仕合で損するのは検察だ
2/2■裁判所の判断に、検察内には不満がくすぶっていた
ゴーン氏は逮捕直前に、ツイッターで「11日に記者会見を行う」と明らかにしていたが、なんとか逮捕を避けようと日程を出したのではないか。
ゴーン氏の弁護士も逮捕で記者会見ができなくなることを予測していたことを認め、「あらかじめゴーン氏の姿と言葉を動画で記録してあるのでそれを近く公開する」と話している。
「日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告を巡る事件を語る上でキーワードとなったのが人質司法だ。そうした批判に耐えうる再逮捕だったのかが今回問われる」
こう書き出すのは、4月5日付の毎日新聞の社説である。見出しも「『人質』批判に抗せるのか」だ。
その毎日社説は中盤で指摘する。
「逮捕には検察内にも慎重論があった。長期勾留が海外メディアから批判を浴びたことを踏まえ、任意捜査で追起訴すべきだというものだ」
「一方、捜査が継続しているにもかかわらずゴーン前会長の保釈を認めた裁判所の判断に、検察内には不満がくすぶっていたとされる」
そのうえで毎日社説はこう主張する。
「逮捕や勾留は、あくまで容疑者や被告の逃亡や証拠隠滅を防ぐのが目的だ。その要件は厳格に判断すべきである」
逮捕や拘留は検察が裁判所に請求し、その請求を認めるかどうかは裁判所が判断するものである。今回の再逮捕は、裁判所が認めた結果だ。裁判所の判断である。毎日社説はそこのところをどう考えているのだろうか。
■「検察の強い意志」「被告の行為の悪質性」と書く読売らしさ
毎日社説に対し、4月5日付の読売新聞の社説は検察寄りである。
「在宅での捜査は、聴取の時間などが制約される上、証拠隠滅のリスクも伴う。批判を覚悟で逮捕に踏み切ったのは、日産からの不透明な資金の流れについて全容を解明したい、という検察の強い意志の表れだろう」
「今回の逮捕容疑が事実であれば、会社の私物化をより明白に物語る。特捜部には、被告の行為の悪質性を浮き彫りにする狙いもあるのではないか」
「検察の強い意志」「被告の行為の悪質性」などと書くところは、保守的な新聞を代表する読売らしさが色濃く出ている。
ただ、「今後、検察による勾留や勾留延長の請求を裁判所が認めるかどうかも注目される。一連の事件では、海外から長期の勾留に対して批判が相次いだ。裁判所は捜査への影響も踏まえ、身柄拘束の必要性を吟味することが求められる」とも指摘し、「人質司法」の問題にも言及している。バランス感覚は失っていない。
■「パソコンや携帯電話の使用を制限するなどの条件があった」
次に産経新聞(4月5日付)の社説(主張)を見てみよう。
「ここで問題となるのは、保釈を認めた東京地裁の判断である」と書き、今年3月6日の保釈を問題視する。
「逃亡や証拠隠滅の恐れがない場合、保釈は許可される。だが、被告が起訴内容を否認している事件で公判前整理手続きで論点が明確になる前に保釈申請が認められるのは極めて異例だった」
「しかも、オマーンなど中東を舞台とする海外での資金の流れの全容解明は捜査の途上にあるとされていた」
「弁護側は保釈後の国内住居に監視カメラを設置し、パソコンや携帯電話の使用を制限するなどの条件を提示して保釈決定に結びつけたが、関係者への接触はあらゆる手段で可能である」
■海外メディアからの批判は「内政干渉」だと言いたいのか
読売社説以上に検察寄りである。ゴーン氏の保釈が成立したのは、弁護側の機転であり、弁護士にかなりの能力があったからだ。裁判所の判断が誤っていたわけでなない。産経は誤解していないか。
さらに「そもそも、自身のツイッターのアカウントを開設した行為はどうなのか。パソコンなど通信機器の取り扱いは厳しく制限することが保釈の条件だったのではないのか」とも指摘する。
そのうえで「ゴーン容疑者の保釈は3回目の申請で認められた。長期の勾留には主に海外のメディアからの批判が強かった。外圧に屈しての保釈判断であったなら、社会の安全や公平性を守る刑事司法の目的に適わない」と書く。
どこまでも外圧にこだわる。海外メディアからの批判は「内政干渉」だと言いたいのだろう。実に産経社説らしいが、その主張はバランス感覚を欠いている。
(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=AFP/時事通信フォト)
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