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約40万円の高級スーパーカブが異例のヒット ホンダが原付二種で狙う新たなニーズとは

こだわりのルックス、これまでにない走行性能——そんな触れ込みで昨年ホンダ・スーパーカブシリーズのラインナップに仲間入りしたのが「スーパーカブ C125」だ。

昨年9月に発売された「スーパーカブ C125」 画像提供:Honda

実用車として圧倒的な知名度を誇るスーパーカブは50ccモデルで約23万円、110ccモデルでも約27.5万円と手頃な価格で販売されてきた。しかし、C125は約40万円の高級路線で登場し、巷のバイク好きを驚かせた。

同モデルは125cc以下の運転に必要な小型限定普通二輪免許(AT限定も含む)が必要な車種で、しかも高級路線ということもあり、担当者も「年間で3000台の販売ができれば」と当初は予測していたが、蓋を開けてみると免許の取得容易化も手伝い、昨年9月の発売からおよそ半年で目標の3000台出荷を達成。一時は納車待ちも出るほどだったという。

2018年、初代スーパーカブ発売から60周年のアニバーサリーイヤーに現れた新星にホンダが込めた想いとは。株式会社ホンダモーターサイクルジャパン商品企画課の荒木順平氏に話を聞いた。

信頼性はそのままに、ビジネスからパーソナルの領域に進出

——スーパーカブ60周年だった昨年に登場したC125ですが、これまでの実用車的なイメージから、大きく方向転換をしていますね

荒木順平氏(以下、荒木):スーパーカブの原点は1958年に発売されたスーパーカブC100というモデルですが、その後スーパーカブシリーズは、世界で延べ160以上の国と地域で販売され、日本やタイ、ブラジルなど、各国のニーズに合わせて進化したモデルが販売されています。

初代スーパーカブ「C100」。色合いなどC125との類似した点もある 画像提供:Honda

日本ではこれまで、スーパーカブは主に信頼性の高いビジネス車として多くのお客様に受け入れられてきましたが、C125はよりパーソナルユースの領域に向けた「乗って楽しむ」スーパーカブとして企画されました。

——このモデルの特徴はどのあたりになるのでしょうか

荒木:こだわりは非常に多いのですが、まず外観では気品あるシルエットを追求するため、通常モデルでは厚みのある樹脂成形のリアフェンダーをスチール材のプレス成形のものに変更するなど、新しさの中に懐かしさを感じる、より上質なスタイリングを目指しました。

走りに直結する部分では、110ccモデルのエンジンをベースに125ccに排気量を増やしたほか、ストロークの長いサスペンションを採用することで乗り心地をより向上させています。さらに灯火器のLED化や、このクラスでは珍しいスマートキーの採用など、使い勝手の部分はパーソナルコミューターとしてより上質感を提供する最新の装備を採用しています。

C125では、灯火器にLEDを採用した。速度計もデジタル化し、装備は一気にアップデートされている 画像提供:Honda

これらはすべて、現代の都市環境が大きく変わってきていること、お客さまが趣味性の高い上質なものを求めるように変化していることが理由です。

——いま話があったように、C125は125ccという「原付二種(第二種原動機付自転車)」というカテゴリですよね。多くの人が持つ普通自動車免許でも乗ることができる50ccではなく、なぜこのカテゴリでの発売となったのでしょうか

荒木:これには2つの理由があって、1つはC125がグローバル市場を意識して作られたことです。50ccというのはほぼ日本国内専用といえるカテゴリですので、海外におけるコミューターモデルのスタンダードな排気量である125ccを選択しました。

もう1つはやはり上質感や実際の乗り味といった点です。こだわりのカブとしてお客様に余裕を感じていただける動力性能を提供するために125ccとなりました。

販売ペースは想定外のスピード 異例のヒットの裏側に市場構造の変化も

話を聞いたホンダモーターサイクル商品企画課の荒木順平氏

——こだわりを反映して、お値段はスーパーカブシリーズとしては異例の約40万円と、かなりお高めになっています

荒木:ホンダの原付二種のなかにはC125に近い価格のものもあるのですが、そのほとんどがスポーツモデルでした。C125のようにコミューターとして趣味性の高いモデルでこの価格というのはあまりなかったので、「本当にその価格で良いのか」というのはやはりありました。

——発売後の反応はどうでしたか

荒木:価格の部分でネガティブな反応はあまりなく、「この価格でこの内容なら、納得だよね」という声もいただいています。

ただ、価格帯的にも、販売台数は年間で3000台と計画していたのですが、蓋を開けてみればその予測を超えたペースで受注をいただき、我々自身がスーパーカブの底力を見誤ってしまったと感じています。そのため、発売当初は供給が足らないこともあり、お客さまにご迷惑をおかけしてしまいました。

——大ヒットと言える状況ですね

荒木:基本的に、原付二種ではスクーターの販売台数が圧倒的に多く、ヒットモデルでは2万台くらい。一方、こういった趣味性の高いモデルは年間5千台を超えるとかなりのヒット商品といえます。おかげさまで、C125は発売から半年でそれに近い数字が出てきているので、かなり手応えはありますね。

——ヒットの要因はなんだと考えていますか

荒木:やはり、我々が意図していたとおり、こだわりを持った方に受け入れられているというのはあると思います。原付の「日常の移動手段」的なイメージではなく、趣味のひとつとしてバイクを受け入れている方。そのため、購入される方の年齢層も少し高めです。

もともと、400ccなどの排気量の大きいクラスに乗っていて、50代60代になり、「そろそろ体力的に大きいバイクは降りようか」というお客様が増えているのです。そういった方が「それでもバイクには乗りたい」と思った時に125ccを選んでいただいている傾向があります。

そうすると、やはり排気量が小さくても質感の高い外観で乗り味もいい車種を探すこととなり、その時にお選びいただくのが今回のC125だったり、モンキー125だったりします。こういった新しい流れが見えはじめているのが、ここ数年の変化です。

昨年7月に発売された「モンキー125」。趣味性の高いバイクと言われて連想する人も多いのではないだろうか 画像提供:Honda

——ホンダでも原付二種のラインナップは近年増えていますね

荒木:現在カタログに載っているのは16モデルです。原付二種は日常の使い勝手における利便性が高いというのもありますが、国内だけではなくグローバルモデルとして展開しやすいので、魅力のあるモデルが増えてきています。

また、原付二種はより排気量の大きいモデルからみればダウンサイジングになるし、50ccモデルからみれば二段階右折をしなくていい、しかも2人乗りもできる、速度制限も30kmの制約を受けません。さらに追い風として、昨年7月、AT小型限定普通二輪免許の取得に関して、1日の教習時間の上限が緩和されたこともあり、最短2日間で取れるようになりました。こういった追い風が重なりあって、だんだんと人気が出てきているのです。

——原付二種は確かに便利ですよね。一方で、原付一種は苦しい状況なのでしょうか

荒木:ビジネス車としてのカブは現在も人気ではあるのですが、50ccの原付一種の新車販売台数は各種の規制もあり減少してきています。2005年の47万台前後から年々減少して、昨年は約17万台。都市部では日常の通勤通学や買い物などちょっとした移動手段という部分は、電動アシスト自転車に置き換わってきていると考えています。

それ以外にも、全体の年齢構成が変わってきていて、ユーザーが徐々に高年齢化してきています。2005年の調査でも原付一種ユーザーの平均年齢は43歳と高かったのですが、直近の調査では平均で54歳になっています。こういった需要構造の変化はあります。

——海外市場についてはどうですか

荒木:海外市場と一口に言っても、地域によってかなり異なります。カブが人気の東南アジアは圧倒的にビジネス車が多いのですが、ここ2〜3年で趣味性の高い商品も出てきています。

タイには「カブハウス」というC125とモンキー125だけを扱う店舗がスタートしていて、そこにはバイクライフへの感度の高いお客様が集まっています。東南アジアも物価水準が上がっていくなかで、こうした趣味領域のニーズが増えていくのは間違いないので、それに応じた展開を図っていくことになると思います。

タイのカブハウス。カフェのような店内が特徴だ 画像提供:Honda

乗って楽しむ「オートバイ」の価値を若者にも知ってもらいたい

——日本の二輪業界、なかなか苦しいと言われていますが

荒木:二輪業界に限った話ではないと思いますが、今「○○の若者離れ」と言う言葉をよく耳にします。

でも我々はそれを言い訳とせずに、若い人たちにどうバイクの魅力を伝えて、乗っていただくかというのを考え続けています。そのためには、ただの移動手段という商品から、より生活が豊かに、楽しくなるためにバイクがお手伝いをできるようにならなければいけない。

ホンダは50ccから1800ccまでのラインナップを揃えています。原付二種というのは排気量の大きいものに比べれば価格もお手頃で、移動手段としても十分な性能があってかつ扱いやすく、オートバイに乗る楽しさも味わえる、ちょうどいいカテゴリです。

そのため、ベテランだけでなく、若年層の方々が初めてバイクに接するのにも適しています。商品も今回のスーパーカブC125やモンキー125など、だんだんと豊富になってきているので、そこでバイクの魅力に接してもらって、「次は250ccに乗ってみるか」など、バイクライフの広がりを持ってもらえれば嬉しいです。

***

長らくバイク業界を支えてきた国内専用ともいえる50ccモデルの販売台数が減少するなか、グローバルモデルとして登場したC125。人気を受けて、6月には海外ですでに販売中の別カラーも国内投入する予定だ。ホンダの狙い通り、より多くの人にバイクに乗る楽しみを伝えることができるのか、今後の展開にも注目したい。

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