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国民は政府や電力会社の夏の電力需給の見通しを信じていない〜電力の需要と供給の正確な予測を、政府や電力会社ではなく公正な立場の第三者機関を設けて精査すべき

各紙社説での論調を見る限り、朝日・毎日が再稼動反対、読売・産経・日経が賛成派となっているようですが、ここ数日の各紙社説が興味深いです。

15日付けの読売社説は原発推進の立場から「立地自治体の理解が最優先だ」との社説を掲げています。

原発再稼働要請立地自治体の理解が最優先だ(4月15日付・読売社説)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120414-OYT1T00847.htm

発言にぶれがみれる野田政権に「展望なき「脱原発」からの決別を明確にするべき」と注文をつけています。

知事は、枝野氏が原発を重要な電源として活用すると述べた点を評価し、「原発が必要不可欠であることについて、政府はぶれることのないメッセージを出してほしい」と要請した。

立地自治体に協力を求める以上、野田政権は菅前首相らの唱えた、展望なき「脱原発」からの決別を明確にするべきである。

一方で知事は、原発を受け入れてきた地元の努力や貢献が「電力を消費する地域に必ずしも理解されていない」と、強い不満を示した。その後の記者会見では、再稼働の是非は「最終的には立地県が判断すべきだ」とも述べた。

滋賀、京都の両知事や、電力の大量消費地である大阪市の橋下徹市長が、政府の再稼働判断は拙速だと批判しているためだろう。

枝野氏が「日本全国が地元」と発言したことへの反発もある。

一連の枝野幸男経済産業相の原発再稼働に対する発言ですが、再稼動反対派の朝日からも賛成派の産経からも18日付け社説で批判を受けています。

【朝日社説】原発政策―首相は方向性を示せ

http://www.asahi.com/paper/editorial.html

【産経社説】ぶれる原発発言経産相としては不適切だ

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120417/plc12041703220004-n1.htm

朝日社説から。

担当大臣である枝野経済産業相の発言が、ぶれているとの批判も強まっている。

国会で「原発依存度を最大限引き下げるのは明確な方針」と答弁していたのに、大飯原発をめぐる福井県知事との会談では「(原発を)今後とも引き続き重要な電源として活用することが必要だ」と説明する。

再稼働に理解を求める役回りだったとはいえ、これまで枝野氏が示してきた原発への慎重な姿勢にまで疑いの目が向けられている。

産経社説から。

枝野氏は経産相として電力の安定供給に責任がある。燃料費が兆円単位でかさみ、CO2を排出する火力発電に依存して、脱原発を称揚する立場にはないはずだ。

枝野氏の言動は「二股膏薬(こうやく)」と言わざるを得ない。民主党内にも原発利用に慎重・賛成の両論があるが、党内議論を収拾のつかない形で国のエネルギー政策に持ち込むのは不適切だ。その道理をわきまえられないなら、野田佳彦首相は更迭を視野に入れるべきだ。

原発再稼動慎重派の朝日からは、「これまで枝野氏が示してきた原発への慎重な姿勢にまで疑いの目が向けられ」ると批判され、賛成派の産経からは逆に経産相として「脱原発を称揚する立場にはない」だろうと批判されているわけです。

産経は「二股膏薬(こうやく)」と懐かしい四文字熟語まで持ち出していますが、確かに枝野氏の発言内容はぶれている印象を与えてしまっているのは認めるものですが、私は少し彼に同情しています。

彼の想いを私なりに勝手に咀嚼すれば、「中長期的には原発依存から脱却していく方針は変わりないが、短期的には、すなわち今夏をにらめば原発再稼動しなければ電力が不足するので必要最小限の原発再稼動はやむをえない」と言いたいのではないでしょうか。

再稼動慎重派からも推進派からも批判を受けている枝野経産相の発言ですが、本質的には電力の需要と供給の正確な予測を政府が開示していないがために、数値に基く理性的な議論が成立していないことが一番の問題なのだと思います。

その点を問題視しているのが、16日付けの日経社説。

政府は夏の電力需給見通しを早急に示せ

http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE6E2E6E5EBE6E6E2E3E5E2E6E0E2E3E08297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D

ポイントを抜粋します。

同時に重要なのが今夏の電力需給見通しを精査し、一刻も早く開示することだ。関電管内は大飯原発が再稼働しても供給不足になる恐れがある。東京電力管内も昨夏は動いていた柏崎刈羽原発が止まっており、需給への不安がある。

揚水発電などで供給力を増やしても需給は逼迫しそうなのか、明らかにすることが夏場対策の第一歩だ。需給見通しがあいまいなままでは、いたずらに企業や家庭を不安にさせるだけだ。企業は生産計画を立てにくくなり、海外への生産移転が加速しかねない。

需給見通しが分かれば、どれだけ自家発電を導入したり、低消費電力の照明へ切り替えたりすればいいかなど、具体策が考えやすくなる。電力需要のピークを抑えるため政府は、昼から夕刻の電気料金を高めにし、それ以外は安くする時間帯別料金制度などを早くつくるよう電力業界に促すべきだ。

日経社説は原発再稼動推進の立場ですが、再稼動云々を抜きにしても「電力需給見通しを精査し、一刻も早く開示すること」はこの問題を議論するうえで必要不可欠だと思います。

15日付け毎日社説は再稼動反対の社説を掲げています。

社説:大飯原発再稼働理解に苦しむ政治判断

http://mainichi.jp/opinion/news/20120415k0000m070101000c.html

毎日は再稼動反対の立場からしかし「再稼働の必要性は少なくとも第三者の検証を待って判断すべき」と精査の必要性をやはり指摘しています。

安全性に懸念がある以上、再稼働にはそれを上回る必要性が示されなくてはならない。ところが、政府が根拠としているのは経済産業省の資源エネルギー庁が示している試算だ。原発推進を担ってきた組織の「言い値」をうのみにはできない。再稼働の必要性は少なくとも第三者の検証を待って判断すべきだ。

その際には、他社からの電力融通や自家発電による電力の購入、揚水発電などをさらに工夫して増やせないか精査が必要だ。電力が不足するといっても、問題は真夏のピーク時だ。その間の電気料金を上げたり、節電すれば料金を割り引く仕組みを作るなど、ピークをカットするための政策も早急に導入してほしい。

この問題の根っこには国民が民主党政権のいうことをまったく信用していないことにあります。

再稼働判断に「反対」が55%朝日新聞世論調査

http://www.asahi.com/special/10005/TKY201204150369.html

朝日新聞調査によれば、再稼働反対55%(賛成28%)、内閣が決めた暫定的な安全基準について「信頼する」17%(「信頼しない」70%)、政府や電力会社の夏の電力需給の見通しを「信用する」18%(「信用しない」66%)とあります。

つまり大多数の国民は政府や電力会社の夏の電力需給の見通しを信じていないわけです。

ならばここは、毎日新聞の提案のように、関西地方に限らず全国を対象に、電力の需要と供給の正確な予測を、政府や電力会社ではなく公正な立場の第三者機関を設けて精査すべきでしょう。

その上で正確な数値を元に、再稼動の必要性の議論を進めるべきではないでしょうか。



(木走まさみず)

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