記事

転職は「半年待ってみる」のが正解なワケ

1/2

今の仕事がつらいからと、すぐに会社を辞めるのは早計だ。コンサルタントの山口周氏は「私自身も『辞めたい』と思いながら踏みとどまったところ、状況が180度好転して会社も仕事も楽しくなった。何もしないで待つのも戦略の1つだ」という――。

※本稿は、山口周『仕事選びのアートとサイエンス』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

経営者への抗議としての「逃げの転職」

転職には「攻め(=自分のやりたいこと、よりなりたい自分へ近づくための転職)」と「逃げ(=自分にとって望ましくない、耐え難い状況から脱するための転職)」の2つのタイプがあります。私自身は両方のタイプを経験していますが、それぞれ留意すべき点が異なるように思います。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/takasuu)

世の中には「攻めの転職」はいいが「逃げの転職」はよくない、と諭す人もいるようですが、あまり気にしなくていいでしょう。いま現在、非常につらい職場環境にあるのなら精神の健康を、ひいては自分の人生を守るためにもすぐに逃げるべきです。

加えて「逃げの転職」は、本来的に内部からのコーポレート・ガバナンスが効き難い日本企業に対して、経営の是正措置をとらせる強力な圧力の1つだと私は考えています。

日本の商法では、経営者は株主から委託されて経営を執行する立場にあります。経営者の経営執行状況をチェックして、必要に応じて是正措置をとらせるシステムをコーポレート・ガバナンスと言います。このシステムにおいて、チェックおよび必要に応じて是正措置の要求を行うのが従業員・取引先等のステークホルダーの役割になります。

辞めないことは会社に「賛意」を示すこと

ステークホルダーは、大きく「オピニオン」と「エグジット」の2つを、是正措置の要求手段として持っています。

例えば株主(※)。株主は、経営者の経営状況に満足していれば「株を買う」という形で賛意を表明し、不満足であれば「株主総会で文句を言う=オピニオン」「不信任案を提起する=オピニオン」「株を売る=エグジット」といった形で是正措置を要求します。

※権利が大きい分、責任も大きい。例えば、企業破綻時には、取引先の債権は株主の権利よりも優先される。

次が顧客です。顧客は、経営の状況に満足であれば「取引を継続する」、または「取引量を増やす」という形で賛意を表明しますが、反対であれば「営業担当に文句を言う=オピニオン」「取引量を減らす=オピニオン」「取引をやめる=エグジット」といった形で意見を表明したり圧力をかけたりすることができます。

そして最後のステークホルダーが従業員になるわけですが、従業員には非常に限定的な要求手段しかない、というのが日本の状況なのです。特に「反対意見の表明=オピニオン」が難しい。

例えば賛意という点については、会社にい続けるということで、消極的ではありますが表明できます。積極的に仕事をがんばる、外部向けのPRや採用活動に貢献するといった形でも、賛意の表明は可能でしょう。

しかしながら、経営陣に対する要求手段は、方法としてほとんど閉ざされているのが現状です。法的に担保されているのは労働組合を通じた意見表明なのですが、これも「組合としての意見」になってしまうわけで、個人の意見をそのままぶつけられるわけではありません。

なぜソニー社員はサムスンに行ったか

以上、このように考えると、従業員にとって実は最も強力な反対意見の表明方法は「退職」なのだ、ということがお分かりいただけると思います。是非の判断は留保するとしても、とにかく実態として日本企業のガバナンス構造においては、従業員が経営者に対して強く反対表明をする方法は退職以外にない、ということなのです。

出井伸之氏がソニーのCEOをされていた時期、提携したサムスンに大勢の技術者が引き抜かれてソニー社内で大問題になったことがあります。移った技術者にしてみれば、もちろん経済的な要因ややりがいといった「攻め」の要因も大きかったはずですが、一方で思うのは、当時「ものづくりの会社」から「エンタテインメントの会社」へと大きく舵を切ろうとした経営陣に対する、強力な反対意見表明だったのだろうな、ということです。

ちょっと長くなってしまいましたが、要するに言いたいのは、「逃げの転職」は当人にとっては逃げかもしれないが、それはそれで、内部からのガバナンスを効かせにくい日本の企業にとっては、大変重要な気づきを与えてくれるきっかけになると私は考えている、ということです。

あわせて読みたい

「転職」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    パワハラ原因?オスカー崩壊危機

    渡邉裕二

  2. 2

    相次ぐ「GoTo外し」観光庁に疑問

    木曽崇

  3. 3

    公選法に抵触 毎日新聞の終わり

    青山まさゆき

  4. 4

    菅首相に見る本読まない人の特徴

    山内康一

  5. 5

    菅首相を揶揄 無料のパンケーキ

    田中龍作

  6. 6

    ニトリが島忠にTOB 家具業界の変

    ヒロ

  7. 7

    陰性の「安心感」に尾身氏がクギ

    BLOGOS しらべる部

  8. 8

    TBS番組が伊藤健太郎逮捕で誤報

    女性自身

  9. 9

    橋下氏 毎日新聞のご飯論法指摘

    橋下徹

  10. 10

    伊藤と交際報道の山本舞香は号泣

    女性自身

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。