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特集
休みのトリセツ 〜今日から始めるニッポン休み方改革〜
新生活に入るビジネスパーソンも多い4月。「頑張って働くぞ!」と意気込んでいる方も多いのではないでしょうか。しかし、働くことと同じくらい大切なのが「休む」こと。そこでBLOGOSでは今月、さまざまな角度から「休み」について考えるための特集を始めます。目指せ、休み上手!

日本人よ、休め!休み方革命の序曲(常見陽平)

  • 2019年04月04日 14:16
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嵐ロス休業、大いに結構ではないか?

私たちは日々、スマホのポップアップ通知で、たくさんの喜怒哀楽を経験している。良い知らせも悪いニュースも、画面にポンと通知される。これだけでなく、Twitterのトレンドもニュースをいち早く伝えてくれる。こちらの気持ちなどお構いなしに、ときに無慈悲に。

著名人の結婚、グループの解散や活動休止、様々な不祥事、あるいは人気番組の終了、オリンピックやワールドカップが終わった際などにSNSで頻出する表現は「○○ロス」というものである。2015年9月に俳優の「ちい兄ちゃん」こと福山雅治が女優の吹石一恵と結婚した際には「ましゃロス」という言葉がTwitterで拡散した。SMAPの解散、安室奈美恵の引退、嵐の活動休止などもそうだった。電気グルーヴのピエール瀧が逮捕された際も、同バンドの音源や、同氏が出演している映画の配信停止が行われ「ロス」状態となった。

特に「ましゃロス」の際には、「もう会社を休みたいくらいショック」というツイートが散見された。私は、ジャニー喜多川風にこう言いたい。「YOUも休んじゃいなよ」と。

ここから真面目な話をしよう。別に「ましゃロス」「SMAPロス」「安室ロス」「嵐ロス」「ピエール瀧ロス」で会社を休んでも構わない。もし、有給休暇が残っていたなら、堂々と使えばいい。1日で気持ちがおさまらないなら、もう1日休めばいい。

「そんなの、無理だ!」

そう叫ぶ人もいることだろう。たしかに、周りにそのような休み方をしている人はそう多くないかもしれない。また、たしかに使用者には時季変更権というものがある。使用者は、労働者から年次有給休暇を請求された時季に、年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合(同一期間に多数の労働者が休暇を希望したため、その全員に休暇を付与し難い場合等)には、他の時季に年次有給休暇の時季を変更することができる。とはいえ、有給休暇とは、労働者が請求する時季に与えることとされているので、労働者が具体的な月日を指定した場合には、「時季変更権」による場合を除き、その日に年次有給休暇を与える必要があるのだ。会社に「嵐ロス」を伝えるかどうかは別として、芸能ニュースでショックを受けて休むことは別に批判されることでもないのだ。

日本人はなぜ休めないのか?

ここで日本人はなぜ有給休暇を取れないかを考えてみたい。事実から確認しよう。

日本人と休日をめぐる状況について確認をしておこう。まずは、休日をめぐる国際比較を行いたい。2016年の年間休日数を日本、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアで比較してみると、日本は138.2日だった。イギリス、フランスは137日と比較すると多いが、ドイツの141日、イタリアの139日と比較するとやや少ない。

年間休日数自体は僅差とみることもできなくはない(休日は1日、1日が重みのあるものだが)。大きな特徴は有給休暇の日数である。日本は18.2日とイギリス、フランス、イタリアの25.0日、ドイツの30.0日と比較すると少ない。その代わりに、週休日以外の休日は15日となっており、ドイツの7日、イギリス、フランスの8日、イタリアの10日と比較すると倍以上に多い。

より詳しいデータをみてみよう。厚生労働省の「就労条件総合調査」をもとにした、『平成30年版過労死等防止対策白書』のグラフから考える。

日本における有給休暇の取得率は、1992年(平成4年)、1993年(平成5年)に56.1%と、1988年(昭和63年)から2014年(平成27)までの26年間においてはピークとなったが、2000年(平成12年)には49.5%と50%を割った。その後、2004年(平成16年)に46.6%とこの26年間で最低となったあとに回復し、2011年(平成23年)に49.3%となってからは増減を繰り返している。2016年(平成28年)には49.4%となり、2000年代に入ってからは5割以下で推移している。

なお、有給取得率は従業員数が多いほど高くなっている。2016年(平成28年)のデータでは、従業員数1000人以上の企業が55.3%、300〜999人の企業が48.0%、100〜299人が46.5%、30〜99人が43.8%である。

産業別にも違いがある。「電気・ガス・熱供給・水道業」の71.8%、「複合サービス事業」の64.6%、「情報通信業」の58.9%が高い。逆に「宿泊業、飲食サービス業」が32.8%、「卸売業、小売業」が34.9%、「教育、学習支援業」が37.2%と、年次有給休暇取得率が低くなっている。

このように、年次有給休暇の取得日数は少なく、祝日が多いというのが日本の特徴である。企業規模(従業員数)や、産業による差もある。まずはこの現状を把握しておきたい。

休ませるための制度は評価するべきなのか?

私は日本人の休み方(これは働き方とも連動しているが)の大きな問題点は、自由に、柔軟に休むことができないことにあると考えている。トータルの年間休日日数は他国に比べて、やや少ない。ただ、これ以上に有給休暇を十分に、かつ自由に、柔軟に取得することができる国にしなければならないと私は考える。

有給休暇が取りにくい理由は何か。そのハードルは、仕事の絶対量や役割分担、チームで働いていること、休みにくい雰囲気(上司や同僚への配慮)、人手不足などにあるのではないか。

有給取得率の向上という意味では、4月からルールが変わることを確認しておきたい。年間10日以上の有給休暇を取得している労働者に対して、付与日から1年の間に最低5日間は取得させなければならなくなった。なお、休ませなければ使用者には罰則規定がある。この最低5日休む分に関しては「労働者が休む」のではなく「労働者に休ませる」という世界観への転換を意味する。

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働きすぎの是正が課題となっている中、これはなんとしてでも労働者に休ませるという意味では、前進といえる。休ませなければならない環境になったがゆえに、使用者や労働者ともに、仕事の量、役割分担などを見直す機会にはなる。

ただ、これはややうがった見方をするならば「後退」とも言える部分がある。労働者がより休むことは重要ではあるが、逆に「どうせ、有給休暇は取れないから、休む日は決めてしまおう」とも捉えられる。「三歩進んで二歩下がる」状態とも言えないか。

なお、これまでも有給休暇の取得率が高い企業というものもあった。たとえば、会社員時代に合弁事業でつながりのあったトヨタ自動車では、有給を完全に取得することが促されていて、計画的に消化していた。確実に休ませる仕組みと運用に感心した。ただ、理想は従業員が柔軟に、好きなときに取得し、100%取得することではないだろうか。

労働者が確実に休むことを促す意味でも、休むことに理解を広めること、働き方を見直す上でも、有給取得義務化は前進ではある。ただ、自由で柔軟な休み方とは逆行したものだと言える。

これからの休み方の話をしよう

「働き方改革」が叫ばれる今日このごろだが、私は関連して「休み方改革」が必要だと考える(そのためには働き方改革が必要なのは言うまでもない)。そもそも、より自由に、柔軟に休むことができる社会にしなければならない。現状の、そしてこれからの日本社会と、休み方がマッチしていないのである。

労働者は生活者でもある。生きる上で、様々な事情を抱えて生きている。たとえば、育児・介護だ。育児においては子供が熱を出したり病気になったとき、検査をするときなどに柔軟に対応しなくてはならない。その子育ても、現状の出産前、出産後の産休・育休だけが、ピーク期ではない。手のかかる時期に休んだり、勤務時間を短くするなどの対応が必要ではないか。子供を授かるための妊活のためにも柔軟な休みが必要だ。さらに、人生100年時代を見据えた上での、学び直しのための休みも必要である。充電するための休みというものもあっていい。

GettyImages

つまり、有給休暇というスポットの休みだけでなく、人生を考えた上での、キャリア形成のための休みや、充電、インプットのための休みも必要なのだ。いまの、そしてこれからの社会像と休み方があっていない。

もちろん、企業や個々人は様々な創意工夫をしている。1時間単位で有給休暇を取ることができる企業が広がりつつある。休みではないがテレワークなどの柔軟な働き方も広がりつつある(これもまた、長時間労働を誘発する可能性もあるのだが)。数ヶ月単位の長期休暇を取ることができる企業も現れている。出産・育児などのライフイベントに合わせて、大胆に休む人もいる。

働き方を是正する意味でも、豊かな生き方を応援する上でも休み方の改革は必要だ。これは未来の日本を創るためにも必要だ。国も、企業も、何より個人も、休み方改革が必要なのだ。

息抜きながら、生き抜け!休むための処世術

話はいきなり、ビジネスパーソンとしての処世術に飛ぶ。柔軟に休むためには、どうすればいいか。技を教えよう。

本来、有給休暇は柔軟に、自由に取得するべきである。ただ、休みにくい雰囲気も漂っている。どうすればいいか?自由に休むための信頼関係を構築するべきである。

自分で取り組んでいる勉強、趣味、育児や介護などの家庭の事情を職場に理解してもらうよう、さりげなくインプットを続ける。何より仕事の信頼貯金をつくる。「頑張っているから、休むのは仕方ないよな」「彼が休むのは当然」という信頼を築きあげる。計画的に休みの日が決まっている場合は、前々から周りに宣言し、邪魔されないようにするのも、有効な技だ。何度も言うように、休みは柔軟であるべきだし、自由に休むべきだが。また「休み」ではないが、自主的なノー残業デーも意識して取りたい。

休暇を満喫する常見氏

会社に制度がない場合も、「自主的長期休暇」にトライしたい。年末年始や夏休みの他に、1、2週間休むのだ。繁忙期などを意識しつつ、これも意志をもって取得したい。

大胆な提案だが、自主的にインプットのために休職するという手もある。その期間で大学院進学や留学などのチャレンジするのも手だ。最近は男女関係なく配偶者の海外単身赴任もある時代だ。それに合わせて休職し、充電する手もある。

私個人の長期休暇体験を話そう。鬱で倒れ、休職した経験が忘れられない。今回の趣旨とはやや異なり、しかも働きすぎで倒れるという最悪の例なのだが。体も心も言うことを聞かないし、未来も見えず辛い時期だったが、世の中から離れ、自分を見つめ直し、働き方を変える良い機会になった。倒れるまで働いてはいないが、いざ倒れ、休んだ期間は人生の宝物となった。

会社員時代には、ホノルルマラソンに合わせて必ず休む人、ワールドカップがあるたびに長期休暇を取り、約1ヶ月間サッカー三昧という人もいた。今もビジネスで会う人の中にはスポーツの世界大会に合わせて、現地に行くために休む人がいる。

思うに、働き方にしろ休み方にしろ、これは自分のためになり、結果として会社や社会のためになるというある意味傲慢なような正論が必要だ。そのために働き方、休み方の主導権を握るのだ。さあ、休もう。公園で寝そべって読書しながら、電気グルーヴを聴きたい。

常見陽平(つねみ ようへい)
千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より現職。著書に、『僕たちはガンダムのジムである』(日経ビジネス人文庫)、『「意識高い系」という病』(ベスト新書)、『社畜上等!会社で楽しく生きるには』(晶文社)など。

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