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バロンズ:トランプ氏、理事指名を通じFRBに一段の圧力も


バロンズ誌、今週のカバーに強気相場10周年を掲げる。2009年3月9日に始まった足元の強気相場は、まだ続くのか。S&P500は2018年9月20日につけた最高値である2,930.75を1.3%に迫るが、その後、同年12月24日までに20%下落しており、強気相場が終わったとも考えられよう。約2週間前には逆イールドが発生し、景気後退のサインは点灯したも同然である。しかし、米3月雇用統計やISM製造業景況指数などによれば、米経済は引き続き拡大中だ。1949年以降、強気相場の平均は5年4ヵ月で、現状はそれをかなり上回るとはいえ、最長は1987年から2000年までの約12年間である。このまま強気相場が続くのか、専門家の分析などを受けた現地の見方は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週はトランプ大統領と米連邦準備制度理事会(FRB)との関係のほか、格差問題に着目する。抄訳は、以下の通り。

トランプ、米株最高値更新を前にFRBに戦いを挑む—Trump Is Waging War on the Federal Reserve as the Stock Market Is Near New Highs.

昨年の秋、このコラムでトランプ大統領がFedを攻撃する理由について解説したが、いま、あらためてトランプ氏はFedへの批判を強め、利下げなど金融危機時の政策ヘ立ち返るよう要求している。同氏は5日に「Fedが米経済を鈍化させており、個人的にはFedは金利を引き下げるべきだと考える」と発言、クドロー国家経済会議(NEC)委員長やFRB理事に指名される見通しのスティーブン・ムーア氏も同調する。トランプ氏はそれだけで飽き足らず、インフレを確認していないとし、量的引き締めではなく量的緩和の必要性を説く。

Fedはというと、2018年末に4回の利上げを行い毎月500億ドルずつ保有資産を圧縮する見通しを示したが、2018年末にS&P500が弱気相場入りに直面したせいか、パウエルFRB議長は年が明けた1月に利上げに「辛抱強くなれる」と発言、保有資産の圧縮停止すら表明した。結果、FF先物市場は年末に1回の利下げを織り込む状況だ。

ハト派に傾いたFedの金融政策を受けて、米株市場や商品先物市場は上昇基調に転じた。マイケル・ハートネット氏率いるバンク・オブ・アメリカのストラテジー・チームは、商品先物市場が2018年末から年換算で84.8%もの急伸したと指摘、これまでの最高だった1973年を上回るペースだという。世界の株式市場も年換算で67.9%高を遂げているとし、1933年以降で最高となる。

もちろん、1〜3月期のラリーだけで年間のパフォーマンスを推定できるものではない。とはいえ、シカゴ地区連銀によれば、金融環境は1994年以降で最も緩和寄りにある。住宅ローン金利の低下は、新規借入や借換を後押しし始めた。

Fedがトランプ氏の発言に影響されることはないだろう。問題は、トランプ氏が指名する見通しのFRB理事候補だ。Fedウォッチャーの間では、スティーブン・ムーア氏より懸念すべきはハーマン・ケイン氏だ。同氏は実業家で2012年の大統領選に共和党候補として出馬しながら、セクハラ問題が発覚し撤退した人物として知られる。

ケイン氏、ゴッドファーザーピザのCEOなどを歴任。
(出所:Gage Skidmore/Flickr)

ルネッサンス・マクロ・リサーチのニール・ドゥッタ氏とスティーブ・パブリック氏は、レーガン大統領(当時)が当時のFRB議長で物価上昇を食い止めるため利上げで対応してきたポール・ボルカー氏を再指名したものの、周囲を利下げ派で固めたと振り返る。その上で両氏は、「仮にFRB理事の指名プロセスが最高裁判所を経由するような道筋をたどれば、経済見通しにとって芳しくない」と指摘。また経済政策で経験がない上に、カンザスシティ地区連銀での副会長の立場も報賞人事的だったケイン氏がFRB理事に指名された場合、トランプ氏によるFRBの政治的利用を恐れ、ムーア氏が米上院で承認される可能性が低下すると見込む。

AGFマネジメントのグレッグ・バリエール首席米国担当ストラテジストは、指名を辞退しない場合、ムーア氏が承認される確率を45%、ケイン氏は35%と予想する。

Fedの独立性を奪うような圧力を掛けることは有用ではないが、金融政策が2018年に引き締め過ぎた意味でトランプ氏は正しかった。とはいえ、Fedは既に方向転換し、ダウは2018年10月の最高値にあと1.5%に迫る。いま、Fedを批判するのは、賢明ではない。

4月1日週に、政界と経済界から格差是正の提案がなされた。米上院財政委員会の民主党筆頭理事であるロン・ワイデン議員は、キャピタルゲイン課税を変更すべきと主張資産売却時に課すのではなく、毎年、保有資産の評価額に基づき課税される案を提示した。なお2018年のキャピタルゲイン課税の税率は最大で23.8%と、所得税の最高税率37%を大きく下回っていた。

一方で、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、年次報告書と共に寄せた書簡で、「賢明な道筋に使われるのであれば」富裕層への増税を支持する見解を表明。教育システム、医療負担の上昇、インフラにおける問題を掲げたほか、住宅ローン市場の簡素化などを通じた住宅保有率の上昇、学生ローン問題の改善を促した。ダイモン氏はビジネス・ラウンドテーブルの代表として社会主義ではなく資本主義の姿勢を貫くが、民主党寄りの自論を展開したことになる。

共和党が上院で過半数を握っている限り、ワイデン氏の提案が法案として通過する可能性は低い。仮に実現すれば、資産売却に動く投資家が増え、金融市場に混乱を招きかねない。とはいえ、格差拡大が問題視されていることは間違いない。富裕層向けの増税は、大統領選と議会選を控える2020年以降に向け、熱を帯びてくるのだろう。

——民主党の間では、ワイデン氏のほか大統領選に出馬表明したエリザベス・ウォーレン上院議員のほか、女性最年少で当選したアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員が既に富裕層向けの増税案を提示済みです。こうした急進左派(プログレッシブ)の提案がメディアの関心を引いているのは、支持者が少なくないためでしょう。民主党上院の重鎮であるワイデン氏まで増税コーラスに乗ってきたのも、そうした時流の表れといっても過言ではない。JPモルガンのダイモンCEOも、NYでそれを感じて書簡をまとめたのかもしれません。何より、住宅ローンや自動車ローンなど消費者が借入してくれなければ、ビジネスが成立しませんからね。

(カバー写真:The White House/Flickr)

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