記事

大塚家具「買収」へのカウントダウン 久美子社長は父との復縁で企業存続を目指すべき

3期連続の大幅赤字で苦境に陥っている大塚家具。越境ECサイトを運営するハイラインズとの業務提携を前提に最大76億円の資金支援策を取り付け、ひとまず突然死を免れた感は強いものの、具体的な復活策は不透明であり予断を許さない状況は続いています。

今月上旬には支援企業ハイラインズ陳海波社長を伴って、約1年ぶりに公の場でコメントした大塚久美子社長。質問は「ケンカ別れ」した創業者で前社長である父・大塚勝久氏との和解に集中したものの、久美子社長の回答は依然歯切れが悪いまま。

そんな状況下、31日には同社株主総会が開催され、業務提携は正式に承認されています。

中国企業ハイラインズの狙いは父・勝久氏の取り込み?

BLOGOS編集部

今回の提携で久美子社長が描く業績回復策は、日中越境ECサイトでの販売強化と、ハイラインズが懇意にしている中国の家具販売大手イージーホームを通じた中国本土での販路拡大です。

特にハイラインズが紹介したイージーホームは中国の富裕層向け販売に強く、「高級感ある大塚家具の商品は、中国の富裕層に受け入れられる」という観点から提携には十分効果が期待できるとしています。

31日の株主総会で大塚家具の取締役に就任した陳社長は、「19年度決算では収支を均衡させ、20年度には黒字転換させたい」「3年後をメドに中国での売上を200億円にしたい」と鼻息は荒いのです。

業績悪化のトンネルを抜け出すメドが立たなくなった昨年後半以降、支援を求めた先々からことごとく断り続けられた瀕死の大塚家具に、ハイラインズとイージーホームはなぜ救いの手を差し伸べたのでしょうか。そのキーワードは、「富裕層」です。

大塚家具が伝統的にその取り扱いを得意とする高級家具を、「大塚家具の強みであるコンサルティング営業」(陳社長)で売る、すなわち購買意欲旺盛な中国の「富裕層」を大塚家具が長年の間に築き上げてきたノウハウで取り込んでいく。ハイラインズ=イージーホーム連合は、そんな思惑に自信があればこその支援決断であった模様です。

となると彼らの一番の狙いは、創業者であり「富裕層」向けコンサルティング営業を一から作り上げた、対富裕層戦略のプロフェッショナル勝久氏の取り込みにこそあるのではないでしょうか。

陳社長が会見やその他メディアからの取材に対して、盛んに「勝久氏との和解の必要性」を強調しているのは、まさしくその表れと映ります。

3期連続数十億円単位の大幅赤字という常識的にはトップ更迭が当然の状況において、今回大株主になるハイラインズが当面久美子社長からそのイスを奪うことをしなかった裏には、勝久氏取り込みの思惑があるからに相違ないと考えます。

「将を射んと欲すれば、先ず馬を射よ」、陳社長同胞の先人杜甫の教えを地で行くかのような戦法にも思えるのです。

久美子社長はと言えば、会見の席上相次ぐ勝久氏との和解に関する質問には、「いいものを長く使うという価値観は一緒」としながらも、「その価値観を共有する団体を業界のメーカーや販売業者と作り、そこへの参画を呼びかけたい」と言うにとどめるという、なんとも歯切れの悪い返答。

勝久氏のとの和解を勧める再建支援者・陳社長に対して、最大限に気を遣った物言いとして絞り出したという印象はぬぐい切れませんでした。

久美子社長に残された猶予期間は16か月

共同通信社

当面の資金面での支援を得つつも、依然として先行き不透明感が漂う大塚家具。今後はどうなっていくのでしょう。ポイントは株主総会で承認された新役員構成と、今回の資金支援スキームにあります。

まず役員体制は、現状の取締役7人のうち5人が入れ替えとなり、残る2人は久美子社長と妹婿の佐野春生氏。解任された5人のうち2人は社内人材での入れ替えですが、新たに陳社長が取締役に名を連ね、久美子社長が連れてきた2人(弁護士と大学教授)は退任させ陳社長の意向が反映された新たな取締役が選任という流れからは、久美子社長からの経営権奪取に関し外堀を埋められた形になります。

さらに資金支援の内容ですが、具体的にはハイラインズがアレンジしたファンドを含めた第三者割当増資支援が38億円、さらに新株予約権が38億円というもの。これがいかなる意味を持つものかといえば、増資38億円の大塚家具資本に占める割合は約40%強であり、過半には届かないまでも重要事項に関する否決権は持つ状況になります。

さらに新株予約権で同じく38億円分があり、仮にこれが行使された場合には今回の支援勢力株主で50%を超える可能性は十分にあると言え、業績が回復しないならば新株を発行し経営権を握ることで久美子社長のイスはいつ失われてもおかしくない状況にあると言っていいのです。

もちろん業績が回復方向に向かうならば、久美子社長を更迭する必要はないでしょう。しかし現状見通しはどうなのか。久美子社長、陳社長の合同会見で、イージーホームを軸として中国を中心に世界に打って出るという前向きな戦略は見えてきました。

ところが、それ以上に喫緊の課題であるのが、赤字垂れ流し状態の国内事業なのです。この部分についての立て直し策は、現在ヤマダ電機との提携程度の話以外にめぼしいものはなく、先行きに明るい兆しはほとんど見えないというのが実情であると思えます。

では、大塚家具が名実ともにハイラインズ=イージーホーム連合の配下に落ちるタイムリミットはいつなのか。同社はハイラインズとの資本提携と併せて、今期から創業以来続いた12月決算を改め4月決算に移行することを発表しています。すなわち今季は異例の16か月決算となるわけです。

この16か月こそが久美子社長に残された最後の猶予期間なのでしょう。すなわち資本注入から実質1年の猶予を与えられたと見ます。

この猶予期間に業績の回復が果たせないならば久美子社長のイス、すなわち創業大塚家の経営権が失われる、これがハイラインズ=イージーホーム連合が支援を決めた際の交換条件だったのではないかと思えるのです。

下手なプライドは捨て、企業存続を維持してこそ経営者

現状の同社の国内業績を見る限りにおいて、この先1年でV字回復を果たすことは困難を極めるでしょう。今のままでは1年後には、久美子社長は更迭され大塚家具は完全にハイラインズ=イージーホーム連合の支配下に入るのは確実です。

この絶体絶命の状況下で大塚家具を救う可能性を持つ人物がいるとすれば、それは陳社長がそのノウハウを高く買っている勝久氏以外にはないでしょう。

もし勝久氏を大塚家具の経営に呼び戻すことができるなら、長年培ってきた対富裕層戦略等のノウハウ供与と引き換えに、日本の古き伝統の桐箪笥製造にルーツを持つ日本資本の大塚家具が当面守られる可能性は決して少なくないと考えます。

もちろん久美子社長が言うような、業界団体を立ち上げてそこに勝久氏の参画を呼びかけるなどというまどろこしいやり方ではダメです。

一日も早く父・勝久氏へ直接大塚家具への協力を呼びかけ、両者の会社統合が無理でも持株会社化等の方法での経営一体化による創業家の総力結集こそが、日本の伝統的家具づくりにルーツを持つ大塚家具を消滅させない唯一の方法であると思うのです。

久美子社長に残された時間は本当にあとわずかです。下手なプライドは捨て、父に話しかけ協力を要請できるか否か。4年の時を経た父娘の復縁は必ずや「ケンカ別れ」で地に落ちた企業イメージの回復につながり、復活の後押しもしてくれるでしょう。

たとえわずかな可能性でも残されているのなら、企業存続のためにやれることは全てやる、それが経営者たるものであると、今こそ久美子社長には分かっていただきたいところです。

あわせて読みたい

「大塚家具」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    総理がメディアに指示? 質疑話題

    BLOGOS しらべる部

  2. 2

    なぜ高学歴なのに低収入になるか

    内藤忍

  3. 3

    徴用工めぐる韓国高裁のこじつけ

    緒方 林太郎

  4. 4

    民主政権の桜を見る会 今と違い

    井戸まさえ

  5. 5

    31歳東大准教授が日本の若手叱咤

    Thoughts and Notes from NC

  6. 6

    山本一郎氏がKAZMAX氏にエール

    やまもといちろう

  7. 7

    雅子さまがまた涙 視線の先には

    文春オンライン

  8. 8

    森田知事巡る問題に舛添氏が苦言

    AbemaTIMES

  9. 9

    子ども愛せず…高学歴男性の離婚

    幻冬舎plus

  10. 10

    居酒屋無断キャンセル逮捕を評価

    宮崎謙介

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。