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意思とは無関係に大声や身体の動きが…好奇の眼差し、いじめに苦しむチック症・トゥレット症の当事者たち

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 先月31日に開かれた、ある障害に悩む人々と、その家族の交流会を撮影した映像。突然、大声で奇声を発する男性や、瞬間的に体を激しく動かし、自らの手で顔を叩く男性。「チック」と聞くと、この症状のことを知っている人も多いのではないだろうか。その「チック」が1年以上続くケースは「トゥレット症」と呼ばれ、当事者たちは自分の意思とは関係なく現れる症状への好奇の眼差しや偏見、いじめに悩み、苦しんでいる。

 ある参加者の男性は、自傷行為のように何度も目を叩いてしまうため、ゴーグルが欠かせない。「街を歩いていると笑われたりとか、"変な顔で、あの人危ないんじゃないか"と言われる時がある。特別扱いしてもらいたいとかではなく、そっとしてほしいというか、見守ってほしいというか。色々な人がいるよね、という社会になってほしい」と明かす。また別の男性は「症状が原因で仕事を解雇されたこともあった。職を転々としているので、老後がどうなってしまうのかなという不安が常にある」と胸の内を語った。


 そんな「トゥレット症」当事者の一人、桜美林大学の酒井隆成さんは、「1人でも多くの人にこの病気のことを知ってほしい」と取材を引き受けてくれた。1日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、チック症、そして「トゥレット症」と社会について考えた。


 取材中、スタッフと会話をしている間にも、思わず声が漏れ、顔をしかめてしまう酒井さん。鼻や喉を鳴らしたり、声をあげてしまったりする症状を音声チック、顔をしかめたり、突然痙攣したように体が動く症状を運動チックと呼ぶ。

 「くしゃみが出てしまうのと同じで、衝動が来たらそのまま声が出てしまう感じ。意識して抑えようとしても、どうしても声が出てしまう。身体も、抑えようとしてもなかなか抑えられなくて、自分の体を叩いてしまう」。


 一人暮らしをしながら大学に通っているが、酒井さんにとっては学生生活も一筋縄ではいかない。「自分の名前を書いてみましょうか」。酒井さんがノートにペンを走らせようとすると、自分の意志とは関係なく、手が激しく動いてしまい、なかなか書くことができない。「こんなふうに手が動いてしまって、字にかぶさってしまうような線が入ったりして」。苦労して書き終えた名前を見れば、酒井さんがいかに苦労しているかが伝わってくる。中高生の頃は、許可をもらって黒板の写真を撮らせてもらうなど、様々な工夫をして、どうにかやってきた。パソコンやスマホの操作についても同様で、何度も叩いたり、落としたりして、壊してしまうこともあるという。


 さらに酒井さんを悩ませるのが、「汚言症」だ。1人で部屋にいる様子を撮影させてもらうと、突然「うるせぇ!」「死ね!」と声が出る。思ってもいないのに、攻撃的な言葉として出てしまうものだ。そのため、家にいても気が休まることはないという。「全く思っていないのに、なぜか出てしまう。自分の中に違う自分がいるような変な感覚がある。つい先日も通報されてしまった。近隣の住民から苦情が入ったということで、警察の方が家まで来た」。酒井さんの症状を知っている取材スタッフでも思わず驚いてしまう汚言症。初対面の人からは、不快に思われてしまうこともあるだろう。


 症状が出る頻度は約5秒に1回。「緊張した時や、不安に駆られた時に症状がたくさん出てしまったりする」。唯一気が休まるのは、睡眠時だ。「僕の場合、睡眠中は基本的に症状が出ない。ただ、声の出る症状が続くと脳が動いている感覚になって休まらず、睡眠に入れないこともある。そうなると昼夜逆転。頻繁に起きることではないので大丈夫だが、この症状に苦しんでいる方もいる」。


 チック症は子どもの10人に1~2人が発症するといわれ、4~6歳でピークを迎えるとされる。多くは成人までに治るが、中には重症化し、1年以上にわたり、複数のチック症状が現れる場合「トゥレット症」と診断される。原因は脳の神経伝達がうまく働かないために起こると考えられており、投薬によって症状を緩和することはできるものの、完治はしないという。

 酒井さんの診察も行ってきた東京大学医学部附属病院・こころの発達医学分野の金生由紀子准教授は「様々な神経伝達物質が関連しているが、薬が効くということから考えてドーパミンが中心だと考えられていて、体質と神経の発達する時期が重なって発症する。最初はまばたきで表れる人が多く、それだけで終わる人もたくさんいる。後から複雑な動きや声が出てきて、だんだん症状が揃ってくる。その意味で酒井さんは典型的かつ症状の重い方だ。本人や周りが病気とどう付き合っていくか、生きていくかをサポートしていくのが基本で、それに加えて薬で少しでもコントロールするという方法がある」と話す。


 酒井さんがチック症に悩み始めたのは小学校2年生の時だった。全校集会で身体が動いてしまう自分に不安を感じていたところ、3年生の時にトゥレット症との診断を受ける。「当時は家から出るのが嫌になるくらい。周りの人に見られて、笑われた。笑われなくても、"あの人、変だよ"と言っているのが聞こえてきて、すごく傷ついた」。やがて学校ではいじめの対象になる。「僕が声を出したら、同じような声をずっと出し続けてきたり、僕が動いたら、それを真似て大げさにやって見せたりされた。今でこそ慣れたが、"なんで自分の気持ちを理解してくれないんだろう"と思っていた。小学校5年生くらいが甲高い声を上げてしまう症状のピークで、耳元で叫んでしまうので、母親も病気だと分かっているのにケンカしてまった」。


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