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新元号について

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 2016年に天皇陛下が退位を表明されたが、それは改元という大仕事に全国民が早めに対応できるようにという配慮も含まれていたはずである。しかし、官邸は政権のコアな支持層である日本会議などの国粋主義勢力に対する配慮から、元号発表をここまで引き延ばしてきた。「国風」へのこだわりもこの支持層へのアピールに他ならない。そういうイデオロギー的な配慮が先行して、元号制定そのものへの中立的で冷静な学術的検討がなおざりにされた結果の「空振り」とすれば、これは看過することができない。

 元号の発表を統一地方選の最中に発表をぶつけてきたことにも政治的作為を感じずにはいられない。選挙期間に、朝から晩まで特定政党の総裁と幹部がメディアに露出し続けるイベントを設定するというのは政治的公平性を考慮したらほんらい自粛すべきことであろう。良識ある政治家なら、改元がもたらす政治的影響が最も少ない時期を選んで発表を行ったはずである。だが、安倍政権はその逆のことをした。「李下に冠を正さず」どころか、狙いすまして「李の下」で冠をいじくりまわしたようなものである。著しく配慮を欠いた日程設定だったと思う。

 元号は、天皇制に深くかかわる国民文化的な装置であり、すべての国民が心静かに受け入れられるように最大限の注意をもって扱うべき事案である。安易に党派的な利害に絡めたり、経済波及効果を論じたりするのは、文化的伝統に対して礼を失したふるまいと言わざるを得ない。

 残念ながら、どれほど文化的多様性を称揚しようと、グローバル化する世界で国際共通性をもたない紀年法は遠からず事実上廃用されることになるだろう。この流れを止めることは難しい。わが国の一つの文化的伝統がやがて消えてゆくことを惜しむがゆえに、今回の「改元騒ぎ」がいくたりかの人々の「元号離れ」を加速したことを私は悲しむのである。

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