「日米両政府は閣僚級による物品貿易協定(TAG)交渉の初会合を4月15~16日にワシントンで開く調整に入った。茂木敏充経済財政・再生相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が会談し、交渉の範囲を決める。物品の関税引き下げに加えて、サービス分野の交渉をどこまでするかが焦点になる」(2日付日経電子版「日米貿易交渉、15・16日で調整 サービスが焦点」)いよいよ日本にとって、安倍政権にとって試練の時がやって来た。
注目は「為替条項」。ドル高に不満を持っているトランプ政権が、「戦後最長の景気回復」を続けている日本がいつまでも「異次元の金融緩和」を続けることを黙認するだろうか。
ライトハイザー代表がどのタイミングで「為替条項」を持ち出すかは分からないが、米国側に「為替条項」という切り札を握られる中での厳しい交渉になることは想像に難くない。
「戦後最長の景気回復が続いている」ことをアピールするために「異次元の金融緩和」の看板を下ろすのか、「異次元の金融緩和」を続けるために「戦後最長の景気回復が続いている」というアピールを撤回するのか。安倍政権は究極の選択を迫られる局面が訪れることも否定できない。
TAGとFTA。「戦後最長の景気回復」と「異次元の金融緩和」。これまで国内向けに使われてきたこうした矛盾、二枚舌が通用しなくなる日が近づいている。
「日本経済にとって米中通商交渉が最大のリスク」と繰り返し解説して来た有識者達の多くが、近いうちに「日本にとって最大のリスクは日米通商交渉だ」と宗旨替えすることは必至の情勢といえる。
二国間の貿易不均衡問題は、貿易黒字を抱える側が譲歩、妥協をする形でしかまとまることはない。従って、日本側がトランプ政権の姿勢を保護主義的だと批判しても意味はない。例え日本側の主張が理論的に正しくても、交渉がまとまらなければ「為替条項」を突き付けられるだけだから。