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なぜ維新は逆風の中で勝ったのかーー大阪ダブル選

本日20時の投票締め切りと同時に、大阪府知事選と大阪市長選でそれぞれ吉村洋文氏、松井一郎氏の当確が出ました。私は、事前にインターネットパネルではありますが独自調査を行っていましたので、当初から維新候補の圧勝を予想していました。しかし、選挙戦直前には自民党の行った電話世論調査で松井氏が負けるというような結果が出たらしく、方々にそうした観測が乱れ飛び、中盤になっても松井氏の苦戦が伝えられていました。また、NHKや新聞各社の電話世論調査でも府市、とりわけ市長選で拮抗が伝えられました。しかし、蓋を開けてみれば府知事選はダブルスコア、市長選でも20ポイント差近くが予想される圧勝となりました。なぜ、これほどにまで違う結果が出たのでしょうか?

そこにはまず、各種調査が有権者を捉えきれていないという問題があります。むろん、インターネットも補正をかけなければ正確な結果は出ませんが、固定電話には無党派層を捉える力が弱いという傾向はあるでしょう。噂の自民党の調査にいたっては、数字が盛られていたのではないかという疑念すら生じます。

また、メディア調査に関して言えば、有権者の意思やそこに潜む動機を読み切れていない、という分析上の問題点があるではないかと思います。そのうちの一つが、政党支持です。「自民支持者のうち半数を固めた」というような文章が新聞に出てくることがありますが、ここでいう自民支持者がどれだけ熱烈な支持者なのかはよくわかりません。とりわけ、維新のように地方では「政権」政党である場合、自民支持、維新支持という言葉自体が独り歩きしている可能性があるのです。

さらに、有権者にとって大事なことを読み誤る傾向もあります。たとえば有権者に、「どの政策にもっとも関心を持っていますか?」と聞いたとします。選択肢には社会保障や教育、経済政策など、どれをとっても大事な問題がずらりと並んでいます。皆さんならどうしますか?とりあえずぱっと関心のあるものを選びますよね。けれども、「教育」を選んだとして、本当にその人は教育政策を目を皿のようにして比較検討したうえで投票しているのでしょうか?有権者にそのまま意見を聞くというだけでは、浮かび上がってこないのが「本音」です。新聞社等の調査はいわば人々の「建前」を聞いているのであり、それだけでは本音は分からないのです。

維新大勝の理由

維新はそんな報道が大半を占めるアウェーの選挙を戦って、なぜ大勝したのでしょうか。

結論から申し上げると、一般有権者レベルでは自民支持者も公明支持者も、維新政策の一部は評価しており、何が何でも維新には反対、という「岩盤反対層」の人数は極めて限られていたからです。例えば、山猫総研の調査で大阪市に着目すると、都構想を問う住民投票でも賛成票を投じたし、吉村洋文氏に市長選で投票し、衆院選でも維新に投票しました、と答える人は17%で、衆院選の比例だけ他の政党に入れました、と答える人は12%、揺れ動く浮動票が38%、全部の投票で維新以外に入れた人は5%にすぎません(*また毎回投票に行かない人が28%います)。

分かりやすく言うと、インターネットでできるだけ多く標本をとって見る限りは、ガチで維新支持の人は17%、ガチで反維新の人は5%だということです(もちろん自民党に限らず電話調査がしばしば間違っているように、ネット調査も少し数字を補正する必要がありますが)。

政治に熱くなっている人たちがしばしば忘れがちなことですが、人びとというのはもっとあいまいなものなのです。選挙で運動員として活動したり、応援演説のマイクを握ったり、敵を粉砕するためにツイッター投稿するような人はごく稀、ということです。選挙の際に相手候補を叩き潰すような戦い方をすること(ネガティブ・キャンペーン)は、岩盤支持層の動員には効いても、そこを超えた支持が広がらないというのはそういうことです。

じゃあ、自民党支持層は一体どこに行ったんだ、さすがに5%というのはないだろう、と思われる方もいると思います。それは、この区分方法がどの政党を支持するかではなくて、具体的な過去の投票行動を聞いているからなのです。自民党支持層は、実は府知事・市長選や住民投票では維新を支持したけれど、衆院選の比例では他の政党に入れました、と答える人に多く存在しています。ガチで反対している僅か5%の中に、かつての民主党や共産党支持者のコア層や、自民党支持者のごく一部が流れ込んでいるというわけです。

つまるところ、こうした毎回投票してくれる層にどれだけ浮動票から積み増しができるかで得票が決まるわけですが、だからこそ、その中身を良く知ることが大事になるのです。

総括

今回の維新の勝利は、どのような意味合いを持っているのでしょうか。大きく分けて三点だと私は考えています。まず、成長重視の勢力が維持される意義は大きいといえます。投票した人の重視した点も、維新の主張も、成長の重視でした。成長を重視しない人が岩盤反対層に固まっていた明確なデータを見ると、小西氏や柳本氏の主張をいったん脇に置いて、両陣営に投票する人びとの志向性を見ると、違いは大きいことが良く分かります。

次に、地方自律型の改革モデルが維持されることの重要性です。これは、比較的岩盤支持層や地方選挙でのみ維新を支持している層にしか、十分浸透していない概念ですが、やはり維新運動のコアにある発想の一つです。他の政党や無所属の議員のなかにもそう考える人はいるのでしょうが、政党としてそれを目指している勢力は他に見当たらないからです。

最後に、安倍政権後の保守改革勢力の核となる意味は大きい、という点です。維新は国政政党としての合流の失敗を経て、党勢を縮小して原点回帰しました。しかし、地方ナショナリズムを掲げた求心力が衰えない限りは、ひとつの核となることは確かでしょう。自民党一党優位や安倍一強を批判する声は多いのですが、自民党の中に競争を求めるだけでなく、やはり外にも緊張感が必要だからです。立憲民主党には自民党とまったく違った思想があります。しかし、それは安全保障と経済成長においてリアリズムにたってはいません。自民党以外に改革保守の勢力がいなければ、自民党の努力も維持されない、と思うからです。



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