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アジアで猛威を振るう「アフリカ豚コレラ」 - 澁谷司

 今年(2019年)4月3日、国際獣疫事務局(OIE)は、カンボジアから同国において初めて「アフリカ豚コレラ」(以下、ASF)が発症したという報告を受けている。そして、OIEはそれを公表した。

 カンボジアは、中国、モンゴル、ベトナムについで、アジアでは4番目のASF感染国となった。また、ASEANではベトナムに次いで、2番目である。

 ベトナムやカンボジアと国境を接している他のASEAN諸国(ラオス、タイ、マレーシア、ミャンマー等)は戦々恐々としているに違いない。

 よく知られているように、ASFはその致死率は、ほぼ100%である。そして、「豚コレラ」とは違って、未だワクチンが開発されていない。したがって、今のところ、豚がいったんASFに罹患したら、殺処分して焼却・埋蔵する他に方法がない。

 他方、翌4日、中国の新疆ウイグル自治区ウルムチ市でもASFが発生した。中国で29番目の省市(自治区を含む)となる。昨2018年8月以来、新疆ウイグル自治区、チベット自治区、海を隔てた海南省の3省市がASF非感染地域だった。残りはチベット自治区と海南省だけとなっている。

 もし、中国国内で製造された肥料の中にASFウイルスが混入しているとすれば、やがてチベット自治区や海南省にもASFが蔓延する公算が大きい。中国共産党は、ASF制圧に“自信”を見せているが、現実はそれほど甘くないのではないか。

 最近、習近平政権は、ASFが発症した豚1頭に対し、1200元(約2万円)の補償金を出す事に決めた。

 これが本当に実施されるとしよう。仮に5000万頭が殺処分されれば、北京政府は、養豚農家に約1兆円もの補償金を支払わねばならない。その他、豚の殺処分や焼却・埋蔵するのにも莫大な費用がかかるだろう。

 実は、今、中国で問題になっているのは、豚肉の高騰である。中国人は豚肉を好む(肉類のうち、約3分の2が豚肉)。しかし、ASFの蔓延で、豚肉の不足状態が続いている。そのため、消費者物価は上昇カーブを描く。

 景気が悪いのに物価が上昇するのは、典型的なスタグフレーションではないか。

 さて、今年4月2日、我が国の農林水産省は、中国からの旅客が持ち込んだ2つの豚肉ソーセージに、ASFの“生きたウイルス”を確認したと発表した(今までは、餃子やソーセージからASFの“陽性反応”だけが確認されていた)。

 実際、1月25日、そのソーセージは中部空港で発見されている。上海発と青島発の航空機で訪日した中国人観光客2人がそれぞれ持ち込んだ。

 不思議なのは、農水省がその発表に2ヶ月以上も時間をかけている点である。検査だけならば、数日で、その結果がわかるはずではないか(台湾でのASF検査対応は素早く、わずか2、3日で結果が公表される)。

 同省が時間をかけたのは、どこかに対する「忖度」があったのだろうか。その「忖度」とは、我が国の「親中」政治家に対する“配慮”か、それとも、中国共産党に対する“配慮”なのか。いずれにせよ、大問題である。

 もう一つ不思議なのは、中国人観光客は、なぜ、日本に持ち込む事が禁止されている肉製品等をわざわざ持ち込もうとするのだろうか。その感覚と真意が理解できない。

 まさかとは思うが、中国共産党が故意に自国民を使って、日本へ「生物兵器」を送り込んでいるのだろうか。

 台湾では、中国からASF陽性の死んだ豚が金門島へ流れ着いた時、もしかして、これは北京の台湾に対する「生物兵器」ではないかと囁かれた。

 日本では、あまり報道されていないが、今年3月15日、米国ニュージャージー州ニューアーク市の税関は、中国人ブローカーが100万ポンド(約454トン)の豚肉をニューアーク港へ密輸していたと発表した。史上最大の農産品密輸だという。

 米国は、中国でASFが蔓延しているのをよく知っている。そのため、税関での検疫強化に努めていたところだった。

 それにしても、ASF感染国の中国からASF非感染国の米国へ豚肉が密輸されるとは、悪い冗談以外の何物でもない。米国がそれを「生物兵器」と見なしても決しておかしくないだろう。

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澁谷 司(しぶや つかさ)
1953年、東京生れ。東京外国語大学中国語学科卒。同大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学等で非常勤講師を歴任。2004~05年、台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011~2014年、拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、同大学海外事情研究所教授。
専門は、現代中国政治、中台関係論、東アジア国際関係論。主な著書に『戦略を持たない日本』『中国高官が祖国を捨てる日』『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる!「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)等多数。

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