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著作権法改正案:違法ダウンロード刑事罰導入に慎重な理由

先日の自民党文教科学部会で、フェアユースの範囲を一定程度認めるために内閣が提出した著作権法改正案に対して、民自公3党に共同による修正案が提示された。修正の内容は「違法ダウンロードに対して刑事罰を科す」というものだ。部会では私と山本一太議員、小坂憲次議員が反対論を展開したが、賛成派が多数であったため、押し切られる形で修正案が承認され、その後総務会等での承認手続きも完了してしまった。

 私が反対論を展開したのは、そもそもフェアユースという形で著作権の縛りを緩めようという法改正の修正案で、ダウンロードに対して刑事罰導入という規制強化を図ることは違和感があるという点である。違法ダウンロードに刑事罰を科したいのならば、単独の立法で堂々とチャレンジするべきである。内閣提出法案の修正などという変則的な形で刑事罰を導入するのは姑息だと言わざるを得ない。

 また、上記のようなそもそも論以外にも、違法ダウンロードへの刑事罰導入は色々と問題が多い。いくつか指摘しておく。

 そもそも前回の法改正時には、組織的に実施される可能性の高い違法アップロードには刑事罰が導入されたが、個人が罪の意識なしにダウンロードする可能性が高い違法ダウンロードについては「違法だが刑事罰はない」という状態に止めた。今回なぜその考え方を改めなくてはならないのか、大きな状況変化があったのかが不明確である。
 本来はまず個人への啓発等を十分に行うべきである。特に違法ダウンロードがアーティストの権利を損ない、音楽の発展を阻害する可能性があることを十分啓発すべきだ。刑事罰導入はその後に検討されるべきだ。

 アップロードに刑事罰を付けるよう著作権法が改正され施行されたのはわずか2年前のことだ。その効果や影響の検証も十分ではないのに、さらに個人の違法ダウンロードに刑罰を付けようというのはあまりに拙速ではないだろうか。新聞データベース等で調べても、違法アップロードが刑事事件として立件されてケースは数えるほどしかない。2年前に改正された著作権法が十分に活用されているとは言えない状態だ。なぜ活用できていないのか?摘発の難しさ等もあるのかもしれない。

 音楽業界や権利者はまず与えられた違法ダウンロードへの刑事罰という武器を十分に活用すべきである。最初に与えられた武器の活用も十分でないのに、新しい武器が欲しいとは、虫が良すぎるのではないか。

 音楽業界は違法ダウンロードが音楽産業に与えるマイナス影響を強く訴えているが、では2年前にアップロードへの刑事罰導入後、音楽産業の売り上げは増加したのだろうか?実際には音楽の売り上げ低落傾向に歯止めはかかっていない。これは違法なアップロードやダウンロードによる影響よりも、もっと大きな問題が音楽産業にあることを暗示しているのではないだろうか。

 少なくとも音楽産業は、「個人に刑事罰を」と主張するのであれば、違法アップロード刑事罰化が増収効果を生まなかったことの検証と、違法ダウンロードへの刑罰導入によって、音楽産業にどの程度の増収をもたらすのか?きちんと世の中に対して説明すべきである。そういう具体的根拠なしに、個人を対象とした刑事罰を軽々に導入すべきではないと思う。
 そもそもアップロードなくして、ダウンロードはない。根っこは違法アップロードである。これを刑事罰化して2年が経つのに具体的成果が見えないのも不思議だ。業界は刑事告発等にしっかり取り組んできたのだろうか?

 さて、個人の違法ダウンロードについて権利者からの告発があった場合、警察はどうやって摘発するのか。実際には困難ではないだろうか。だとするとわざわざ立法する意義が見いだせない。逆に摘発が可能だすると今度は警察が個人のネット利用を監視することにつながり、通信の秘密を侵す可能性がある。通信ログの長期にわたっての保存義務化等、自由なインターネット利用を阻害する事象も発生しかねない。

 刑事罰を導入するというのであれば、警察庁からも摘発の具体的手法についてきちんとヒアリングする必要がある。これは憲法上の通信の秘密に関わる重要な問題であり、慎重に検討されなくてはならない問題だ。

 新しい技術動向にも配慮する必要がある。最近はiCloud等、クラウドサービスが普及していて、ネット上に自分が保有する音楽ファイルを置いておいてその携帯音楽端末にダウンロードして聴くという新しい形態が普及している。
また個人で自宅のサーバーに音楽ファイルを置いて、ネットでアクセスして聴く人もいるだろう。
 こういう合法的な個人利用としてのダウンロードと、違法なダウンロードとをどう見分けるのだろうか?無実の個人を立件してしまうことにならないだろうか?きわめて心配である。

 以上のような点から、私は違法ダウンロードへの刑事罰導入に関してはきわめて慎重な立場である。残念ながら自民党では承認されてしまったが、これからの国会論戦等を通じて、他党からも私と同じような見解が出てくることを期待したい。

 もちろん日本の音楽産業が非常に厳しい状況に置かれていることを放置しておいてよいとは考えていない。売り上げもピーク時と比べて半減してしまっている。

 しかし私は違法ダウンロードを取り締まれば、音楽産業が復活するとは思えない。むしろ世界の音楽ビジネスの激変についていけていないことが、大きな原因ではないかと考えている。内外価格差も、ネット通販で簡単に海外版が入手できるようになった現在、日本のCD売り上げの足を引っ張っている。

 また、音楽がネットで配信されることが当たり前になり、パッケージで販売していたビジネスモデルが完全に崩壊しつつある。またその配信プラットフォームがアップルをはじめとする海外勢に押さえられていることも問題だ。

 今日本の音楽産業の将来を真に憂慮しているのであれば、拙速で近視眼的な違法ダウンロードへの刑事罰導入よりも、議論すべきポイントが山ほどある。

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