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インポッシブル・バーガーって何?なぜ今代替肉なのか - 土方細秩子 (ジャーナリスト)

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4月1日、エイプリルフールのジョークのようなニュースが流れた。全米第二のハンバーガーチェーン、バーガーキングがミズーリ州セントルイス周辺で代替肉を使ったその名も「インポッシブル・ホッパー」の販売を始めたという。

バーガーキングの目玉商品と言えばマクドナルドのビッグマックに匹敵するホッパーで、およそ100グラムの肉が挟まれている。そのホッパーのベジタリアンバージョンとして登場したのがインポッシブル・ホッパーだ。いわゆるベジーバーガーと呼ばれるもので、大豆などを原料としたパテに本物の肉に限りなく近い食感と風味をつけたもの。

この代替肉を製造するのはサンフランシスコ周辺に本拠を置くインポッシブル・フーズ社。代替肉そのものは新しいものではない。同社は2011年に設立され、全米及び香港の1000以上のレストランで代替肉を使ったメニューを提供している。

しかしバーガーキングのような大手チェーンとの提携により、「肥満の大敵」と呼ばれてきたファストフード業界に革命をもたらす可能性がある。ライバルのマクドナルド、ジャックインザボックスなども追随する形で代替肉の「ヘルシー」かつ「地球環境に優しい」バーガーを提供するようになるかもしれない。

バーガーキングの広報では、もしセントルイスでの販売が成功だと判断されれば、全国の7200店舗にこのメニューを導入する用意がある、としている。そうなれば代替肉(ちなみにミズーリ州では植物を原料とした代替肉を「肉」と表示することを条例で禁じている)は今よりもっと身近なものとなるだろう。

牛の飼育を廃止すべき

実はハンバーガーチェーンによる代替肉導入はこれが初めてではない。すでにホワイトキャッスル、レッドロビンなどのより規模の小さいバーガーチェーンでは全米の数百店舗で代替肉バーガーを提供しているし、全米第3位のチェーンであるカールス・ジュニアも今年中にビヨンド・ミートというインポッシブル社のライバル企業が作る代替肉バーガーを全米1000店舗で発売予定だ。

ただし代替肉を使ったバーガーは牛肉を使ったものよりも平均で1ドル程度値段が高くなる。そのため各社は一気に導入するのではなく、小さめの市場でテストを行い顧客の動向を見て拡大する、という方針を採っている。つまり代替肉が商品として成立するのかどうか、という過渡期にあると言える。

ではなぜ今大手チェーンがこぞって代替肉を導入しようとしているのか。もちろん上述のように肥満対策、環境対策、ベジタリアンの要望に応える、など理由は様々だ。しかし共通しているのは現在米国で広がる「牛の飼育を廃止すべき」という議論だ。

マクドナルド、バーガーキングなどの大手は過去に何度も動物愛護団体からの訴訟を受けている。ハンバーガーに使うための牛肉を生産する段階で牛を過酷な環境で飼育している、残酷な殺し方をしている、などと糾弾されてきた。

米国人というのは考え方に極端なところがあるが、この「牛を殺すことに反対」という思想は生活の様々な面に現れている。例えば一昔前は高級バッグ、靴、ソファ、車のシートと言えば皮革製だった。ところが最近では高級ブランドバッグも高級車のシートにも人工皮革が増えている。人工皮革の技術そのものが向上したこともあるが、「動物に優しい人工の素材」の方が消費者に受け入れられやすい、という判断なのだ。

96%の土地、87%の水、89%のメタンガスやCO2などを省くことができる

また環境面から見ても、牛などの家畜の飼育には大量の飼料や水などの資源が必要な上に、家畜は大量のメタンガスを生み出す、という指摘がある。インポッシブル社では、大豆の根にあたる部分を代替肉の原料としているが、これを肉の代わりに使用することで「96%の土地、87%の水、89%のメタンガスや二酸化炭素などを省くことができる」としている。

2050年には地球人口は90億人になると予想されており、来る食料不足問題に対応するためにも代替肉は今後必要不可欠なものになる、という主張だ。

ただし代替肉がパーフェクトなのか、というとそうでもない。インポッシブル社によると、原料は大豆の根だが、そこに肉らしい風味をつけるために重要なのがヘムという物質。ヘムとはヘモグロビンの色素部分に見られる細胞だが、これこそが肉を肉らしい味にしている物質だ。

ヘムは血のような色をした液体として、植物原料に混ぜられる。それにより肉らしい赤みや風味が生まれる。ところが昨年、インポッシブル社がヘム採取のためにラットを使用している、として動物愛護団体からの糾弾を受ける騒ぎもあった。現在では同社は大豆の根から抽出したヘムを遺伝子操作したイースト菌に移し替え、大量のヘムを生産している、と発表している。しかし遺伝子操作した作物、いわゆるGM作物の安全性は今も議論されており、この部分に疑問を持つ声もある。

それでもインポッシブル、ビヨンド・ミートを始め、現在では多くの代替肉を生産する企業が存在する。「ラブ・メイド・ミート(工場で生産された肉)」という言い方も一般的になってきた。また植物由来の代替肉だけではなく、普通の肉を細胞培養して大量の肉を生産する、という試みも行われている。代替肉は将来の地球環境を左右する存在になるのかもしれない。

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