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日本を滅ぼす超高齢社会(3)―少子化は誰のせい?

高齢化の直接の原因は少子化。これは誰でも知っていることである。

いうまでもなく、高齢化をもたらす原因はほかにもある。たとえば平均寿命の伸長も重要な一因として考えられる。だが、高齢化を直接にもたらした最大の原因はやはり少子化である。

では、少子化の直接の原因は何?一概に「これだ」と断言することは意外と難しい。専門家の間でも意見が分かれている。その原因は単純なものではないからだ。

それにしても、大きく分けて、第一に、婚姻に関する意識や婚姻のあり方の変化、第二に、経済社会の変化という二通りに分類することができるだろう。ここでは、さまざまな調査や研究で言及されているものを並べてみよう。

○「晩婚化」や「非婚化」の進行。婚外子の慣習や文化はあまり浸透していない日本では、結婚しなければ、子どもが産まれない。あるいは結婚が遅くなると、産まれる子どもの数は自ずと限られる。いずれにして、結果は少子化につながる。

○お見合い結婚の減少と恋愛結婚の増加。両者の最大の違いは、当事者の意思はどこまで尊重されるかである。恋愛結婚では親や兄弟、親族の関与がかなり排除されて、当事者の意思がパートナーの選びを最終決定する。いわゆる世間体の縛りから解放された恋愛結婚は結婚率を下げ、晩婚化をもたらすことになる。

○高学歴化の進行。日本の大学進学率は世界のトップクラスですでに50%を超えている。特に女性の高学歴化は目覚ましい。大学を卒業するとともに就職する。しばらくは仕事に慣れ、キャリア形成に励む。そうすると、結婚はどうしても20代後半ないし30歳頃になってしまう。さらに、自分のライフスタイルが固定化してしまうと、他人との結婚による自己世界の変容に拒絶反応を示すことは多くなる。これは言ってみれば、「結婚の恐怖」から逃れようとする現象である。

○若者の付き合いの減少やコミュニケーション力の減退。テレビ、音楽プレイヤー、携帯電話などの普及は現代人のライフスタイルを一変した。その最大のポイントは、人と人の対面を極限まで「無用化」してしまったことだ。「文明の利器」の利便さをもっとも享受している若者は、今度は人と人の対面にかつてないほど「煩わしさ」を感じ、それを極力に排除しようとするようになった。その結果、結婚に至るまでの必要不可欠なステップである他人との付き合いやコミュニケーションは急速に崩れ去っていく。

しかし、残念ながら、いまの人々はもっぱら「文明の利器」の利便さを享受するばかりで、その人間社会を根底から破壊してしまうような恐ろしさにほとんど無頓着だ。スティーブ・ジョブスに対する称賛喝采をみればわかるように、対面的な人間関係の崩壊に大きく貢献してきた「文明の利器」およびその発明家は類例のない偉大な存在として崇められている。

○所得格差の拡大に伴う低所得若者の増加。以上列挙した少子化の諸原因の中で、近年、もっとも注目されているのが、経済社会の要因である。つまり、多くの若者は所得が低いため、結婚できないということである。一方、この所得と結婚との因果関係は非常に怪しいものだと筆者は思っている。

2011年5月11日、内閣府は2009年10月に実施した若者の結婚や家族観に関する調査結果を発表した。案の定、中では、少子化の要因の一つとして、「未婚化」や「晩婚化」、さらには「非婚化」と結婚にまで至らない人が増加していることが挙げられている。それによると、20代30代の男女とも約8割が結婚を望んでいるが、希望と実際では大きな差がみられる。

ではなぜ結婚したくても、実際結婚に至らないのか。内閣府の調査は所得の違いにも焦点を当てており、その結果は以下の通りである。

一つは、年収別婚姻・交際状況である。男性の「既婚」(結婚3 年以内)は、20 代30 代では年収300 万円未満が8~9%で最も低く、年収300万円以上になると約25~40%弱となり、大きな開きがある。全体的には、年収が上がると男女、20 代30 代とも「既婚」が増える傾向だが、600 万円以上の20 代男性、30 代女性は、「既婚」の割合が低い。20 代女性は年収300 万円以上あると、「恋人あり」が40~50%で、20 代男性より高い。

もう一つは、婚姻・交際状況別年収である。男性では、「既婚」、「恋人あり」、「恋人なし」、「交際経験なし」の順で年収300 万円以上(「年収300 万円以上600 万円未満」と「年収600 万円以上」の合計)の割合が多く、「交際経験なし」では過半数が年収300 万円未満である。女性では、「既婚」で4 割以上の人が「収入が無かった」としているが、それ以外では男性同様「恋人あり」、「恋人なし」、「交際経験なし」の順で年収300 万円以上(同上)の割合が高い。

近年、「所得が低いと結婚ができない」とか、「所得が少ない人は結婚が難しい」とかいう見方が強まっている。しかし、内閣府の調査結果からもわかるように、結婚・交際状況と所得との間には確かに一定の相関関係が存在するが、両者は必ずしも正比例しているとは言えない。言い換えれば、所得の低い人は結婚が難しいという見方は短絡的なものにすぎず、まだ十分な裏付けが得られていないのだ。

よく考えてみると、所得が低いから結婚ができないというのはもともと可笑しな話である。

人類の歴史において、現在よりはるかに貧しい時代があった。あるいは今の世界で日本よりずいぶん貧しい国はいっぱいある。所得が低いため結婚ができないような人はいつでもどこでもいるが、それは決して普遍的な現象ではない。逆に、生活が貧しくても、結婚し、子どもを産む、というのがむしろ脈々と流れている人類の本来の姿である。

貧しさゆえに結婚が出来ないという見方はよくワーキングプアやフリーターを引き合いに出す。いわく、「ワーキングプア、フリーターだから、結婚する経済力がない。」という。

果たしてそうなのか。筆者に言わせれば、もし経済力を問題視するならば、年収200万円未満の人もちゃんと結婚ができるはずだ。なぜなら、結婚は1人ではなくて、2人のことである。2人分の収入を合わせれば、年収は300万円以上になる。年収300万円以上もあれば、子ども1人を産んでも、一家の生活はちゃんとできるはずである。

所得水準は結婚率に影響する経済的要因の一つであることは間違いないが、それほど重要な要素ではない。結婚する気があるかどうか、その意識は強いかどうかはむしろ決定的な要素だと筆者は思う。

確かに、女性には「上方婚」、男性には「下方婚」のような傾向がある。つまり、女性は自分よりもランク上の男性と結婚したがる。逆に、男性は自分よりもランク下の女性と結婚したがる。そうすると、学歴や所得の低い男性は結婚相手の女性が少ないことになる。

しかし、これは絶対的なことではない。というのは、結婚でも需要と供給の原理が存在する。特に日本では、男女の比率は歪んでいないし、理論的に男性にとっても女性にとっても結婚相手の数が揃っているはずである。また、所得の低い人は男性だけではなく、女性もいる。だから、経済力をもって結婚の状況を説明するには明らかに限界があるといえる。
(執筆者:王文亮 金城学院大学教授)

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