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嗚呼、ソニーに春まだ遠し…

遅ればせながらソニー企業説明会の話です。同社平井CEO体制下初の企業説明会が12日に開かれましたが、その内容は失望感を禁じ得ないものでした。
(説明会の概要「AV Watch」⇒http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20120412_525839.html)

新体制のスタートの“門出”会見でありかつ5200億円と言う巨額赤字を公表した翌日でもありましたが、内容的には従来路線踏襲と具体性欠如の“がんばります宣言”タイプの説明に終始していたように思います。2月にストリンガー前CEOに引導を渡し、過去にない危機感を持ってバトンを引き継いだはずの平井ソニーですが、危機感は抽象的な言葉以外まだ十分に戦略に反映されていないようで残念な印象をぬぐえません。翌日の市況が軒並み上昇に転じている中、同社の株価が独歩安傾向にあったのは、そんな市場の失望感の表れであったと思われます。

不満足な内容の代表格は何と言っても最大の赤字部門である、エレキ部門の再建策。説明会でもグループの最優先課題をエレクトロニクス事業と位置づけ、「これを建て直し、再生から成長へつなげることが、私に与えられた最大の責務と認識している」と立て直しの最重要ポイントとして取り上げられていながら、提示されたものに目新しさは感じられなかったのです。

具体的には、最大の“病巣”であり8年で累計7000億円の赤字を計上した「テレビ事業の黒字化策」。その中身は、「液晶パネルの調達方法の変更などによるコスト圧縮」や「有機ELに関する他者との協業も視野に入れる」という表現に留まり、前向きな立て直しを実現するとの実感は得られずじまいという、なんとも不完全燃焼な内容でした。

かつての花形事業も8年連続赤字を続け会社の足を引っ張る状況にあり、コスト削減や他力本願の再建策しか見当たらないのであるなら、いっそのことやめてしまった方がいいのではないか…。素人考えにも、そう思わざるを得ない状況にあるのだと思います。「2012年度に○○が実現できなければ、事業撤退を決断する」ぐらいの期限を切っての思いきった決意表明が、社外的にはもとより社内を刺激しソニーイズムを覚醒させる観点からも欲しいところではないのでしようか。

平井CEOは今組織の頂上に登りきったばかりです。ならば、その登った直後に見える風景を自身が見慣れてしまう前に、いかに自分が抱いたイメージを元に変革に着手していくかこそが重要なはずであります。ところが再建を委ねられたトップが、就任間もない段階で最大の課題点に関し、従来路線踏襲を感じさせる策しか出せていない。これでは「ソニーが抱える課題解決を、着実にスピーディーに実行していく。それがソニーを変える唯一の道」との氏の言葉とは裏腹に、いささかもスピード感を感じさせるところがないという自己矛盾を既に起こしているわけで、これではあらゆる説明に説得力を欠くことになってしまうのです。

業績不振時のトップ交代の目的は、外部コンサルティングチームの導入と同様「ゼロベース思考」であらゆる過去の流れをスピード感を持って見直すことにあります。この点が業績好調時のトップ交代との最大の相違点でもあるのです。委員会設置会社で社外取締役中心の同社取締役会は、業績不振に対して「ゼロベース思考」で見直しをかけなくては先はないとの判断から、当初会長兼CEOとして“院政”を目論んでいたストリンガー前CEOを強引に更迭したのではなかったのでしょうか。平井CEOが本当にご自身に与えられた役割を正しくご理解いただいているのか、いささか疑問に思わざるを得ないところです。

個別説明に関する具体性の乏しさもまた、さびしい限りでした。象徴的であったのは、新経営体制について「ソニーの新経営体制が目指すのはOne sony、OneManagement」と形ばかりのキャッチを掲げる姿。悲しいかな、私にはどこまでもイメージ戦略でソニーのブランドの復権をはかろうとしているかのようにも感じられました。エンタメ部門出身トップの宿命であるのかもしれませんが、これは出井時代以来根づいた“技術のソニー”を捨て“虚構のソニーブランド”に頼る悪しき風習からの脱却が、いまだにできていないことの象徴のように思えてなりません。

総括すれば、思い切った決断と初動が目に浮かぶ具体性を持った再建策の提示を期待していただけに、実にさびしく物足りないものを感じさせる企業説明会であったと思います。一言で言うなら、対処療法的戦術説明に終始し新体制下のビジョンや戦略が明確になっていない、今の我が国の政治をみるような印象でした。日本を代表する企業として、ソニーの復権はモノづくり日本の復権を意味するものでもあり、是が非でも頑張ってほしいところではあります。しかし残念ながら、桜に新芽が吹くこの季節に、ソニーにはいまだ春の足音すら聞こえない、そんな印象を深くする新リーダーの船出の会でありました。

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